日本財団 図書館


九州運輸振興センター 平成14年度 調査研究
都市圏における複数空港を活用した効率的な航空輸送のあり方に関する調査研究
―新北九州空港有効活用に係る輸送システム方策の検討―
財団法人 空港環境整備協会助成事業
 
I. 北部九州における複数空港活用の必要性
・北部九州においては、これまで福岡空港が事実上、唯一の国際航空の拠点として機能してきたが、今後の国内航空需要の増大と九州及び近接する東アジア地域の航空需要の増加に対して、空港容量が限界に達することが予測され、また、ピーク時における空港混雑問題も喫緊の課題となっている。このような制約が航空貨物の取り扱いに係る利便性の相対的な低下を招き、北部九州の産業に係る競争力向上の阻害につながる可能性も否定できない。
・一方、中部国際空港の供用開始や、羽田空港の再拡張による容量拡大、成田空港の平行滑走路2500m化等の大都市圏における空港整備の進展に伴い、国内での空港間競争も激化が予測されている。
・こうしたなかで、荷主の要求水準や貨物ニーズも常に変化しており、時代環境に応じて航空物流は最適化、効率化が求められていくことになる。
・したがって、北部九州の都市圏全体で、今後の増大する航空需要へ対応し、航空物流に係る航空便益の確保を図るためには、当該地域に立地する複数の空港を有効に活用し、地域全体の競争力の向上に貢献していくことが必要である。
・新北九州空港と福岡空港は、直線距離にして60km(高速道路で約60分)の位置関係にあり、同じ広域都市圏に立地しており、旅客と貨物の両面から2空港が相互に有効に活用されることが地域発展には不可欠である。
 
(拡大画面:56KB)
新北九州空港と福岡空港の位置関係
 
II. 新北九州空港活用に係る可能性と方向性
○新北九州空港における国際航空ネットワーク形成の考え方
 考えられる基本構造は左記のとおりである。
 
旅客定期便については福岡空港での取扱能力を超える需要の取り込み
 (地域における最適な空港選択+母都市需要の発展・拡大)
 +
貨物フレーター(定期便及びチャーター)
・旅客チャーター運航受け入れ
 +
国内・国際リージョナル航空のベース
(貨客両面から少量・緊急輸送に対応)
 
1. 新北九州空港の優位性
(1)地勢的に東アジアに近い立地条件
・中国をはじめ、東アジア地域おいては近年、わが国の主要企業が生産・販売拠点を拡充しており、わが国との物流需要が増大している。北部九州地域は東アジアに地勢的に近く、リードタイム面での優位性を備えている。
 
(2)近隣国(韓国等)との交流基盤
・北部九州は歴史的にも韓国や中国との結びつきが深く、交易・交流が盛んで、現在、福岡空港における韓国路線はソウル、釜山、済州の3路線、中国路線は北京、上海、広州、西安、成都、大連、青島、武漢、香港の9路線が設定されている。
・北九州市からも様々な企業が中国各都市へ進出しており、今後も増加することが予測されている。
・現在の北九州空港において、これまで韓国6都市(仁川、済州、ソウル、釜山、慶州、襄陽)、中国4都市(上海、大連、天津、北京)、ロシア1都市(ウラジオストック)へ、平成3年〜14年にかけて35回のチャーター便の運航が実現し、約2200人(発着ベース)が利用している。また、北九州市では地勢的な優位性を発揮し、インバウンドの活性化に注力しており、平成15年度においても、韓国、中国、台湾、グアムヘ約20便程度の国際チャーター便(年間2000人の利用)が計画されている。
・また、北九州市は1979年に大連市(中国)と友好都市を提携し、1996年には大連駐日本経済貿易事務所西日本代表処が北九州市に開設されている。さらに、仁川国際空港を有し、首都ソウルに近接した重工業産業が集積する仁川広域市(韓国)と1988年に姉妹都市となっており、1998年には仁川広域市貿易事務所が北九州市に開設されている。
 
(3)北部九州都市圏を背後圏にもつ需要ポテンシャル
・北部九州には、政令市の福岡市と北九州市を抱え、約200万人の消費人口を有している。また、自動車産業をはじめ、航空貨物需要につながる製造業が幅広く展開している。
 
