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2.4.3 重要補機の電動動力装置
 ここには、重要補機の電動動力装置のうち、装備に当たって、特に考慮を要する事項について一括取りまとめ特記する。
(1)電動操だ装置及び電動油圧操だ装置については、設備規程第285条及び第285条の2並びに第140条〜145条の規定による。
 
(電動操だ装置及び電動油圧操だ装置)
第285条 電動操だ装置及び電動油圧操だ装置の電動機は、次に掲げる要件に適合するものでなければならない。
(1)だ柄を直接駆動する電動機は、予想される圧力に対して十分な起動トルクを有するものであること。
(2)外洋航行船に備えるものにあっては、次に掲げる警報装置であって、主機室又は機関制御室に可視可聴の警報を発するものを備えたものであること。ただし、総トン数1,600トン未満の船舶の補助操だ装置の電動機であって、通常は他の用途に使用されているものについては、この限りでない。
イ. 過負荷警報装置
ロ. 電動機が3相交流の場合には、欠相に対する警報装置
2. 外洋航行船の電動操だ装置及び電動油圧操だ装置の電動機に給電する電路は、次に掲げる要件に適合するものでなければならない。
(1)主配電盤から他の配電盤を経由せず給電するものであること。ただし、1の電路は非常配電盤を経由するものとすることができる。
(2)主配電盤からの電路は、この目的のためにのみ備える2以上のものであること。ただし、総トン数1,600トン未満の船舶にあっては、主操だ装置及び補助操だ装置のいずれの動力も専用の電動機による場合に限る。
(3)各電路の容量は、同時に作動することのある電動機に十分給電し得るものであること。
(4)各電路は、同時に損傷を受けることのないように1の端から他の端までできる限り離して布設したものであること。
3. 電動操だ装置及び電動油圧操だ装置の電動機の給電回路には、短絡電流を遮断するヒューズ、自動遮断器又は配線用遮断器(以下この条及び次条において「ヒューズ等」という。)を設けなければならない。
4. 前項の給電回路に過負荷電流を遮断するヒューズ等を設ける場合は、当該ヒューズ等は、保護する電動機の全負荷電流の2倍未満の電流に対しては作動しないものでなければならない。ただし総トン数1,600トン未満の船舶の補助操だ装置の電動機であって通常は他の用途に使用されているものの給電回路には、当該電動機の全負荷電流の2倍未満の電流で作動するものを設けてもよい。
5. 船橋(外洋航行船にあっては、船橋及び主機を制御する場所)には、電動操だ装置及び電動油圧操だ装置の電動機の運転表示器を備えなければならない。
第285条の2 操だ装置の電気式の制御装置の給電回路には、短絡電流を遮断するヒューズ等を設けなければならない。
2. 前項の給電回路には、過負荷電流を遮断するヒューズ等を設けてはならない。
3. 電動操だ装置及び電動油圧操だ装置の電気式の制御装置に給電する電路は、当該操だ装置の電動機に給電する配電盤又は操だ機室内の分電盤から分岐するものでなければならない。
 
第3編第2章 操だ設備
 
(動力装置)
第140条 動力による操だ装置の動力装置は、次に掲げる要件に適合するものでなければならない。
(1)船橋から始動させることができるものであること。
(2)故障により停止した動力源からの動力の供給が復帰した場合に、自動的に再始動するものであること。
(3)故障した場合に、船橋に可視可聴の警報を発するものであること。
(制御系統)
第141条 動力による操だ装置の制御系統は、次に掲げる要件に適合するものでなければならない。
(1)船橋(操だ機室を有する船舶にあっては、船橋及び操だ機室)において操作することができるものであること。
(2)船橋から作動を開始することができるものであること。
(3)操だ機室を有する船舶にあっては、船橋から操作する制御系統を操だ装置から切り離すための装置を操だ機室に備えたものであること。
(4)電気式のものにあっては、給電が停止したときに、船橋に可視可聴の警報を発する警報装置を備えたものであること。
(5)外洋航行船(限定近海貨物船を除く。)に備える2の独立した制御系統の管又は電路は、相互にできる限り離れた位置に設置されたものであること。
(代替動力源)
第142条 だ柄との接合部のだ頭材の径が230ミリメートルを超えるかじを備える外洋航行船(限定近海貨物船を除く。)には、次に掲げる要件に適合する操だ装置の代替動力源を備えなければならない。
(1)非常電源又は操だ機室に備える専用の動力源であること。
(2)第136条第2項第2号に規定する操だ能力を維持するために必要な動力を動力装置及びこれに係る制御系統に10分間(総トン数10,000トン以上の船舶にあっては、30分間)以上供給することができるものであること。
(3)主動力源からの動力の供給が停止した場合に、自動的に、かつ45秒以内に動力の供給を開始することができるものであること。
(附属設備)
第143条 外洋航行船に備える動力による操だ装置が油圧により作動するものである場合は、当該船舶には、次に掲げる設備を備えなければならない。
(1)作動油を清浄に保つための装置
(2)船橋及び機関区域の適当な場所に可視可聴の警報を発することができる作動油タンクの低油面警報装置
(3)(略)
第145条 自動操だ装置は、自動操だから手動操だへ直ちに切り替えることができるものでなければならない。
 
