ブッシュ米政権は、ぎりぎりの選択を迫られた末、イラク攻撃に踏み切った。国連安保理で新たな決議が採択されなかったことは残念だが、国連無視という批判は当たらない。米国は国連との関係が非常に重要であることを十分認識しているが、イラクの大量破壊兵器除去という本来の目的を重視し、苦渋の選択をしたのだ。
昨年11月、安保理で採択された決議1441は、イラクが、即時、全面的な武装解除に応じなければ「深刻な結果を招く」と警告している。新たな決議案は、この表現をより明確にするために提出されたものであり、その採否が直接、武力行使の是非を左右するわけではない。決議1441に湾岸戦争当時の678、687両決議を合わせれば武力行使の根拠になる。つまり、米英軍の行動は先制攻撃ではなく、国連安保理決議に基づくものであり、正当化されると考える。
小泉純一郎首相がブッシュ政権の決断に支持を表明したのは、「国連中心主義」「日米同盟堅持」「アジア重視」を日本外交の3原則と位置づけ、国益を総合的に判断した結果だ。
現在、日本の安全保障上の最大の関心事は北朝鮮情勢だが、仮に情勢が緊迫し、国連安保理に制裁決議を提出した場合、中国とロシアが拒否権を発動して決議が採択されない可能性が高い。国連がアジアの平和と安定を保障できない以上、日米同盟で対処するしかない。在日米軍の報復能力こそ、北朝鮮に対する最大の抑止力なのである。
今回の米国の対応は、01年9月11日の米同時多発テロの延長線上にある。米国はあのテロによってイラクの大量破壊兵器が自国を直撃する恐れがあることに気づいた。首謀者とされるウサマ・ビンラディンとサダム・フセインのつながりは分かっていた。今後もイラクが国際テロ組織を通じて危険な武器を全世界にばらまく可能性がある。もしあの時、世界貿易センタービルに突っ込んだ飛行機が大量破壊兵器を積んでいれば、ニューヨークは全滅に近い打撃を受けただろう。
戦争は長くとも1カ月で終わると思う。国連の機能を修復するため、安保理で「イラク復興決議」が採択されるべきだ。日本としては、それを受けて速やかに復興支援法案を国会に提出し、成立させたい。国連が戦後の治安維持部隊を組織すれば、日本も自衛隊を派遣し、輸送、医療や大量破壊兵器の廃棄作業などに協力すべきだ。
イラク問題は将来の日本の外交、安全保障のあり方に大きな問いを突き付けている。米・英・豪などの青年が血を流し、体を張って大量破壊兵器の災厄から世界の平和と安全を守る一方、日本は支持を表明するだけで、自衛隊を派遣できない。将来的には憲法を改正し、国連の多国籍軍にも自衛隊を派遣できるようにすべきだ。国連安保理の常任理事国入りを目指すことも必要だ。さもなければ、いつまでも国連の「バイプレーヤー(わき役)」に甘んじることになる。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。