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2002/10/03 毎日新聞朝刊
安保理論議どうなる 強まる攻撃慎重論−−対イラク
 
 米英両国がイラク攻撃を計画している問題は、イラクが1日、既存の国連安保理決議に基づく査察を受け入れたため、先の読みにくい複雑な展開になりつつある。米英は依然として、国連安保理での対イラク武力行使容認新決議の採択を求めているが、イラクの軟化を受けて仏露中など攻撃慎重派の発言力も強まっており、安保理での議論はさらに紛糾しそうだ。今後のシナリオを探った。
(ニューヨーク上村幸治)
◇新決議採択にハードル
 国連による大量破壊兵器の査察を拒否してきたイラクは、米国による攻撃示唆を受け、無条件で査察を受け入れると表明した。ウィーンで開かれた国連とイラクによる査察準備のための実務協議で、イラクは「過去の国連安保理決議に従って査察を受け入れる」ことを確認した。しかし、米英両国は、これまでの経緯からイラクを信用できないと指摘し、あくまで安保理で「より厳しい決議」を採択するよう呼びかけている。今後の安保理の動きについては、以下のような筋書きが浮かび上がっている。
★シナリオ1
 国連安保理が米英の出す対イラク武力行使容認の新決議を採択する。米英はこれを受け、イラクが安保理決議に違反しているという理由でフセイン政権転覆の全面戦争を仕掛ける。
 もっとも、決議採択のためには、以下の問題を解決する必要がある。
 ◆武力行使◆
 米国の決議案草案によると、国連加盟国はイラクに対し、武力行使を含む「あらゆる必要な措置をとる」ことが認められる。
 草案は、イラクによる過去の安保理決議への違反があれば武力を行使できると説明し、その違反には「虚偽の報告」なども含まれるという。米国にとっては、ほとんど自由に、独自の判断でイラク攻撃に踏み切ることが可能になる。
 このため、他の安保理構成国から「武力行使が可能になる条件をもっと厳格に規定すべきだ」という声が出ている。
 ◆期限設定◆
 決議案草案はイラクに対し、30日以内に大量破壊兵器の有無について情報を開示するよう求めている。
 一方、国連はすでに、査察団先遣隊を10月中旬までにイラクに派遣すると表明している。米国決議案が採択されると、査察団が足止めされる公算が大きい。このため、期日設定などについても修正を求める声が出そうだ。
 ◆武装査察◆
 決議案草案には「治安部隊が査察団を守る」という条項がある。ただし、治安部隊の性格について具体的には規定していない。
 米英両国は水面下で「軍の部隊というより警官による護衛を想定している」と説明している。これに対し、他の安保理構成国は、決議案の中で治安部隊の性格と役割を明確に規定するよう促している。
◇フランス対抗案で妥協模索
★シナリオ2
 米英両国案に対し、仏露が拒否権行使の構えを示して抵抗する。安保理で、フランスの考えている対抗案(2段階決議)について話し合い、米英案との間で妥協点を見いだしていく。
 2段階案は、最初に査察実施の確認を求め、これができなかった場合に新たな決議案について議論しようというもの。2番目の決議で武力行使が容認される可能性が強い。ただし、それまでの間、外交努力を続けることも可能になる。
◇協議不調、攻撃開始−−国際情勢流動化も
★シナリオ3
 国連安保理で意見がまとまらず、米英案、仏案ともに採択することができないまま、話し合いは失敗に終わる。米英は国連安保理の新たな決議なしにイラク攻撃に踏み切る可能性がある。ただし、米英軍の攻撃の前に国連の査察団先遣隊がイラクに入ってしまった場合、彼らがイラクによって「攻撃を防ぐための盾」に使われる懸念がある。
 また、米英の対イラク戦争に「国連のお墨付き」がないため、仏露中やアラブ諸国が反発し、中東問題を含む国際情勢が流動化する危険がある。同時に国連安保理の権威が失墜し、「世界の平和と安全」を担う国連も、影響力を大きく低下させることになる。
 (この記事には表「安保理常任理事国の姿勢」があります)
 
 
 
 
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