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2002/11/15 毎日新聞朝刊
イラク・国連決議受託書簡(要旨)
 
 イラクが13日、国連事務総長に送った安保理決議1441受諾の書簡(要旨)は次の通り。
一、  イラクに対する最も邪悪な中傷者である米国のブッシュ大統領と追従者である英国のブレア首相は、国連査察団が撤退した98年以来、イラクが核兵器を製造しているかもしれない、あるいは過去に製造過程にあったのではないかと、悪意に満ちたでっちあげをして大騒ぎしている。イラクが化学・生物兵器を製造していたと強調している。しかし、米英両国も我々と同様、そして他の国々も同じように、そんなでっちあげには根拠がないことが分かっている。
一、  我々はまず9月16日にニューヨークで国連の(アナン)事務総長と会い、国連査察団受け入れで合意した。次に国連監視検証査察委員会のブリクス委員長や国際原子力機関のエルバラダイ事務局長らと会談後、共同声明を発表した。しかし、パウエル米国務長官は査察団の復帰を拒むことを宣言した。一方、悪の集団(米英)は新決議の採択について協議を始めた。決議案は米政権の圧力と脅しの下で採択された。
一、  米国は政策や侵略的な目的ゆえに、世界の人々の憎しみをかっている。このような状況は過去の植民地時代を含めてどの国も経験したことがない。安保理などは米国の不正な行動を止めるどころか助けているのだ。
一、  我々は、国連が人々の信頼と愛着を失うのではないかと懸念する。もしも国連が国際連盟と同じように崩壊することになれば、その責任は米政府だけでなく、米国の脅威によって米国の利益のために行動した憶病な国々にも存在する。
一、  安保理で米国の決議案が議論され、メキシコがイラクに対する制裁解除の可能性を提起した際、沈黙を保った国は最も非難されるべきだ。メキシコ代表は、米国の決議案には制裁解除と中東地域の非武装化に関する説得力ある説明がないと指摘した。
 英国代表は、制裁解除の文言を決議案に入れるべきだとするシリアとメキシコ代表の提案を聞き、イラクは大量破壊兵器を廃棄する機会はあったのに無視してきたと述べ、態度が変わらない限り、制裁解除に言及するのは不適切だと主張した。
 イラクがいつ、どこで、どうして大量破壊兵器を持つ決断をしたというのか。安保理参加国で、この点を英国に問いただした国はない。自国には関係ないことのように沈黙を保った。
一、  国連の将来は改革なしにはありえない。国連の将来を案じる者は、邪悪な枠組みや武力によって世界に脅威を与え、真実、正義、公正を犠牲に利益を実現しようとする者の気まぐれや御し難い本能を支持してはならない。
一、  国連決議1441の採択を押し付けた国々には、イラクが大量破壊兵器を開発していないと確認する以外の目的がある。この決議の採択に正当な理由はない。悪意を持った国々による「邪悪な内容」ではあるが、我々はイラク国民を守るため決議に対処する。
一、  国民の尊厳、安全、独立と国家の主権を守ることがイラク指導部の神聖な義務であるということを我々は忘れないし、他の国々も忘れるべきではない。
一、  我々には期限内に査察官を受け入れる用意がある。イラク政府は彼らの行動や意図、またイラク国民の尊厳や国家の安全と独立、主権に対する不適切な行為に注視する。
一、  我々は国際法にのっとった査察が早急に行われることを望む。安保理の目的が達成されれば、イラクに対する不正な制裁を解除することが安保理の義務となる。
一、  イスラエルによるパレスチナ占領を終わらせる、二枚舌でない国連決議が採択され、戦争を挑発する国々がイスラム教徒への侵略をやめれば、世界と地域の安定に貢献するだろう。
一、  繰り返して言う。査察官をイラクに派遣し、合法的かつ職務に忠実な行動をとれば、イラクが核、化学、生物を問わず、大量破壊兵器を開発していないと証明できるだろう。米英両政府のうそとごまかしが白日のもとにさらされることになる。
一、  国連事務総長は愚かな者たち(米英など)に対し、(査察)実行を通じて事態をがけっぷちに追いやらないよう忠告してほしい。イラク国民は尊厳、祖国、自由などを犠牲にして生きることは望まず、守るべきものは命をかけて守るからだ。
一、  後日、決議1441の手段と手続きが国際法と国連憲章に反するという我々の所見を記した書簡を国連事務総長に送りたい。
 
 
 
 
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