1.5.3 廃家電・使用済み自動車を対象とした輸送コスト削減方法の検討
離島における不法投棄が懸念されている循環資源として、廃家電、使用済み自動車があげられる。本土と比べて離島の排出者の負担が大きいため、不法投棄が増えるという意見が多い。ここでは、廃家電、使用済み自動車の輸送コスト削減方法を検討する。
(1)廃家電
1)現状
現状の輸送コストは、対馬、上五島、下五島では、本土よりも高くなっている。
壱岐では、本土に近いこともあるが、以下のような工夫により、輸送コストを削減している。
・行政、家電商、収集業者による、より安価に収集運搬できる仕組み作り。
・家電商が収集業者へ廃家電を持ち込み(ほとんど持ち込み、一部有料での引き取り有り)
・収集保管場所を必要としない、頻度の高い(週に一回)一括島外搬出。
・定期フェリーの利用料金が安くなる時間帯の選択。
2)提案内容
対馬、上五島、下五島と壱岐の輸送経路の違いは、輸送経路が複数あることである。
各離島とも、5,000台から9,000台程度の廃家電排出台数が見込めることから、なるべく集中的に輸送し、輸送効率を上げることによりコスト削減を図ることを提案する。
(1)定期的な島外輸送日の設定
定期的な島外輸送日を設定し、その日に合わせて廃家電の収集(持ち込み、引き取り)を行う。頻度は、1週間に1回、半月に1回など、廃家電の排出量に合わせ、新たな集積ヤードを整備しなくてもすむように決める。
(2)1船での一括輸送
島外搬出日には、1隻の船舶で島外搬出を行う。複数の船社が営業している場合は、各船社の回り持ちにして輸送する。
なお、今回は、各島から満載に近い状態で出港することを想定している。
3)効果
廃家電を集中的に取り扱うことにより、荷役効率の向上、輸送効率の向上が見込め、輸送コスト低減につながると考えられる。
<参考>
各島から排出される廃家電を、1カ所に集積し、ある程度まとまったところで、チャーター船で輸送した場合の輸送料を試算した。
○各島からの廃家電排出台数
「6. 今後の廃棄物物流の動向」で示した廃家電排出台数を用いて、輸送コストを試算する。
表−1.5.8 廃家電の排出台数(推計値)
(単位:円) |
|
対馬 |
壱岐 |
上五島 |
下五島 |
合計 |
テレビ |
3,100 |
2,500 |
2,000 |
3,600 |
11,200 |
冷蔵庫 |
1,400 |
1,000 |
1,000 |
1,900 |
5,300 |
洗濯機 |
1,600 |
1,100 |
1,100 |
2,100 |
5,900 |
エアコン |
1,000 |
700 |
700 |
1,300 |
3,700 |
合計 |
7,100 |
5,300 |
4,800 |
8,900 |
26,100 |
|
|
参考資料: |
経済産業省 九州経済産業局、国土交通省 九州地方整備局「循環型社会の円滑な物流確保に資する交通体系整備方策調査 報告書」(平成13年3月) |
○輸送ルート
指定引取場所のうち、港湾の直背後にあり、A・B両グループの指定引取場所となっている、北九州の指定引取場所へ海上輸送することにした。
・対馬:厳原港 → 北九州港
・壱岐:郷ノ浦港 → 北九州港
・上五島:有川港 → 北九州港
・下五島:福江港 → 北九州港
注:製造業者はリサイクルを効率的に進めるために、A・Bの2グループに分かれて事業を進めている。Aグループは松下電器産業、東芝等、Bグループはシャープ、日立製作所等で構成されている。『指定引取場所』も、グループごとに分かれており、例えばAグループ製造業者のテレビは、Bグループの引取場所では扱えない。
○輸送条件の設定
輸送は800t型台船(35m×15m)を使用し、荷姿は20ftコンテナとする。1台の台船には36TEUを乗せ、1TEUにつき60台の廃家電を積み込めるものとした。また、傭船期間は3日(往路1日、荷役1日、復路1日)と想定した。(エコマテリアル海上輸送研究会資料を参考に設定)
・1TEU=60台換算
・1台の台船に乗せられるコンテナ数:36TEU
・1台の台船に乗せられる廃家電台数:2,160台
(輸送会社への問い合わせより設定)
各島の廃家電の年間輸送回数は、対馬が4回、壱岐が3回、上五島が3回、下五島が5回となる。
表−1.5.9 年間輸送回数
|
対馬 |
壱岐 |
上五島 |
下五島 |
年間輸送回数 |
4 |
3 |
3 |
5 |
|
○収集運搬料金の試算
廃家電1台当たりの輸送料は、以下の通りである。
対馬、上五島、下五島については、現在の収集運搬料金に比べ、4割程度の低減が見込まれる。
表−1.5.10 廃家電収集運搬料金の比較
(単位:円) |
地域 |
収集運搬料金試算結果 |
現在の収集運搬料金 |
単純平均値 |
テレビ |
エアコン |
冷蔵庫 |
洗濯機 |
対馬 |
2,000 |
3,588 |
3,200 |
3,500 |
4,350 |
3,300 |
壱岐 |
1,800 |
1,628 |
945 |
1,470 |
2,520 |
1,575 |
上五島 |
1,900 |
3,308 |
2,520 |
2,835 |
4,725 |
3,150 |
下五島 |
1,900 |
3,203 |
2,520 |
2,835 |
4,410 |
3,045 |
|
|
注: |
