4. 艤装品の交換頻度等
表4 艤装品交換頻度
場所、船名 |
South S.S.
Port Museum |
Rose |
Mystic S.
P.Museum |
Mayflower.
II |
Constitution |
木部礒装 |
常に塩を与えている |
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常時点検 |
帆 |
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10年1巡で交換 |
綿は4年、ダクロンは7〜10年だが紫外線に弱いから使用しない |
ナチュラルファイバー7〜10年 |
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索類 |
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マニラ2年ポリロープ5シーズン |
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静索7〜8年動索ヘンプ |
索類はポリエチレン |
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5. メンテナンス費用とメンテナンス人員
調査結果を要約して表5に示した。
表5 メンテナンス費用と人員
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船名 |
建造年 |
(A)年間費用 |
(B)人員 |
(C)L(B十D) |
(A)/(B) |
(B)/(C) |
保存 |
C. W. Morgan |
1841 |
$950000/2.5* |
24/2.5* |
5011 |
75.8 |
0.002 |
Constitution |
1797 |
$950000** |
12 |
12162 |
78.1 |
0.001 |
復元 |
Mayflower II |
1956 |
$250000 |
5 |
2981 |
83.1 |
0.0016 |
Rose |
1975 |
$175000 |
4 |
7250 |
24.1 |
0.0006 |
*Mystic Sea Port全体の1/2.5がC.W.Morganに掛かっていると推定した。 |
**年間$750000であるが、15年に1回のドライドック時の予算$3.75Mil.を(3.75Mil−0.75Mil)/15=0.2Milを通常時に加算した。 |
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この表は、船の大きさ、特に面積を表す係数として用いられるL(B+D)を使用して解析したものであるが、費用、人員の項でC. W. Morganに対して全体の1/2.5とした根拠は大型船4隻のうち有名な船はC. W. MorganとJoseph Conrad(鉄船)で他の2隻は1900年初頭のものであるので、感じとして1/2.5と推定した。
年間費用を図1に示した。
資料が少ないので決定的なことは言えないが、
(1)L(B+D)が大きくなるとL(B+D)当たりの費用が小さくなる。
(2)150年以上経過している保存船は、年代の新しい復元船よりL(B+D)当たりの費用が大きく、L(B+D)の大きさによらず一定の傾向を示す。
このことは、常識的に考えられることを表現していると考えられる。
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図1 木造保存船、復元船の年間メンテナンス費用(1992年価格)
次にメンテナンス所要人員について図2に示した。保存船と復元船と各2点しかないので、決定的なことが言えないことは先の図と同様であるが、L(B+D)による低減傾向は示している。この図と前図から言えることは
(1)所要人員はL(B+D)による低減傾向を示す。
(2)150年以上経過した保存船と年代の新しい復元船とは大まかに言って平行線を示す。
(3)このことは、年代が古くなると同一L(B+D)に対しても、L(B+D)当たりの所要人員が増えるが、古くなるとメンテナンス人員より補修費が増え、メンテナンス費用はL(B+D)に無関係にL(B+D)当たりが一定になる。
と言える。
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図2 木造保存船、復元船の年間メンテナンス人員
慶長遣欧使節船復元船のメンテナンス費用と人員の確定
日本における木造復元船のメンテナンスの実績は極めて乏しく、本格的には今回から始まると言っても過言ではない。係留場所、海象、気象、海水の状態によっても異なるので、実施してみなければ分からないのが現状である。しかし、それでは計画の立案もできないので、乱暴ではあるが、得られた資料を基に目安だけでも立ててみることにする。
図1、図2を用いて推定すると表6のようになる。
表6 慶長遣欧使節船復元船のメンテナンス費用と人員の推定
建造後の
経過年数 |
年間費用係数
$L(B+D) |
年間費用
万 $ |
年間費用
百万円 |
人員係数
人/L(B+D) |
所要人員
人 |
0〜50 |
50〜56 |
22.3〜25 |
31.2〜35 |
0.0012〜14 |
5.3〜6.2 |
50〜100 |
〜67 |
〜30 |
〜42 |
〜0.0018 |
〜8.0 |
100〜150 |
〜78 |
〜35 |
〜50 |
〜0.0022 |
〜9.8 |
1$=140yenとして換算 |
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図3 年間メンテナンス費用と所要人員の推定(1992年)
ここで、経過年数150年までの推定を機械的に行った。7月9日の会議でメンテナンス関連の討議で関係市町村の皆さんに『木造船が100年もつなんて馬鹿なことを』と一笑に付された。
この推定も再び笑われるであろう。しかし、木造でも150年以上もっているものがあること。
それはメンテナンス如何であること。100年でも150年でも長持ちさせたいと願って、できる限りの対策を立てていることを理解していただければ幸いである。
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