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2・6 磁化曲線、ヒステリシスループ、ヒステリシス損
2・6・1 磁化曲線
 
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図2・17
 
 図2・17(a)のように鉄心のまわりにコイルを巻き、これに電流を流せば鉄心は磁化され、電磁石となることは、2・3・4ですでに述べた。ところで、この電流を増してゆけば電磁石すなわち磁束密度B〔Wb/m2〕はどこまでも増してゆくかといえばそのようにはゆかないで図2・17(b)のような曲線を描いて、ある限度をこせば磁束密度はほとんど増加しない。そこで図2・17(b)のような曲線を磁化曲線といい、磁束密度の増加しないような現象の現われを磁気飽和という。また図2・17(b)に示した曲線即ちB−H曲線を飽和曲線ともいう。
2・6・2 ヒステリシスループ・ヒステリシス損
 一度も磁化されていない鉄心について磁化を増してゆく場合と減らしてゆく場合とでは、磁束密度が同一でなく同一の経路をたどらないことが実験上確められる。これを図2・18について説明すれば、先づ0点から次第にHを増しa点に(H最大)、a点からHを減じてb点に、さらに一Hにしてc点に、さらに減じてd点に(−H最大)達する。これよりHを増していってHが零のときe点に、さらにHを増してf点に、そして最後にa点に戻る。このようにしてみると、図2・18にみるようにBとHとの曲線は同一経路をたどらないで一つのループを形成する。これをヒステリシスループという。
 
図2・18
 
 そして鉄心を交流電源によったコイルで磁化すれば、1循環毎にループ間の面積に比例した電力量が、鉄の中で熱となって失われる。この電力損失をヒステリシス損という。
 このために交流の電気機器の鉄心内には当然のようにヒステリシス損を生じている。
 次にHが0となってもObだけ磁束密度Brが残っているのでこれに相当する磁気を残留磁気という。
 また、磁束密度を零にするためには0Cだけ−Hを加えねばならないから、このOCすなわちHcを保磁力という。
 
2・7 自己誘導・自己インダクタンス
2・7・1 自己誘導
 
図2・19
 
 1830年アメリカのヘンリーは自己誘導の原理を見出した。それは図2・19のようにコイルに電流の変化(例えば交流)を与えれば磁束Φも変化し、その結果電磁誘導によってコイルに起電力が生ずる。この現象を自己誘導という。
2・7・2 自己インダクタンス
 今、N回巻のコイルに流れる電流がΔt〔s〕間にΔI〔A〕だけ変化したとき、このコイルと交わる磁束がΔΦだけ変化するとすれば2・4・2項で述べた電磁誘導によっで、コイルに誘導される起電力eは次の式で表される。
 
 
 ところが、磁束は電流に比例するから、磁束の変化は電流の変化に比例することになる。それ故に上式は次のように書ける。
 
 
 ここでLはeとΔI/Δtとの間の比例定数で、これを自己インダクタンスと呼んでいる。
 自己インダクタンスの単位にはヘンリー(単位記号H)を使う。
 この自己インダクタンスはコイルの形、巻数及び磁路の透磁率等に関係する。
 自己インダクタンスLは(2・13)式から
 
 
 このことは1〔H〕の大きさは電流が1秒〔s〕間に1〔A〕の割合で変化するとき、1〔v〕の起電力を生じる回路の自己インダクタンスに相当する。
〔例題〕コイルに20〔A〕の電流を流し、0.12秒間に0にすればコイルには60〔V〕の起電力を生ずる。このコイルのインダクタンスを求めよ。
〔解〕(2・14)によって
 
 
 この意味は「回路の自己インダクタンスLは、その回路に1〔A〕の電流を流したときの磁束鎖交数に等しい」ということである。
〔例題〕巻数Nが100のコイルに、2〔A〕の電流を流したら、コイルに0.001〔Wb〕の磁束Φが生じた。このコイルのインダクタンスLは何〔H〕か。
〔解〕L=NΦ/I〔H〕の式から N=100、Φ=0.001、I=2であるから
L=100×0.001÷2=0.05〔H〕
 
2・8 相互誘導・相互インダクタンス
2・8・1 相互誘導
 図2・20において一次コイル(P)に電流I1を流せば磁束Φ1ができ、Φ1の一部は近くの二次コイル(S)に鎖交する。この場合交流電流のようなI1が変化すればΦ1が変化し、Φ1の一部Φ2もまた変化し、電磁誘導によって二次コイル(S)に起電力が生じる。この現象を相互誘導という。
 
図2・20
 
2・8・2 相互インダクタンス
 上記二次コイル(S)における起電力esは次のようになる。
 
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 ここで、Mは相互インダクタンスと呼ばれ、二つのコイルの形状、相互位置及びその周囲の物質の透磁率によって定まる値である。相互インダクタンスも単位はLと同じくヘンリーである。
 
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と表される。







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