収集運搬料金試算結果は、廃家電の品目に関係なく、単純平均値として算出。 |
表−1.5.11 1輸送あたりの輸送料推計
(単位:円) |
積地 |
厳原港 |
郷ノ浦港 |
有川港 |
福江港 |
揚地 |
北九州港 |
北九州港 |
北九州港 |
北九州港 |
積地諸掛 |
バン詰め作業 |
|
80,000 |
80,000 |
80,000 |
80,000 |
リフト費用 |
|
30,000 |
30,000 |
30,000 |
30,000 |
クレーン傭車 |
|
150,000 |
150,000 |
150,000 |
150,000 |
作業員 |
|
120,000 |
120,000 |
120,000 |
120,000 |
荷捌き地使用料 |
|
120,000 |
120,000 |
120,000 |
120,000 |
合計 |
|
500,000 |
500,000 |
500,000 |
500,000 |
海上諸掛 |
海上運航費 |
傭船料 |
1,460,000 |
1,210,000 |
1,360,000 |
1,410,000 |
港費 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
揚地諸掛他 |
揚地諸掛 |
クレーン傭車 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
リフト傭車 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
作業員 |
75,000 |
75,000 |
75,000 |
75,000 |
荷捌地使用料 |
360,000 |
360,000 |
360,000 |
360,000 |
横持諸掛 |
リフト費用 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
人件費 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
償却費 |
コンテナ費用 |
631,233 |
631,233 |
631,233 |
631,233 |
荷役用具費 |
50,411 |
50,411 |
50,411 |
50,411 |
合計 |
|
3,076,644 |
2,826,644 |
2,976,644 |
3,026,644 |
総合計 |
|
3,576,644 |
3,326,644 |
3,476,644 |
3,526,644 |
一般管理費 |
|
357,664 |
332,664 |
347,664 |
352,664 |
適正利潤 |
|
207,069 |
192,595 |
201,279 |
204,174 |
総費用 |
|
4,141,377 |
3,851,904 |
4,025,588 |
4,083,483 |
1TEUあたりの輸送料 |
115,038 |
106,997 |
111,822 |
113,430 |
1台あたりの輸送料 |
1,917 |
1,783 |
1,864 |
1,891 |
|
|
注:収集運搬業者への問い合わせにより作成。 |
○課題
この方法については、廃家電約2,100台をストックする広大な集積ヤードが必要となり、用地の確保が問題となる。
(2)使用済み自動車
1)現状
使用済み自動車の本土までの輸送は、定期航路を使用している場合が多い。また、チャーター船を使用する場合は、スケールメリットがでるように、1隻分の貨物量を確保してから輸送している。各島から本土への使用済み自動車輸送料は、7,000円から20,000円程度となっている。
表−1.5.12 対象離島から本土への使用済み自動車輸送料
地域 |
本土への輸送料 |
対馬 |
8,000円〜15,000円 |
壱岐 |
7,000円〜15,000円 |
上五島 |
20,000円前後 |
下五島 |
15,000円〜20,000円 |
|
|
注1: |
自動車整備業者、自動車販売業者、中古車販売業者への問い合わせにより作成。 |
注2: |
輸送料だけでなく、処理料が含まれている場合もある。 |
2)提案内容
使用済み自動車については、各離島とも輸送経路が複数ある。各離島とも、年間1,000台前後の使用済み自動車の排出台数が見込めることから、なるべく集中的に輸送し、輸送効率を上げることによりコスト低減を図ることを提案する。
(1)定期的な島外輸送日の設定
定期的な島外輸送日を設定し、その日に合わせて使用済み自動車の収集を行う。頻度は、1週間に1回、半月に1回など、使用済み自動車の排出量に合わせ、新たな集積ヤードを整備しなくてもすむように決める。
(2)1船での一括輸送
島外搬出日には、1隻の船舶で島外搬出を行う。複数の船社が営業している場合は、各船社の回り持ちにして輸送する。
なお、今回は、各島から満載に近い状態で出港することを想定している。
(3)島内での中間処理
現在、上五島で中間処理(プレス)が行われており、下五島でもシュレッダー化が行われようとしている。中間処理をすることにより、輸送効率が高まることから、可能な限り島内で中間処理を行う。
3)効果
使用済み自動車を集中的に取り扱うこと、島内で中間処理を行うことにより、荷役効率の向上、輸送効率の向上が見込め、輸送コスト低減につながる。
|