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3・3・2 アンテナとアース(接地)
 アンテナにはアースをとる接地型とアースが不要な非接地型アンテナがある。
 図3・8(a)、(b)のダイポールアンテナは非接地型で、(c)の垂直アンテナは接地型アンテナである。
 
図3・8 非接地型アンテナと接地型アンテナ
 
 非接地アンテナは大地の影響を受けないようにできるだけ高く設置する。接地アンテナは(c)の点線で示した地中の映像アンテナを形成させるためにアース線で大地と結合させる必要がある。海上で使用する場合はアース線を海中に投入する。
 
 アンテナに高周波電流を供給するとアンテナ線上に電流と電圧が分布する。
 アンテナの長さが1/2波長の整数倍のときアンテナが共振して能率よく電波が発射される。
 図3・9にアンテナ長が(a)1/2波長、(b)1波長及び(c)2波長のときの電圧と電流の分布を示す。(a)をダイポールアンテナと呼び、基準アンテナとなっている。(a、c)は中央の給電部で電流が最大で電圧が最小となり、アンテナの端では逆に電流が最小、電圧が最大となる。アンテナの長さにより異なる電波の指向性を生じる。
 
図3・9 アンテナの電流分布と電圧分布
 
 図3・10に1/4波長接地型アンテナの電流と電圧の分布を示す。接地(アース)をとることにより地中に1/4波長の影像アンテナが形成されアンテナ長が2倍の1/2波長ダイポールアンテナとして動作する。影像とは鏡に姿を映すときに鏡の中に自分の姿が見えるのと同じ原理である。地中に1/4波長の影像アンテナが電気的に形成されるので地上の1/4波長アンテナと合わせた1/2波長垂直ダイポールアンテナを形成する。
 1/4波長接地型垂直アンテナは1/2波長垂直ダイポールアンテナと同じ垂直面内の指向性を持つ。
 
図3・10 1/4波長アンテナ
 
図3・11 ダイポールアンテナと等価回路
 
 図3・11に水平ダイポールアンテナと電気的等価回路を示す。アンテナ導体はインダクタンスLe、大地との間に容量Ce及びアンテナ抵抗Reを持つ。アンテナ抵抗は
 
Re=RΩ+RA (3・6)
 
となる。RΩはアンテナ線の導体抵抗で、オームの法則による電力損失分である。
 RAが電波として放射されるアンテナ電力の抵抗で、アンテナ実効抵抗と呼ばれる。RΩが小さくてRAが大きいほど能率よく電波が放射できる。
 アンテナの共振周波数fr(Hz)と等価回路定数との関係は
 
 
で計算される。IAは給電部におけるアンテナ電流である。
 図3・12に開口面アンテナの例を示す。(a)角錐ホーン、(b)円錐ホーンのように開口部から直接電波が前方に放射されるか、(c)反射板付きダイポールのように反射板により反射した電波を放射するアンテナがある。開口面を大きくするほど電波が集中して鋭い指向性のビームとなって前方に放射できる。
 パラボラアンテナの指向性を図3・13に示す。放射電力が最大値の半分となる放射ビームの幅をアンテナの半値指向幅θ−3dBとする。電力が半分の値はデシベル表示で最大値より−3dB電力が低くなる指向幅である。電界では−6dB(0.707)となる。
 
図3・12 開口面アンテナの例
 
図3・13 パラボラアンテナの指向性
 
 半値幅の指向性は
 
 
 ここで、ηは開口面能率でアンテナ面上の電流分布などにより0.6〜0.8の値となる。D=パラボラの直径、λ=波長、π=円周率を(3・9)式に代入すると、パラボラアンテナの指向性は
 
 
として計算される。







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