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3・5・2 配電回路の短絡電流計算法の一方法(パーセントインピーダンス法)
(1)予備知識
 電気回路に電源を急に加えたとき、又は、取り去ったときには過渡現象が起こるがこれは回路定数の値に従って時間内に電圧、電流が変化し、これらは逐には定常状態になる。ここでは三相交流の配電回路に短絡電流が流れた場合の短絡電流の計算法に先立ち、三相交流発電機の短絡現象を調べてみよう。
(a)三相交流発電機の無負荷時の三相突発短絡電流
 ここではa相の過渡短絡電流iaについての式を次に示す。ただし三相交流発電機には制動巻線を有する場合とする。
 
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θ:短絡瞬時の界磁極の中心軸とa相磁化軸との位相角〔rad〕・・・短絡投入角
Xd:同期リアクタンス〔Ω〕(定常状態にあったときのリアクタンス)
X'd:過渡リアクタンス〔Ω〕(短絡直後のリアクタンスで直軸分に対するもの)
X''d:初期過渡リアクタンス〔Ω〕(最初の突発電流の交流分を制限するもので、直軸分に対するもの)
T''d:短絡初期過渡時定数〔S〕
T'd:短絡過渡時定数〔S〕
Td:電機子時定数〔S〕
ε:自然対数の底=2.718
 そしてa相の電流iaのほか、b相、c相の電流ib、icはそれぞれθの代わりに(θ−2π/3)、(θ―4π/3)を代入すればよい。
(b)時定数(じていすう)と三相交流発電機の短絡電流波形
(i)時定数とは過渡電流が時間の経過とともに変化する有様を表す定数で、回路のL、R、Cなどに関係する。
 
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(ii)交流発電機の短絡電流波形
 上記(ia)の式を分析して考えれば次のようになる。
 
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 第2及び第3項式は、それぞれ時定数T'd及びT''dをもった指数関数曲線にしたがって、数サイクル以内に減衰する交流分である。その中で、第3項式は交流分の電機子反作用が最初に働き、制動巻線による初期過渡時定数T''dに従って急激に減衰し、次に、第2項式では電機子反作用が影響する界磁回路の時定数T'dに従って徐々に減衰する交流分であるが、最後には、第1項式のXdで電流が制限される持続電流となる。
 第4項式は短絡瞬時に磁束鎖交数を一定に保とうとするための電機子に流れる直流分であって、時定数Tdに従って減衰しその初値は、次に述べるθの値によって異なる。
 第1:短絡が、θ=0すなわちa相の磁束鎖交数が最大で、誘起電圧e=0の時に起こった場合、直流分の初値はt=0のとき、
 
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 第1及び第2以外の場合の初振幅は、上記の二つの場合の中間値となる。第1の場合について図示すれば、次図のようになる。
備考:上記の突発短絡電流の式は43ページで示したとおり、制動巻線がある場合であるが、これが無い場合にはXd''=Xd'と考えられるから、第3項式は消去してよい。
 
第4項式における過渡短絡電流波形
 
 下図は総合短絡電流の波形を示す。
備考:直流分を含んだ短絡電流を非対称短絡電流といい、これを含まない電流を対称短絡電流という。
 
短絡電流波形(三相のうち一相として考える)







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