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2.2.4 絶縁抵抗及び絶縁耐力(耐電圧)
 「絶縁抵抗」及び「絶縁耐力」については、設備規程第171条第10号及び第11号の規定による。
 
第171条
(10)「絶縁抵抗」とは、電気機械及び電気器具の充電部と大地の間又は充電部相互間の絶縁を、通常の使用状態の温度において直流500ボルト絶縁抵抗測定器で測定した抵抗をいう。
(11)「絶縁耐力」とは、電気機械及び電気器具の充電部との大地の間又は充電部相互間に、通常の使用状態の温度において、本編に規定する商用周波数の交流電圧を1分間加圧して異常の生じない絶縁の強度をいう。
 
(説明)
(1)絶縁抵抗について
 電路、電気機器などで絶縁物の劣化や損傷などをきたすと、洩れ電流が流れ火災事故や人畜に対して感電事故を引き起こす。よって常にこれらの絶縁状態を知り、その良否の判定を行ない災害、事故を未然に防がねばならない。絶縁抵抗を測定するには絶縁抵抗計が用いられるが、絶縁抵抗計には発電機式(手回し式。メガーと呼ばれる)と電池式(自動式。オートメガーと呼ばれる)とがあるが現在は電池式が用いられている。絶縁抵抗計には発生電圧により100V、250V、500V、1,000〜2,000Vがあるが測定すべき電路、電気機器の電圧に適したものを用いるべきである。船舶では現在直流500V絶縁抵抗計が主として用いられている。
 設備規程では発電機(194条)、配電盤(224条)、電動機(278条)、始動器(283条)、電熱器(292条)、電路(262条)に規定がある。
(2)絶縁耐力(耐電圧)について
 耐電圧とは供試物が所定の条件のもとで破壊放電を生じてはならない所定の電圧をいい絶縁耐力試験を耐電圧試験とも呼んでいる。
(a)耐電圧試験は何故行なうか
 電路に異常電圧が発生すると電路、電気機器の絶縁を破壊し設備に損害を与えるが異常電圧は、次のような場合に発生する。
(i)雷による異常電圧
 電路に直撃の落雷があったり、雷雲の接近による誘導雷によって電路に異常電圧が発する。
(ii)回路開閉による異常電圧
 電路には通常電磁誘導作用を生じる要素(インダクタンス)があるので電流が急に断たれるとき(例、スイッチ、遮断器、ヒューズ等の断)非常に高い電圧が瞬間的に発生する。とくに直流の大電流回路を開くときは非常に高い電圧を発生するので危険である。船舶の場合、異常電圧の発生は(ii)が主であるが電線、電気機器はこの異常電圧に耐えねばならないので耐電圧試験が行われる。
 なお変圧器には誘導絶縁耐力試験(誘導試験ともいう)がある。各相巻線間・タップ間・コイル間及び端子間の絶縁を検証するために行なう。
(b)耐電圧試験の範囲
 耐電圧試験は電気機器メーカーでは行なうが補機メーカー(例えば発電機ならエンジンと直結、電動機ならポンプと直結したとき)及び船内試験では行なわないのが普通である。これは補機メーカー及び船内では耐電圧試験設備がないことと、何回も耐電圧試験を行なうと機器の絶縁物が疲労するからこれを避けるためである。
(c)耐電圧試験の値
 耐電圧試験の値は特殊なものを除き普通は次のように行なう。
 
回転機以外の機器
機器 試験電源用変圧器 耐電圧試験
機器の定格電圧 試験値
普通の機器 2E+1000V (注: Eは定格電圧を示す) 440V 2000V1分間
220V 1500V 〃
200V 〃 〃
l00V 〃 〃
60V以下の機器 500V 60V以下 500V 〃
注: (1)例えば定格電圧440V機器の場合2E+1000Vとすれば1880Vとなるが一般には表に示すように切上げた数で行なっている。
(2)回転機の場合は上表と若干異なるので設備規程第11号表「絶縁耐力試験電圧表第195条関係」を参照されたい。
 
(d)耐電圧試験用電源
 耐電圧試験用電源を次のように定めている例もある。
 
機器 試験電源用変圧器
一般の機器 5kVA以上の容量を持つもの
50W以下の小形機械 0.5kVA以上の容量を持つもの
 
 電気メーカーにおいては耐電圧試験を行なう前に絶縁抵抗試験を行って予め絶縁の良否を確かめるのが普通である。24V機器の耐電圧試験は500Vを加えるが、一方、絶縁抵抗計は500Vを用いるので既に500Vを加えていることになるが、絶縁抵抗計の500Vでは耐電圧試験としての容量が不足であるから絶縁抵抗試験後更に耐電圧試験を行なっている。
(e)設備規程では発電機(195条)、変圧器(207条、208条)、配電盤(225条)、電動機(278条)、始動器(283条)、電熱器(293条)に規定がある。
 
