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第2章 電子回路と送信機・受信機の基礎
2・1 アナログ回路とデジタル回路の特色
 アナログの語源は「類似」で、信号の大きさの変化に類似し、連続した電圧や電流の回路がアナログ回路である。デジタルの語源は「計数」で、信号の大きさを1と0の符合に対応した電圧や電流の数で取り扱う回路がデジタル回路である。
 自然界の音や光などはアナログ量であるので電気信号に変換するとアナログ回路となる。人間の目、耳などはアナログ感覚器官なのでデジタルで信号を伝送しても最後はアナログに変換する必要があるが、アナログ信号は量的な大きさを取り扱うので雑音などの妨害に弱い欠点がある。
 デジタルは雑音の混入で振幅が変化しても、信号の大きさが或る値(しきい値という)より大きければすべて1のレベル、しきい値より小さければすべて0のレベルと判定して取り扱うので雑音による変動の影響が少なくなる。デジタル回路の特色は利点として
(1)雑音に強い
(2)安定なデジタル素子回路が使用できる
(3)デジタル通信において生じた誤りの検出や訂正ができる
(4)コンピュータと結合して信号処理やメモリーが容易となる
欠点としては
(1)回路が複雑となる
(2)周波数帯域幅が広がる
(3)デジタル−アナログ変換器が必要となる、等がある。
コンピュータの発達によりデジタル回路が進歩して、ラジオ、テレビ、通信機、音響機器など多くの電子機器がアナログからデジタルに移行しつつある。
 
2・2 アナログ電子回路
2・2・1 増幅回路
 トランジスタ及びFETの基本増幅回路は第1章1・3・6〜1・3・8項に説明してある。これらの基本回路を組合わせると種々な機能を持つ増幅器が構成できる。
 増幅器に要求される特性は
(1)増幅度;安定な要求される増幅ができること
(2)周波数特性;必要な広い周波数帯域幅の増幅ができること
(3)直線性(ダィナミックレンジ);広い入力電圧の変化に対してひずみがないこと
(4)低雑音性(雑音指数);増幅器内部から発生する雑音が小さいことである。
(1)増幅度の定義;
 増幅器の入力と出力の比を増幅度と定義する。電圧の比を電圧増幅度、電力の比を電力増幅度と呼ぶ。増幅度の対数をとりdB(デシベル)で表すことが多い。
(2・1)
(2・2)
図2・1に増幅器の記号を示す。
図2・1 増幅器の記号表示
 
(2)オペアンプ(演算増幅);
 オペアンプは図2・2に示すような2つの入力と1つの出力を持つ増幅器で2個のトランジスタの組合せなどで構成される。安定した増幅度、高い入力インピーダンスZiと低い出力インピーダンスZOとなりコンピュータの演算回路やセンサー回路等に広く利用されている。2つの入力の差の電圧を増幅するので差動増幅器とも呼ばれる。
 
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図2・2 オペアンプの記号と回路
 
 オペアンプの出力VOは増幅度Gから
 
VO=G(V2−V1) (2・3)
 
となる。増幅度Gを105以上大きくすると出力VOがある値となるためにはG=∞と置くとVO=∞×0 となる必要があるので差分入力電圧は0となり
 
V2−V1=0 より V1=V2 (2・4)
 
となり入力(1)と(2)の電圧が等しくなる。また、入力インピーダンスZiが非常に大きいので入力電流は0となる。この特性により種々の演算回路が構成できる。
図2・3(a)に出力電圧が入力電圧の微分となる微分回路、図2・3(b)に積分となる積分回路を示す。それぞれの出力を(2・5)式(2・6)式に示す。
(2・5)
(2・6)
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図2・3 微分回路と積分回路
 
2・2・2 発振回路
 交流や高周波のような電圧を発生するには増幅器と共振特性を持つ帰還回路の組合せを用いる。図2・4に発振器の原理図を示す。
図2・4 発振器の原理図
 
Gは増幅器の増幅度、βは帰還回路の増幅度である。増幅器出力を帰還回路を通して入力に戻すと図2・4の合成増幅度Aは
(2・7)
となるので
Gβ=1 (2・8)
の条件のときA=∞となり回路が発振して電圧を発生する。帰還回路にLC回路や水晶回路をいれるとその共振周波数の発振電圧を発生できる。図2・5に水晶発振回路を示す。(a)はコルピッツ回路でトランジスタ出力を水晶L3を通して帰還している。(b)はハートレイ回路で出力をコンデンサーC3で帰還して水晶L1で共振させている。
 
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図2・5 水晶発振回路







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