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5・4・5 電圧計と倍率器
 アナログ型テスターの電圧計は、電流計に直列に外部抵抗を接続すると電圧計となる。外部抵抗の値を切り替えることから電圧計のレンジ切り替えができる。このときの外部抵抗を倍率器と呼ぶ。
 図5・7(a)に電流計Mに倍率器Rを直列接続した電圧計を示す。(b)は電圧計のレンジ切り替え回路を示す。
 
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図5・7 倍率器付電圧計
 
 (a)において電流計Mは内部抵抗rをもつので電流計の端子電圧EVは定格電流をIとすると
EV=I×r (5・22)
となるが、この値は小さくて数mV〜数十mV程度なので大きな電圧を測定するには倍率器Rが必要になる。電流計の端子電圧EVのm倍の測定端子電圧Eとするための倍率器Rの値を計算する。電流計定格電流Iから
E=IR+Ir=I(R+r) (5・23)
E=mEV=mIr (5・24)
の2つの式からEとIを消去すると
R=(m−1)r (5・25)
となるので、電流計の内部抵抗rの(m−1)倍の倍率器を直列に接続すればレンジがm倍となる。倍率mは(5・24)式から
(5・26)
となるので(b)図のように倍率器Rを切り替えて電圧計のレンジが拡大できる。
 
5・4・6 デジタルボルトメータ
 アナログ電圧をアナログ/デジタル変換器(ADコンバーターとも呼ぶ)によりデジタルパルスに変換して計数回路によりパルスの数からアナログ電圧を測定するデジタルボルトメータの系統図を図5・8に示す。
 
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図5・8 デジタルボルトメーターの系統図
 
 雑音混入による誤動作を防ぐため二重積分型ADコンバータによるボルトメータが普及している。図5・9にその回路構成と原理図を(a)と(b)に示す。測定電圧Vxと比較する基準電圧VSをそれぞれ積分器で積分してアナログ電圧に比例した計数パルスをつくりそれぞれの計数値N1とN2及び安定した基準電圧VSのみから測定電圧Vxが求められる。
 
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図5・9 二重積分型ADコンバータによるデジタルボルトメータ
 
 始め入力スイッチS1はA端子、積分器スイッチはS2をONからOFFとすると測定電圧VXが積分されて積分器出力は(b)のように時間t1から直線的に降下する。ゼロ検出用コンパレータ出力がV0に到達する時間t2までクロックパルスが制御回路を通ってカウンタに送り込まれパルス数N1が求められる。t2の時間からS1はB端子へ切り替えられてマイナス極性の標準電圧、−VSにより積分器出力は(b)に示すようにt2から直線的に上昇する。時間t3で初期電圧0に戻る。t2〜t3の間のクロックパルス数N2をカウンタで計数する。
 測定電圧VX、出力電圧V0、と時間t1〜t2の間の関係は
(5・27)
ここで、CRは積分器の時定数である。時間t2〜t3ではV0から0まで上昇するので
(5・28)
両式から測定電圧VXを求めると
(5・29)
となり、パルス数と標準電圧だけから測定電圧VXが求まる。積分器により回路の変動や雑音の妨害が除去されて安定なデジタル電圧計となる。積分器のS2はONにすると積分器出力を0の初期条件に戻す役目をする。
 
5・4・7 抵抗測定(オームメータ)
 抵抗測定には、電圧・電流計法、ブリッジ法、オームメータ法、絶縁抵抗計(メガー)等がある。ここでは図5・4のテスターに使用されているオームメータを説明する。図5・10(a)にオームメータの原理図、(b)にオームメータの目盛りを示す。
 
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図5・10 オームメータ
 
 電流計A、電池E、電流計内部抵抗も含めた直列抵抗rの回路に測定する抵抗Rを接続する。回路に流れる電流はオームの法則から
(5・30)
 測定端子をショートしたときの回路電流I0(5・30)式でRを0とすることから
(5・31)
 (5・30)式(5・31)式からEを消去すると
(5・32)
 (5・32)式は電流比(I/I0)と抵抗比(R/r)の関係が双曲線となることを示す。ショート電流I0がメータのフルスケールとなるように始めに調整しておけばメータの指示値Iで測定する抵抗値Rを直読することができる。(b)図にオームメータの目盛りを示す。R=0のショート電流IOでフルスケール、開放R=∞で0の目盛りとなる。







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