2.2.5 安全電圧
 感電しても人体に障害を与えないといわれる安全電圧は、人体抵抗と人体の許容安全電流によって決まるもので、94年IEC 92−101で次のように定められている。
(a)直流・・・導体間又は導体とアース間が50V以下
(b)交流・・・導体間又は導体とアース間が50V(実効値)以下
 
2.2.6 基準周囲温度
 電気機器の冷却媒体の温度を周囲温度といい、その機器の温度上昇を定めるときの基準となる周囲温度を、基準周囲温度という。
 
2.2.7 重要設備
 船舶の安全性又は居住性に直接関係のある電気機械及び電気器具は、船舶検査心得174.3を参照(2.4.1(3)項)。
 
2.2.8 小形電気器具
 小形電気器具とは、照明用主回路からコードで分岐する扇風機、電気アイロン、電熱器、電気洗濯機などをいう。
 
2.2.9 不燃性材料及び可燃性材料
(1)不燃性材料とは、1974年の海上における人命の安全のための国際条約附属書第2章の2第3規則第34項に規定する火災試験方法コードに従って火災試験を行なう場合において摂氏750度に熱せられたときに燃えず、かつ、自己発火に十分な量の引火性蒸気を発生しない材料をいう。
 
(関連規則)
 船舶防火構造規則第2条関係(船舶検査心得)
 
(定義)
2.0.1(b)次に掲げる材料は、不燃性材料として取り扱うこととしてよい。
(イ)板ガラス、ガラスロック、粘土、セラミックス及びガラス繊維
(ロ)金属(マグネシウム及びマグネシウム合金を除く。)
(ハ)砂、砂利、膨張蛭石、スラグ(膨張又は気泡スラグ),珪藻土、パーライト又は軽石を骨材としたボルトランドセメント、石膏及びマグネサイトコンクリート
(ニ)潤滑剤の含有率が2.5%以下であるニードルパンチされたガラス繊維
 
(2)可燃性材料とは、不燃性材料以外の材料をいう。
 
2.2.10 A級仕切り、B級仕切り及びC級仕切り
(1)A級仕切りとは、次に掲げる要件に適合する隔壁又は甲板で形成する仕切りをいう。
(イ)鋼又は鋼と同等の材料を用いたものであること。
(ロ)適当に補強されたものであること。
(ハ)不燃性材料で防熱が施されたものであること。
(ニ)60分の標準火災試験が終わるまで煙及び炎の通過を阻止することができるものであること。
(2)B級仕切りとは、次に掲げる要件に適合する隔壁、甲板、天井張り又は内張りで形成する仕切りをいう。
(イ)不燃性材料を用いたものであること。
(ロ)不燃性材料で防熱が施されたものであること。
(ハ)30分の標準火災試験が終わるまで炎の通過を阻止することができるものであること。
(3)C級仕切りとは、不燃性材料を用いた仕切りをいう。
 
(関連規則)
 SOLAS条約
 
第II−2章 構造(防火並びに火災探知及び消火)
第3規則 定義
3 「「A」級仕切り」とは、次の要件を満たす隔壁又は甲板で形成する仕切りをいう。
(1)鋼その他これと同等の材料で造られていること。
(2)適当に補強されていること。
(3)1時間の標準火災試験が終わるまで煙及び炎の通過を阻止し得るように造られていること。
(4)次の各級に対応して掲げる時間内において、火にさらされていない側の平均温度が最初の温度よりも摂氏139度を超えて上昇しないように、及び継手を含めいかなる点における温度も最初の温度よりも摂氏180度を超えて上昇しないように、承認された不燃性材料で防熱を施されていること。
「A−60」級  60分
「A−30」級  30分
「A−15」級  15分
「A−0」級  0分
(5)(略)
4 「「B」級仕切り」とは、次の要件を満たす隔壁、甲板、天井張り又は内張りで形成する仕切りをいう。
(1)最初の30分の標準火災試験が終わるまで炎の通過を阻止し得るように造られていること。
(2)次の各級に対応して掲げる時間内において、火にさらされない側の平均温度が最初の温度よりも摂氏139度を超えて上昇しないような、及び継手を含めいかなる点における温度も最初の温度よりも摂氏225度を超えて上昇しないような防熱値を有すること。
「B−15」級  15分
「B−0」級  0分
(3)承認された不燃性材料で造られており、かつ、「B」級仕切りを造り及び組み立てる際に使用される材料も不燃性のものであること。ただし、可燃性化粧張りは、この章に定める他の要件を満たす場合には、認めることができる。
(4)(略)
5 「「C」級仕切り」とは、承認された不燃性材料で造られた仕切りをいう。この仕切りは、煙及び炎の通過についての要件並びに温度上昇制限に適合することを要しない。
(以下省略)







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