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3・2 電波伝搬と電離層
 アンテナから放射された電波は地上波と空間波となって伝搬する。図3・4に電波の伝搬状況を示す。
図3・4 電波の伝搬
 
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に分類される。
 図3・5に電離層と電離層波の伝搬を示す。
図3・5 電離層波の伝搬
 
 電離層は太陽から放射される微粒子や紫外線により大気中の酸素や窒素等のガスが電離されてプラスとマイナスに帯電したイオンの雲が地球の上空に形成されたもので、電波を反射したり、進路を曲げたりして空間波をつくる。高度約50kmのD層は太陽からの紫外線によるもので波長が長い長波を反射する。E、F層は太陽からの放射微粒子によりつくられる。E層は高度約100kmで中波の進路を曲げて地上に降ろす役目をする。F層の高度は約200kmあり、昼間はF1とF2に分かれるが夜間に合体して1つの層となる。F層は短波の進路を曲げて地上に降ろす。周波数が高くなるほど高い電離層で反射される。超短波やマイクロ波はすべての電離層を突き抜けるので地上波しか利用できない。
 人工衛星は電離層より高い軌道を持つので電離層を突き抜ける超短波やマイクロ波が使用される。より高い周波数のミリ波を宇宙通信に利用すると大気中の雨による減衰が大きくなる。夜間に遠くの中波放送が聞こえるのはD層内の減衰が少なくなり、D層を突き抜けてE層で反射された中波の空間波が地上に届くから遠くの放送が聞こえるようになる。
 
3・3 アンテナ
 アンテナは導線による線状アンテナとパラボラのような面を持つ開口面アンテナに大別される。電気力線を検出するアンテナを電界型アンテナと呼び、垂直接地アンテナやダイポールアンテナは電界型で、ループアンテナは磁力線を検出する磁界型アンテナである。電気力線を含む面が垂直の電波を垂直偏波、水平の電波を水平偏波と区別する。電気力線が回転しながら伝搬する電波を回転偏波と呼ぶ。
 
3・3・1 電波の放射
 アンテナに高周波電流を流すと電気力線(電界)と磁力線(磁界)が発生する。図3・6に示す長さlの電気ダイポールアンテナに電流Iを流したときに距離rにおける電波の進行方向に対して横方向の電界Eθ(r)が発生する。電界Eθ(r)はアンテナからの距離rに従って(3・4)式に示す3つの電界成分に分かれる。
図3・6 電気ダイポールから放射される電界
 
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Eθ=A{1/r3+jk/r2+k2/r1}=準静電界+誘導電界+放射電界 (3・4)
 
となる。ここで、A、j、kは定数である。{}のなかの第1項は準静電界と呼び、距離rの3乗に逆比例する。第2項は誘導電界と呼び、距離rの2乗に逆比例する。準静電界と誘導電界は距離rが大きくなると逆数なので直ぐに小さくなる電界成分を表す。第3項の放射電界が電波と呼ばれる電界で、距離rに逆比例するので距離rが大きくなっても減衰が少なく遠くまで伝搬するのでこれを電波として利用している。
 静電界や誘導電界が存在する領域を近傍電磁界領域、放射電界が存在する遠くの領域を遠方領域と呼ぶ。通信等は遠方電磁界領域の電波を受信している。
 定数Aはアンテナの大きさに比例する値を持つので大型のアンテナでは近傍電磁界が消えないで遠く離れた地点でも存在する。アンテナの近くではアンテナ指向性が距離で変化する。
 放射磁界では誘導磁界と放射磁界のみで準静磁界は存在しないことが理論的に示されている。磁界=誘導磁界+放射磁界、となる。
 図3・7にパラボラアンテナの指向性を示した。距離rが遠くなると近傍指向性から遠方指向性(放射電界)となり、指向性が鋭くなる。しかし、遠方領域になると一定の指向性となり距離とは関係しなくなる。
 
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図3・7 距離による指向性の変化
 
 近傍領域と遠方領域の境界距離rFはアンテナの大きさ(直径)D、電波の波長λから
(3・5)
となる。大型アンテナのrFは遠く離れた地点となる。
 
3・3・2 アンテナとアース(接地)
 アンテナにはアースをとる接地型とアースが不要な非接地型アンテナがある。
図3・8(a)、(b)のダイポールアンテナは非接地型で、(c)の垂直アンテナは接地型アンテナである。
図3・8 非接地型アンテナと接地型アンテナ
 
非接地アンテナは大地の影響を受けないようにできるだけ高く設置する。接地アンテナは(c)の点線で示した地中の映像アンテナを形成させるためにアース線で大地と結合させる必要がある。海上で使用する場合はアース線を海中に投入する。







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