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第3章 まとめと今後の課題
3.1 まとめ
 本年度は、シミュレーションにより、水深データと海底面画像データの検証を行った上で、データの収集及びプログラム開発、画像化を実施し、目標値の評価を行った。以下に本年度実施結果を示す。
 
(1)データの収集及び取得データの評価
 動揺データの検証及び水深データと海底面画像データの位置精度、照射覆域の評価を実施した結果、以下を確認した。
1. 水深データの照射覆域は、ロールの測定誤差や屈折補正による誤差よりも大きく、特に入射補角が40度を超える外側ビームほど、代表する面積が大きくなるために、測深誤差を含んだ場合に、誤差成分への関与が高くなる。
2. 海底面画像データの照射覆域は、水深データとは逆に、外側ビームから収録されたデータよりも、送受波器直下のデータの方が、照射覆域が大きい。これは、海底面画像データのサンプリング間隔が一定のため、水平距離に画像データを並べ替えた場合に、送受波器の直下付近では、画像データが引き伸ばされ、外側ビームに比べて解像度が著しく劣化するからである。
3. 水深及び海底面画像データの探査幅は、測量開始時にオペレータが設定するレンジ幅のみで決定されるため、カタログ等により、両者の探査幅の関係を確認する必要がある。またレンジ幅を長くすると、海底面画像データの解像度が劣化するため、解像度の高い海底面画像データの収録には、レンジ幅を直下水深の2倍程度に設定することが望ましい。
 
(2)画像処理技術の開発研究
1. 海底面画像データに含まれる放射量歪みの補正方法の検討及びプログラム開発を実施した。補正後の画像には、放射量歪みの軽減が見られ、本プログラムの有効性を確認した。
2. 斜距離補正方法の検討及びプログラム開発を実施した。斜距離補正に使用する高さの情報の中で最も誤差が小さいのは、水深データに含まれる最小水深値に音速補正を施した値を用いた場合である。水平距離の誤差は、最大約1.57mとなり、海底面画像データに含まれている「高度」データを使用した場合の誤差(4.5m)に比べて小さい。またデータ収録装置で得られた海底面画像データの斜距離補正の例が示すように、HYPACK収録は明らかに、時間遅れが発生しており、その大きさはピング毎に変化する。
3. 幾何学的位置精度の高い画像処理法の検討を行い、プログラム開発を実施した。
4. ターゲットを用いた名古屋港実験の海底面画像データの画像処理を実施し、ターゲットの画像化を行った。本年度に作成した水深図及び音響画像から判断すれば、入射補角40度以内においては、精度の高い地形歪み除去が可能であると考える。ただし入射補角40度以内においても、ビーム間の水深値の補間が除去精度を大きく左右することとなる。
 
(3)目標値の修正
 本年度のシミュレーション及び画像処理結果から目標値の修正を行った。
 
3.2 今後の課題
 本年度は、本研究のテーマの一つである「海底起伏あるいは傾斜によって生じる地形歪みの検証及び補正方法の確立」についての研究開発を実施した。本テーマの目標は、地形歪み除去手法の確立とその精度の検証である。今後、名古屋港で得られた画像から地形歪み除去を行うことにより、精度の検証及び目標値の達成度を評価し、除去手法の確立を目指す。
 
 また本研究のもう一つの大きなテーマである「海底面画像データの後方散乱強度分布から海底底質分類の可能性の検討」は、音波による海底底質の分類の可能性に関する研究であり、分類技術の開発研究を行うものである。本研究により、音波による地形、底質の同時観測につながり、水路測量業務の簡便化が期待される。







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