(関連規則)
(1)設備規程第140条及び第141条(操だ設備)関係(船舶検査心得)
 
140.0.3(動力装置)
(1)第3号の「故障した場合」は、電動油圧操舵装置にあっては、油圧ポンプを駆動する電動機の無電圧状態とすることができる。
(2)第3号の可視警報は、2系統を共用したものではないこと。
141.0(制御系統)
(1)総トン数10,000トン以上の船舶にあっては、2の制御系統ともフォロー・アップ方式であること。ただし、総トン数500トン以上10,000トン未満の船舶にあっては、1の制御系統のみをフォロー・アップ方式とすることができる。
(2)2の制御系統が要求される操舵装置の制御系統用の油タンクは、2個備えられていること。
(3)第1号及び第3号の「操だ機室を有する船舶」については、136.2(a)を準用する。
(4)第4号の可視可聴警報は、2系統共用のものとすることができる。
 
(2)設備規程第285条関係(船舶検査心得)
 
(電動操舵装置及び電動油圧操舵装置)
285.3(a)図285−3〈1〉のように母線を経て接続される場合には、発電機用自動遮断器の調整点が操舵装置用自動遮断器の調整点よりも十分大きいこと。
 
図285.3〈1〉
 
(b)電動操舵装置及び電動油圧操舵装置は、図285.3〈2〉のように発電機用自動遮断器を経ないで直接発電機に接続される場合には、発電機用自動遮断器との協調を考慮する必要はない。
 
図285.3〈2〉
 
285−2.3(a)配電盤から分岐する場合にあっては、配電盤の母線から操舵装置の動力回路の分岐点に近接した位置において分岐されていること。
(b)「操だ装置の分電盤から分岐する」とは、操舵機室内の動力回路から分岐することをいう。
 
(3)設備規程第285条関連(NK規則D編)
 
