日本財団 図書館


1・3・9 集積回路、Integrated Circuit:IC;
 半導体素子を小さくして電子回路を集約したものを略してICと呼ぶ。ICはチップ当たりの素子数(集積度)が多くなるに従ってLarge Scale Integration:LSI、Very Large Scale Integration:VLSI、Ultra Large Scale Integration:ULSIと呼ばれる。LSIは素子の加工寸法が1μm、集積度が106程度であったがULSIでは0.1μm、108のICができるようになってきた。
 IC回路の構成と製作法により薄膜型ICとモノリシック型ICに分類される。薄膜型は半導体材料で薄い膜状のR、L、C素子を作り基板上で回路を組み立てるICで、トランジスタのような能動素子を基板上に外付けをする混成集積回路(ハイブリッドIC)もある。
 集積度は高くできないが製作工程が簡単で、変更が容易、大電力に対応できるなどの利点がある。図1・46に薄膜集積回路による差動増幅回路の基板上のパターンと実際のIC回路を示す。
 
(拡大画面:85KB)
図1・46 作動増幅器の薄膜集積回路
 
 モノリシックは単体の意味で、写真技術で回路を描き、写真食刻、蒸着や拡散技術で単一基板内にLCRの受動素子とダイオードやトランジスタの能動素子から配線までを集約した電子回路を構成する。大量生産に向き信頼性が高いICができる。
 製法は、P又はN型半導体基板上に回路パターンを写真焼き付けする。図1・47はN型基板にNPN及びPNPトランジスタを形成する場合を示す。N型シリコン基板上に酸化シリコンS1O2の薄膜絶縁層を形成して、電子回路パターンを写真焼き付ける。トランジスタを形成する部分の絶縁層を化学的薬品処理で取り除きインジウムやガリウム等の不純物を蒸着注入するとNからP型に反転する。さらに砒素やアンチモンなどを注入すると再びPからN型に反転するのでNPN層が形成される。同様に不純物材料を選ぶとPNPトランジスタが形成できる。
 抵抗や配線は抵抗体材料や導体材料を蒸着して形成する。コンデンサやコイルなどの受動素子も形成できるが、形状が大きくなるので増幅器と組合せた等価容量や等価インダクタンスを形成する。モノリシックICは能動素子を多数集積するメモリー回路等に有利であるが、論理回路や機能デバイスなど高度なIC回路も多量生産できるようになってきた。図1・48にモノリシックダイオードとトランジスタを示す。
図1・47 モノリシックICの生成
図1・48 ダイオードとトランジスタ
 
1・3・10 電子部品と電気部品
サーミスタ;
 コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅、チタン等の酸化物を組合せて1000度以上の高熱で焼き固めた素子をサーミスタと呼ぶ。温度が上昇すると抵抗値が敏感に小さくなる負の温度感度素子として温度制御や発振器の安定化等に使用される。図1・49にサーミスタと抵抗素子の温度による抵抗変化を示す。図1・50は種々なサーミスタ素子の形状を示す。
図1・49 サーミスタの温度特性
図1・50 サーミスタ素子の形状
 
バリスタ;
 抵抗値がオームの法則に従わないで非線形な電圧−電流特性を持つ素子にバリスタがある。図1・51のようにシリコンカーバイトSiCを高温で焼き固めて電極に挟んだ素子は電流により急激に抵抗値が下がるのでリレーの接点に付加すると火花が消去できる。電流−電圧特性はkとnを定数として(1・51)式で表せる。
 
I=kVn (1・51)
図1・51 バリスタ
図1・52 EL発光素子
電界発光素子、Electro−Luminescence:EL発光素子;
 硫化亜鉛系、ZnSの材料に数十〜数百Vの電圧を掛けると蛍光を出すので表示用等に使用される。図1・52にEL素子の構造を示す。10〜100μmの薄膜状発光材料を電極で挟み交流電圧を加えると蛍光を出す。電極の片側を透明導体とすると外に光を取り出すことができる。
電気部品と記号;
 電子回路を構成するには抵抗、コンデンサ、コイル等のほか、ランプ、スイッチ、スピーカー等の電気部品を使用する。図1・53に配線も含む主な電気部品を記号で表した。図にはダイオード、トランジスタ、及び真空管の記号も示してある。これらの記号を用いて電子回路の配線図が描かれる。
 ICの1チップ中にポータブルラジオのすべての回路が組み込まれるようになり、外部から電子回路が見えないようになってきた。ICを組合せてパソコンのような複雑な電子回路も構成されるようになってきた。ICチップが抵抗やコンデンサのように部品として取り扱えることから修理が容易になったが高価なICを取り替える場合も出てきた。
 電子素子は小型化と多機能複雑化される動向にあるが、この結果雑音や電波干渉等の妨害を受けやすくなり電磁両立性、Electro Magnetic Compatibility:EMC問題が重要となってきた。
 
(拡大画面:119KB)
図1・53 電気部品と記号







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION