I 里親制度の整備・拡充に関する研究会の設置
児童の健全な発達においては、乳幼児期の愛着関係の形成が極めて重要である。このためには、児童ができる限り家庭的環境の中で養育されることが大切であり、里親制度の重要性の認識が高まってきている。
しかしながら、現在の里親制度がそれらの要請に十分対応した制度として活用され、機能を発揮しているとは言い難い状況にある。里親制度が、本来果たすべき期待に的確に対応し得るものとして、その普及、機能の拡充及び運営の活性化等を図ることが必要である。
このため、里親制度の普及及び機能の拡充等の方策を検討し、関係機関に提言することを目的として、本研究会を設置した。
本研究会においては、現在までに里親制度について研究された論文や報告書及び里親に関する統計などの資料を踏まえながら、次の通り3回にわたって研究会を開催し、検討を行った。
○ |
1回目 |
2002/11/27 |
(水) |
○ |
2回目 |
2003/01/29 |
(水) |
○ |
3回目 |
2003/03/11 |
(火) |
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奥山 眞紀子(おくやま まきこ) |
国立成育医療センターこころの診療部長 |
◎ |
行天 良雄(ぎょうてん よしお) |
医事評論家 |
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五阿弥 宏安(ごあみ ひろやす) |
読売新聞論説委員 |
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小林 美智子(こばやし みちこ) |
大阪府母子保健総合医療センター部長 |
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瀬尾 勲(せお いさお) |
社会福祉法人横浜博萌会理事長 |
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津崎 哲郎(つざき てつろう) |
大阪市中央児童相談所長 社会保障審議会児童部会委員 |
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花崎 みさを(はなさき) |
児童養護施設 野の花の家施設長 |
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帆足 英一(ほあし えいいち) |
元東京都立母子保健院長 |
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北郷 勲夫(ほくごう いさお) |
国民健康保険中央会理事長 |
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唐澤 剛(からさわたけし) |
厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長 |
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相澤 仁(あいざわ まさし) |
厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課児童福祉専門官 |
◎は、委員長 |
(報告書本文)
都市化の進展、少子化や核家族化の進行、離婚の増加等に伴い、家族の形態は大きく変化してきた。また、女性の社会進出やライフスタイルの多様化などに伴い、家族の共有時間の減少やいわゆる個食化といった現象も生じており、家族の共同性に関する意識も薄くなっている。他方、地域社会においても地縁的関係が希薄になってきており、今日では地域から孤立化した家庭も少なくない。こうした家族を取り巻く環境の変化に伴い、児童虐待や配偶者暴力の増加など家族を巡る様々な問題も生じている。
特に、児童虐待の現状を見ると、全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談件数は、平成13年度は2万3千件を上回り、11年度の2倍に達している。児童の虐待を防止し、その健全な心身の成長、自立を促していくためには、発生予防から早期発見・早期対応、保護・支援・アフターケアに至るまでの切れ目のない総合的な支援が必要であるが、家庭的な暖かい雰囲気の下での生活を確保するという観点から、里親制度に期待される役割は極めて大きい。
しかしながら、問題を抱えた児童を家庭の中で養育する里親制度の重要性に関する認識は高まってきているものの、それは関係者にうちに留まっており、一般国民にまで普及しているとはいえない。したがって、里親制度の重要性が一般国民及び関係専門家(小児科医、看護師など)に広く認識されるよう、啓発・普及を行うことは最も優先して取り組むべき課題である。同時に、現に里親として児童を養育している人たちを支援する施策についても一層の拡充を図る必要がある。
このような観点から、本報告書においては、まず、里親制度の啓発・普及をするための方策について提言を行い、次に社会的養護システムにおける里親制度の位置付け、里親支援の強化策について提言を行った。なお、巻末に、補論として里親制度と養子縁組制度との関係について簡単に触れるととともに、里親制度の現状について資料を掲載した。
我が国の里親制度の状況をみると、登録里親数は昭和35年度の約1万9千人をピークとして平成13年度には約7300人と3分の1近くに低下している。このうち、実際に児童の養育を委託されている里親は約1700人にとどまり、委託児童数は約2200人という実情にある。里親が様々な問題を抱えた児童の受け皿として極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、社会的養護の実数に占める割合は低下してきていると言わざるを得ない。このような状況の原因は様々な要因が考えられるが、まず第1に、里親制度そのものが知られていない、里親になろうとしてもどこにアプローチすればよいかわからないなど、啓発普及に関する努力の不足を指摘しなければならない。
里親制度の普及のため、次のような施策を推進する必要がある。
(1)ポスター、リーフレットの作成
里親月間(毎年10月)に里親普及のための標語やポスターを広く国民から募集する。採用作品には賞を贈呈する。
(2)映像媒体の活用(ビデオ、TV等)
TV映像などによるPRは効果が大きい。このため、例えば里親を題材にした連続ドラマの企画について検討を行う。
(3)活字媒体の活用(出版物)
委託された児童の声や言葉を綴ったもの、里親の子育て記録の出版、またマンガの活用等により、里親制度の意義や子育ての楽しさを伝えるとともに、里親に対する理解の促進を図る。
(4)インターネットの活用
行政や全国里親会など関係団体が、里親制度の内容を説明したホームページを開設し、里親制度の普及を図る。
(5)福祉支援企業・団体などによる里親推進フォーラムの結成
児童福祉に理解のある企業や関係団体など幅広い関係者から構成される里親推進フォーラムを設け、里親活動のバックアップを行う。
(6)里親の名称の検討
里親は養子縁組と同義と考えている人が多いこと、また、子どもを預ける実親も子どもをとられてしまうのではないかという誤解を持つことも多いので、正しい理解を促進することのできる名称について検討を行う。
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