15.2.5 動力装置の始動及び故障警報
 主及び補助操舵装置の動力装置は、次によらなければならない。
(1)動力源の喪失後、復帰した場合、自動的に再始動するように設備すること。
(2)船橋から作動を開始することができること。いずれの動力装置への動力の供給が停止した場合にも船橋に可視可聴警報が発せられるように設備すること。
15.2.6 代替動力源
 C編3章の規定による上部舵頭材の所要径が230mmを超える場合には、次の規定に従って代替動力源を設けなければならない。
(1)代替動力源は、次のいずれかとすること。
(a)非常電源
(b)操舵装置以外の目的に使用せず、かつ、操舵機区画内に設けられた独立の動力源
(2)代替動力源は、動力装置及び当該動力装置に接続する制御システム並びに舵角指示器に自動的、かつ、45秒以内に代替動力を供給できるものとすること。この場合、この代替動力源は、15.2.3(1)に規定する操舵能力を動力装置に与えることができるものであること。また、この代替動力源は、総トン数10,000トン以上の船舶では少なくとも30分間、その他の船舶では少なくとも10分間、操舵装置を連続作動させるのに十分な容量とすること。
(3)前(1)(b)に定める独立の動力源として用いる発電機又はポンプの駆動原動機の自動始動装置はH編3.4.1に定める非常発電機の駆動原動機の始動装置及び始動性能の規定によること。
15.2.7 電動又は電動油圧式操舵装置の電気設備
−1. 本章で二重に設置することが要求される動力回路に用いられるケーブルは、全長にわたって可能な限り離して敷設しなければならない。
−2. 動力装置の運転表示装置を船橋及び通常主機を制御する場所に設けなければならない。
−3. 1個以上の動力装置を有する電動又は電動油圧操舵装置は、主配電盤から2組以上の専用の回路によって直接、給電されなければならない。ただし、そのうち1回路は非常配電盤を経由して給電することができる。
−4. 主操舵装置及び補助操舵装置が電動又は電動油圧式の場合、補助操舵装置への給電は、主操舵装置の給電回路の一つから行なうことができる。給電回路は、当該回路に同時接続され、かつ、同時運転することが要求されるすべての電動機に給電できる適当な定格のものでなけばならない。
−5. 回路には短絡保護装置を、また、電動機には過負荷警報装置を備えなければならない。この場合、過負荷警報は可視可聴のものとし、通常主機を制御する場所の目立つ位置に表示されるものでなければならない。
−6. 始動電流及びその他の過電流に対する保護装置が設けられる場合には、この保護装置は電動機又は回路の全負荷電流の2倍以上の電流に対して保護するもので、かつ、始動電流により動作するものであってはならない。
−7. 3相交流式の場合には、いずれの1つの欠相に対して警報を発する装置を備えなければならない。この警報は可視可聴のものとし、通常主機を制御する場所の目立つ位置に表示されるものでなければならない。
−8. 総トン数1,600トン未満の船舶であって、15.2.3(2)により動力駆動とすることが要求される補助操舵装置が電力駆動でない場合又は主として他の用途に用いられる電動機により駆動される場合には、主配電盤から主操舵装置への給電回路は1組とすることができる。ただし、主として他の用途に用いられる電動機により補助操舵装置が駆動される場合には、補助操舵装置に対して適用する15.2.5及び15.3.1−1.(3)の規定に適合し、本会が保護装置の配置にについて適当であると認めた場合には、−5.から−7.の規定を適用する必要がない。
−9. 総トン数1,600トン未満の船舶であって、補助操舵装置が手動の場合は、主配電盤から主操舵装置への給電回路は1組とすることができる。
15.2.8 操舵装置の設置場所
−1. 操舵装置は人の出入りが容易で、かつ、可能な限り機関区域と分離し、閉囲された区画に設置しなければならない。
−2. 操舵機室は、操舵装置を有効に操作するための十分な大きさを有するものであること。
−3. 操舵機区画には、機械装置及び制御装置へ接近するための通路及び作業用の余地を設けなければならない。この場合、通路には手摺及び滑らない床を配置するなどの措置を講じ、油漏れが生じた場合においても、作業のための適当な環境を確保できるようにしなければならない。
15.2.9 通信装置
 船橋と操舵機区画の間には、通信装置を設けなければならない。
15.2.10 舵角指示器
 舵の角度の指示については、次によらなければならない。
(1)舵の角度は、船橋に指示されること。舵角指示器は、制御システムから独立のものとすること。
(2)舵の角度は、操舵機区画内で確認することができること。
15.3 制御装置
15.3.1 一般
−1. 操舵装置の制御については、次によらなければならない。
(1)主操舵装置は、船橋及び操舵機区画において制御できるものであること。
(2)主操舵装置が15.2.1−2.の規定に従って設備される場合には、操舵輪及び操舵レバーを除き、2組の独立した制御システムを備え、各システムは船橋から操作できるものとすること。ただし、制御システムが油圧テレモーターで構成されている場合には、第2の独立の制御システムを設ける必要はない。
(3)補助操舵装置は、操舵機区画において制御できるものであること。補助操舵装置が動力駆動である場合には、船橋からも操作できるようにし、主操舵装置の制御システムから独立したものとすること。
−2. 主及び補助操舵装置を船橋から操作できる制御システムは、次によらなければならない。
(1)電気的制御システムの場合、そのシステムは、操舵機区画内の操舵装置動力回路又は配電盤内の操舵装置動力回路給電点付近の配電盤母線から専用の回路によって直接給電されること。
(2)操舵機区画内において、船橋から操作できる制御システムをこの制御システムにより制御される操舵装置から切り離すことができるようにしておくこと。
(3)制御システムは、船橋から作動を開始することができるものとすること。
(4)制御システムヘの電力供給が喪失した場合には、船橋に可視可聴警報が発せられるように設備すること。
(5)制御システムの給電回路には、短絡保護装置のみを備えること。
−3. 本章で二重に設置することが要求される制御システムに用いられるケーブル及び管装置は、全長にわたって可能な限り切り離して敷設しなければならない。
−4. 複数のシステム(動力又は制御)を同時に運転することができる操舵装置にあっては、単一の損傷に起因するハイドロロックにより操舵機能喪失に陥る場合には、故障したシステムを表示する可視可聴警報を設けなければならない。この警報は船橋に表示すること。
15.3.2 自動操舵から手動操舵への切替え
 自動操舵装置を備える船舶の操舵装置は、自動操舵より手動操舵へ直ちに切り替えることができるものでなければならない。







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