◎この「トラック運送事業におけるグリーン経営推進マニュアル」は、グリーン経営の実施について詳しい内容を知りたい方のために、項目別にグリーン経営の具体的な進め方を解説したものです。
◎「グリーン経営推進チェックリスト」の記入については、別冊「グリーン経営推進チェックリストと記入の手引き」の左頁に「記入の手引き」がありますので、それを参照してください。
はじめに
トラック運送事業は、貨物輸送を支える基幹産業として、経済活動の発展や国民生活の質的向上に大きな役割を果たしており、社会生活のうえで必要不可欠な存在になっています。一方、自動車の走行に伴う大都市や幹線道路周辺における大気汚染や騒音の問題は依然深刻な状態が続いています。
また、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素(CO2)の運輸部門からの排出量(1999年度)は、わが国のCO2排出量の21.2%を占め、年々増加しています。このうち、営業用貨物車の割合は、運輸部門のCO2排出量の約16.7%を占めています。平成13年11月に開催された気候変動枠組条約第7回締約国会議において、京都議定書の中核的要素に関する基本的合意(ボン合意)を法文化する文書が採択され、京都議定書の批准に向けて大きく前進しました。国内においては、平成14年3月19日に内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部において、「地球温暖化対策推進大綱」が決定されました。この大綱では、運送事業者のグリーン経営が温暖化対策のひとつとして位置づけられました。今後、温室効果ガスの削減に向けた動きが具体化されることが予想されます。
こうした状況に先駆けて、(社)全日本トラック協会では、適切な環境対策を講じるための総合的な取組として「環境基本行動計画」を策定し、これに沿った取組を積極的に進めています。
平成12年度から交通エコロジー・モビリティ財団では、日本財団からの助成金を受け、(社)全日本トラック協会及び各都道府県トラック協会のご協力を得て、トラック運送事業者の自主的な環境改善への取組を支援・推進するため、環境負荷の少ない事業運営(グリーン経営)を進めるためのマニュアルを作成しました。
環境保全活動の継続的な改善を進めるための手法としては環境に関する国際的な規格であるISO 14001がありますが、中小規模の事業者が大部分を占めるトラック運送業界では、ISO 14001の取得は経済的・人的負担が大き過ぎるのが実情です。このため、このマニュアルは、トラック運送事業者の大部分を占める中小事業者でも取り組みやすいよう、環境パフォーマンス評価(ISO 14031)の考え方に則ってグリーン経営を進めようとするものです。また、環境パフォーマンスの評価には段階評価の考え方を取り入れ、評価の基準は継続的な改善を図るためISO 14001の考え方も参考にして作成しました。
トラック運送事業者のみなさんが、(社)全日本トラック協会等の指導や「環境基本行動計画」等の考え方を取り入れつつ、このマニュアルを活用してグリーン経営を積極的に進められることを期待します。
事業活動は基本的には営利活動であり、事業者は事業を進めるにあたってコストを削減し、利益をあげることが要求されています。一方、環境問題が深刻になるにつれて、企業が持続可能な成長を図るためには、営利性の追求と同時に、環境保全を企業の社会的責任としてとらえ、事業活動における環境負荷の削減を図っていくことが不可欠となってきました。このマニュアルでは、事業活動のなかに環境保全への配慮を組み入れ営利性の追求と環境配慮の両立を図っていくことを経営のグリーン化と呼んでいます。
したがって、グリーン経営とは自主的・計画的に環境対策を進めながら、経営面での向上を図っていく経営をいいます。具体的には、燃費向上によってコストの削減を図ることができる「エコドライブの推進」や「社用車を含めた低公害車の導入」等は、グリーン経営を推進する代表的な取組といえます。トラック運送事業者は中小規模の企業が大部分を占めており、事業活動を進めるうえでこうしたグリーン経営の考え方は不可欠です。
このマニュアルは、トラック運送事業者のみなさんが自主的・計画的な環境対策をもとに、グリーン経営を進めるための手法を示したものです。
グリーン経営では、取組の方針や体制を整え、自主的な目標と計画の下での取組、結果の点検・評価、見直しというサイクルで進めることが基本になります。このマニュアルはそうした仕組みを前提に、トラック運送事業者の大部分を占める中小事業者でも取り組みやすいよう、環境保全への具体的な取組を簡易なチェックリストで把握・評価し、それをもとにグリーン経営を進めようとするものです。
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