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社会福祉法人 安塚町社会福祉協議会
やすづか自由学園
ヤスヅカジユウガクエン
 
代表者名●竹内 實[タケウチ ミノル] 所在地●〒942−0539 新潟県東頚城郡安塚町円平坊94−1
電話番号●02559−3−2004 FAX番号●02559−3−2004
E−mail●jiyuu@yukidaruma.or.jp
 
廃校の小学校を利用した行政管轄の施設
●報告―小川 誠[寄宿生活塾 五色塾代表]
 
 初めて越後湯沢駅に降り立つと、5月中旬だというのに山々にはまだ残雪が見られた。神奈川県から来た者にとっては新鮮な驚きだった。そこからまだ開業5年のほくほく線に乗ってひなびた山間地を走り抜けて約50分。虫川大杉という田舎の駅に着く。駅前には一軒の店もない。そこからタクシーで約15分程。自然豊かな山合いの村の斜面にやすづか自由学園がある。
 坂道を上がって学校の入り口に立つと、立派な校舎、広い校庭、大きな体育館にびっくりさせられる。というのもこの学園は廃校になった小学校を町から借り受けて、7年前に故三浦良久氏が始めた学校だったからだ。「自尊互尊」を始めとする創設者の教育理念を受け継いで、4年前からは社会福祉法人である安塚町社会福祉協議会の公益事業として続けられている。行政が行う不登校、ひきこもり生徒のための事業ということで、発足当時はずいぶんマスコミでも話題になったそうだ。
 
学園寮から見たやすづか自由学園・・・新潟県の上越市を中心とする高田平野は、その東側が東頸城丘陵。学園はその丘陵の中にある穏やかな谷合の町で、緑に囲まれたのどかで静かな環境にあります。
 
校舎・・・廃校になったと言ってもまだまだ新しく、教室の数なども十分過ぎるほどたくさんあります。
 
体育館・・・都会の体育館と比べて全く遜色ありません。高床式の構造で床下にはスキーの板や道具など。
 
 僅か正味一日の見学だが、寮に泊まって一晩明かすと心が安らぎ、ゆったりとした気分になれる。のどかで緑豊かな環境でのんびりと和やかに過ごしている生徒やスタッフの人たちが作り出している雰囲気が奏でる田園交響曲がここにはある。これは目に優しく耳に心地良い。そして心をほのぼのとさせる。これがやすづか自由学園の心に響く風景だ。
 訪問したときは生徒が7名と普段より少なかったが、子供たちはとてもくつろいでいるように見えた。面白いなと思ったのは、昼食後も夕食後もちょっと広すぎる食堂をさっさと出てしまって、スタッフルーム、つまり職員室に行き、そこでスタッフとおしゃべりをしたり生徒同士でトランプをしたりしていたことだ。これは普通の学校だったらまず見られないような光景だ。生徒がごちゃごちゃいては、とても事務はできないだろうが、スタッフは困ったような表情一つせずに楽しげに歓談している。そこにこの学園の職員の生徒に対する姿勢、そして両者の関係を見る思いがした。
 それから「いいなあ」と思ったことが三つある。一つは、教室も校庭も体育館も使い放題だということだ。ただ都会から来た人間にとっては、使用する人数が少ないときは施設が大きすぎるという観も拭えない。それで全体的にちょっとさびしい感じがするのはいささか貧乏性だろうか。
 二つ目は「一対一の対応」ができることだ。生徒一人にスタッフ一人がついて、一週間の予定を一緒に決める。例えば今日は一緒にサイクリングに出かけるとか、山菜を取りに行くとか、自由度の高い週間予定を各自が作ることができる。そして気のおけないスタッフとともに行動し、一緒に作業して、より親密になれるチャンスがある。これは40人学級で育った私には大変うらやましく感じた。
 
スタッフの部屋・・・言わば職員室に相当しますが、いつでも生徒がいてスタッフとおしゃべりをしたりしています。
 
話し合い室・・・毎週月曜日、生徒とスタッフが話し合い、各自1週間の予定を立てる。朝会もここで行います。
 
女子の部屋・・・畳が敷かれ、よく整理整頓されていました。黒板にハートマークが大小無数に書かれてました。
 
食堂・・・朝昼晩と一日三食ここで食事をします。食事は地元のおばさんが心を込めて作ります。地域の食材で調理。
 
男子の部屋・・・教室が沢山あり男子女子それぞれに自由に使える部屋が与えられています。
音楽室・・・エレクトーン、ギター、ドラム等様々な楽器があります。子供たちは演奏して楽しんでいます
 
 三つ目は地域のおじさんやおばさんが積極的に生徒と触れ合い、支援活動を展開していることだ。生徒を地域行事に誘ったり、野菜の育て方を教えてくれたり、藁細工の指導をしてくれたり、と様々な形で生徒に関わっている。学園の中から見れば、ここは都会の学校と違って学校を取り巻く塀が全くなく、誰でも気軽に入ってこられる開かれた場所なのだ。
 最後に一つ、調査員の希望を記したい。今のところ在籍できるのは中学三年卒業時までで、生徒たちはその後ほとんどが高校に進学しているそうだが、本心を言えばもっと続けて残っていたい子供も中にはいるそうだ。心が深く傷つき、現代生活に疲れ切った子供たちにはここの環境は貴重な癒しの場となっている。1年、2年では傷や疲れを癒しきれない子もいるのではないだろうか。中学3年までという義務教育期間に拘らずに、そういう子のためにも間口を広げられたら喜ぶ子供は少なくないと思う。幸い使える教室はスペースはまだまだ十分にあるし、人数が増えれば学園も活気を増すだろう。[調査日―2002.05]







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