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新進小壮吟士大いに語る
第二回
池田菖黎さん
(社団法人関西吟詩文化協会)第二十期少壮吟士
岸本快伸さん
(社団法人関西吟詩文化協会)第二十二期少壮吟士
練習も本番と思い、実のある練習をすべし
 
練習にはテーマをもって、回数よりも内容のある練習をすべきとお考えのお二人に、少壮吟士とは何であるか、その存在の重みなどについてお話をおうかがいしました。
 
司会・・少壮を受けられたのは、いつ頃からですか?
池田「私の場合は、同じ流派の辰巳快水先生が少壮吟士に合格なさった年が最初に受けた年ですから、平成五年ぐらいだと思います」
岸本「もうちょっと前でしょう。私は平成元年頃だと思います」
池田「そうでしたっけ・・・」(笑)
司会・・少壮にどのようなイメージをお持ちでしたか?
池田「雲の上の世界だと思っていました」
岸本「私も憧れの世界でしたね。池田さんや私の所属する会に辰巳先生がいらっしゃいまして、憧れの人でしたので、目標にしていました。勉強という意味で少壮には受けさせていただきましたが、絶対に受からないな、と思っていました」(笑)
司会・・少壮にはじめて挑戦された時はいかがでしたか?
池田「足が地についていなかったですね。自分としては一生懸命に吟じているつもりなのですが、近畿地区の少壮の先生が天空から声が出ているよ、と言うくらいに普通ではなかったです。せっかく高い運賃を使って受けに来たのですから(笑)、何とかしなければいけないと思うのですが、何とかが何とかなりません(笑)。これがなかなかね・・・私が少壮を通ったのは、平成六年、七年、九年だったと思います。」
 
左/岸本快伸さん、右/池田菖黎さん
 
司会・・二回目を受けた時はどうでしたか?
池田「二回目の時はですね、確かに一回目に通った時は嬉しかったのですが、二回目になると、計算できるというか、こんな感じで吟じればいいんだなという、コツみたいなものが、いくらか分かりました」
司会・・では三回目の時はどうでしたか?
池田「三回目の時は、十位にまで入っていないと合格できないのですが、十五位くらいまでに入っていたので、だめでした。つくづく少壮は難しいな、と実感しました。でも、来年こそは通ってやる、という気持ちで一生懸命がんばりました。」
司会・・通った時はどんな感じでしたか。
池田「夢がポッと手の中に転がり込んできたというか、うまく言葉では表現できませんね」
司会・・岸本さんはいかがでしたか?
岸本「平成元年頃から三回ぐらい東京へ少壮を受けに行っていましたが、ずっと落ちてばっかりでした」(笑)
 
池田菖黎さん
 
池田「でも、連続三回で通ったのですよね。」
司会・・連続三回で通ったのですか?
岸本「はい、通ったのは平成十年、十一年、十二年と三年連続でした。私は関西人なものですから、アクセントが関西弁なので、そのことばかり気にしていました。一回目に受かった時はアクセントを気にするのは、これで最後にしようと思いながら、いつもの吟をしようと思って吟じたら、通ることができました。それから、感じが読みとれて、続けて通りました。まだ、信じられません」
司会・・岸本さんの場合、少壮に合格された時はどういう感想を持たれましたか?
岸本「えっ? 嘘でしょ、という感じでした。周囲は立派な方々ばかりなので、私みたいな者で大丈夫かしら、と思いました。本当に強く責任を感じました」
司会・・憧れの少壮吟士になられたわけですが、少壮になってみていかがですか?
池田「私、岸本先生とは流派は同じですけど、会が違っておりました。でも、昭和五十四年ころから一緒にお稽古させてもらい、側にいい目標の方がいらしたので、自分もここまでがんばってこられたのかな、と思います。本当に有り難く思っております。私の場合、すごい所に自分が来たのだな、という実感がありました。少壮吟士になりたての頃より、時間がたつほどにその重みを感じます。いま両肩にじわじわと、その重みを感じているところです」(笑)
岸本「そうですね、今でも辰巳先生や池田先生と同じ立場に立ったとは思っていません。まだ両先生にはかなわないので、目指すべき存在として、一生懸命勉強していきたいといつも思っています」
司会・・少壮吟士になってからが勉強だと聞きますが?
池田「はい、そうです。今まで勉強してきてないことをいっぱい教えていただけます。吟だけでなく、立ち振る舞いとか、日頃から心がけるべきこととかもよく教えていただいています。吟のことに関して言えば、私は案外強い吟、男勝りの吟が好きで、もう周りの方にもそのイメージが強かったのですが、少壮に入らしていただいてからは、女性は女性の吟をやらなくてはいけない、という考えをもつようになりました。最初は正直に言うと嫌でしたが。女性的に吟じると、池田さん、どうしたん、今日は元気ないやん(笑)、と言われたりしました。そんなことが続いて、白分でも不完全燃焼というのもあったのですが、東京で舩川先生に色々とご指導いただいて、おっしゃっていることの半分も身についたとは言えませんが、ずいぶん勉強になりました。本当に有り難いと思っています。強い吟ばかりでなく優しい吟もありますし、私が優しい吟を心がけるようになったのも、舩川先生のおかげだと思っております」
司会・・岸本さんはいかがですか?
岸本「私も少壮になってから勉強するようになりました。今までは詩吟は出たとこ勝負でした(笑)。今日は声が出たとか、出なかったとか。少壮になってからは、アクセントはきちんとしていないといけないし、声の響きはどうだったかとか、絶えず勉強するようになってから吟詠に臨むようになったのが良かったと思います。辰巳先生や池田先生はずっと上の凄い人たちですが、私は本当に普通の人なのです。ですから、他の人たちも、あの岸本が少壮吟士になれたのだから、がんばればなれるという気持ちになって、どんどん少壮にチャレンジしてもらいたいと思います」
司会・・最後にお二方に少壮を目指されている方へのアドバイスをいただいて終わりにしたいと思います。
池田「課題吟を与えられたら、どこかにこだわることなく均等にお勉強することをおすすめします。ただ回数をこなすのではなく、一回の練習に注ぎ込む集中力が大事だと思いました。私の三回目の時は二回目の時と比べたら半分しか練習できませんでした。そのぶん、一回の練習にもの凄く集中しました。私は、練習は回数ではなく、その中身だと思います。例え忙しくて練習が思うようにできなくても、練習の内容を濃くすることで、補えると思います。ですから、いつも本番と考えて練習に臨んでいただきたいと思います」
司会・・岸本さんは何かございますか?
岸本「私の場合、詩文は十五題を全部覚えました。どれが当たってもいいように全部覚え、自信をもって吟ができるようにしました。詩文に気をとられると、その風景が思い浮かんできませんし、詩心を表現することができません。やはり詩文は全部覚えることがいいですね。あとは、読みをしっかりすることです。私の場合、忙しいと車を運転しながらでも読みをしっかりしたぐらいです。それ以外は他の方にお伝えするような練習はしませんでしたが」(笑)
司会・・本日はどうもありがとうございました。これからの、お二人のご活躍をお祈りいたします。
 
岸本快伸さん
 
新進少壮吟士大いに語る
第2回
池田菖黎さん
社団法人関西吟詩文化協会 第二十期少壮吟士
岸本快伸さん
社団法人関西吟詩文化協会 第二十二期少壮吟士
左/岸本 快伸さん、右/池田 菖黎さん







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