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編集後記
昨年七月、日本の伝統文化の活性化を国民運動として行なおうとする財団法人伝統文化活性化国民協会(平山郁夫会長)が文化庁の肝いりで設立され、当財団も団体会員として協賛するとともに笹川鎮江会長が同会の評議員に就任しました。協会設立の原動力となったのは日本伝統文化活性化議員連盟(綿貫民輔会長・桜井新幹事長)の国会議員の方々で、二年前から伝統文化関係団体への説明や協力要請のための会合が国会前庭にある憲政記念館で開かれてきました。
憲政記念館には犬養毅とともに憲政の神様と称された尾崎咢堂(がくどう)(本名行雄)のメモリアルホールがありますが、そこには尾崎咢堂の足跡をしのんだ遺品、著作、写真などが収められています。中で私の目を引いたのは、子供の時に書いたという雑記(落書き帳)の小さな絵で、甲冑に身を固めた武将が床几に腰をかけたその絵の横には平仮名で大きく「ひんこさふろを」と自著されていました。武将を紹介したこの文字は備後三郎(びんごのさぶろう)のことで、建武の中興に活躍した児島高徳(こじまたかのり)のことです。
議員連盟との会合では、日本の将来は子供たちをいかに育成するかにあるが、その模範を明治維新を起こした幕末、明治初期の教育に探りたいということが話題になりましたが、咢堂の児島高徳の落書きは、この質問にはたいへんぴったりとした回答であったと思いました。当時の子供たちは日本の歴史をしっかりと学んでいたのです。あの絵は「天勾践(てんこうせん)を空(むな)しうする莫(な)かれ。時に范蠡(はんれい)無きにしも非(あら)ず」の詩を口ずさみながら描いていたかもしれません。そういう意味では、これからの子供たちの教育には、いながらにして日本の歴史が学べる吟剣詩舞が最適であると思うことしきりです。
(矢萩保三)
 







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