(4)大規模な国際港湾機能・充実した国内輸送インフラとの連携
・北九州市では、「北九州市国際物流特区」構想を策定し、大水深港湾、新北九州空港、高速道路、鉄道貨物の充実した交通・物流インフラを活用し、産業集積を図り、わが国のなかでも国際競争力を有する総合物流拠点の形成を目指している。
 
(5)中距離国際線をカバーする滑走路長(現計画2500m滑走路)
・大型機による長距離国際線の運航はむずかしいものの、滑走路2500mにおいてもB767―300F、B757Fによる中・長距離運航はほぼ問題なく行うことができる。また、大型機による貨物フレーターの運航範囲は、概ね航行距離2500マイル程度(B747―400Fの場合)までであるが、着陸重量(到着便)においては、北米や豪州からの運航も離陸は最大重量において可能である。
・したがって、滑走路2500mを有する新北九州空港においては、大型機による韓国、中国、香港等の東アジア各都市などの短距離路線、中型機クラスによる中・長距離路線の運航が可能な状況である。
・しかし、今後貨物空港としての拠点性が高まり、大型機のおいて制約無く東南アジアや欧米等への直行輸送が求められるようになれば、3000m以上の滑走路長を有することが不可欠となる。
 
(6)24時間運用可能な海上立地
・24時間運用は、海上部に立地し、陸域に対する騒音等の環境影響がほとんどないことが条件となる。わが国で、現在24時間運用が実現している空港は新千歳空港、羽田空港、関西国際空港、那覇空港である(整備中の中部国際空港も24時間運用となる)。
・今後、大都市圏に1空港は24時間運用空港が必要となる時代に入ることが想定され、北部九州都市圏においては、新北九州空港以外に24時間運用が可能な空港はいまのところ存在しない。旅客の移動は深夜午前1時〜5時にかけてはほとんどないが、貨物に関してはインテグレートサービスが必要となる貨物を中心に荷動きの時間帯であり、需要は拡大していくものと考えられている。
 
2. 新北九州空港活用の方向性
(1)北部九州における複数空港活用の基本的な考え方
・北部九州都市圏を中心とする多様な航空貨物ニーズに対応するためは、新北九州空港と福岡空港の2空港を有効に活用していくことが必要である。特に、市場競争力を高めるためにはリードタイム短縮と輸送コスト削減が必要であり、これら2空港の相互補完的な活用を図ることにより、これらを実現することが求められる。
・特に、新北九州空港においては、現状の福岡空港での対応が難しい輸送ニーズに応えていくことが必要である。具体的には、福岡空港における旅客便でのハンドリングが難しい特殊貨物や重量・長尺貨物等の取り扱い、インテグレーターが望む深夜便の運航、ベリー輸送により割安となる早朝便の運航、動物検疫など近隣施設立地による優位性のある貨物の取り扱い等を新北九州空港において積極的に推進していくことが考えられる。
・また、中国路線等の今後需要拡大が想定される地域への多方向化・多頻度化に対応するとともに、航空会社間の適正な競争の促進のためにも、新北九州空港と福岡空港の2空港を有効に活用していくことが必要である。
 
(2)新北九州空港の方向性
・新北九州空港を有効に活用するために、左表の方向性が考えられる。
 
区分 対象圏域 役割 方向性 課題等
1次圏 新北九州空港貨物勢力圏 ターミナルデマンドを吸収 ・旅客便の最大活用(基礎需要の確保) →貨客一体の路線形成
→空港近傍における新たな需要自体の創出
2次圏 九州・四国全域(西日本) 九州では福岡空港の補完、四国方面では関西空港の補完 ・特色ある東アジア路線誘致(独自路線の誘致)・東アジアの拠点空港を活用した欧州・北米輸送ルートの構築 →福岡空港利用貨物を含む北部九州圏域における広域集配システムの構築
→中国市場の開拓、市場開放に伴う新興拠点とのネットワーク構築
→仁川空港をハブとするネットワークヘの接続
3次圏 大都市圏・全国 ゲートウェイとしての中継貨物取り扱い大需要地向け流通加工拠点として活用 ・特定荷主・特定企業に対応した輸送サービス・24時間運用可能空港としての利点活用 →国内航空転送システムの構築(陸・空)
→大都市圏空港(羽田空港、成田空港、関西空港)との接続利便によるの構築など
→国際長距離路線の寄港地ネットワークヘの組み入れ
→インテグレーターの中継基地化
→国際物流特区としての活用
新北九州空港の方向性







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION