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1・9 オームの法則と電気回路
1・9・1 オームの法則
 1827年ドイツのオームが電圧、電流及び抵抗の三つの関係について実験的に次の法則を発見した。これをオームの法則という。電気工学では忘れることのできない重要な法則である。
 
図1・15
 
 図1・15について説明すれば、
 導体A、B、2点間に流れる電流の大きさ〔I〕は、その間の電圧〔V〕に比例し、かつ、導体抵抗〔R〕に反比例するということである。式で表わせば次のようになる。
(1)電流を求める式
電流=電圧/抵抗、I=V/R〔A〕・・・(1・5)
I:電流〔A〕
V:電圧〔V〕
R:抵抗〔Ω〕
 上式を変形して(2)、(3)が求められる。
(2)電圧を求める式
電圧=電流×抵抗、V=1・R〔V〕・・・(1・6)
(3)抵抗を求める式
抵抗=電圧/電流、R=V/I〔Ω〕・・・(1・7)
〔例題〕
(1)導体2点間の電圧が100〔V〕、抵抗が10〔Ω〕のときの電流は何〔A〕か。
〔解〕100/10=10〔A〕
(2)導体2点間に流れる電流が10〔A〕、抵抗が5〔Ω〕のときの電圧は何〔V〕か。
〔解〕10×5=50〔V〕
(3)導体2点間の電圧が100〔V〕、流れる電流が5〔A〕のときの抵抗は〔Ω〕か。
〔解〕100/5=20〔Ω〕
 
1・9・2 電気回路
 電動機、電灯等(電気負荷又は単に負荷という。)を働かせるためには、これらの負荷に電流を流さねばならない。電流を流すためには、電圧を加えねばならない、電圧を加えるためには、電圧発生のために電源を必要とする。これらの関係を図示すれば図1・16のようになる。
 
図1・16
 
 この図においてスイッチを閉じれば、電流が流れ電灯は点灯しモータは回転する。
 このように、電流を流すためには環状の電流の通路を必要とする。これを電気回路という。スイッチを閉じた状態を電気回路を閉じる(又は閉回路、閉路という。)といい、スイッチを開いた状態を電気回路を開く(又は開路ともいう。)という。
 
1・10 電気の発生
 電気はどのようにして発生するかを分類して考えよう。
(1)ある物体を摩擦によって電荷が発生することは1・3で述べたとおりである。
(2)電磁誘導作用すなわち磁力線(1・2参照のこと。)と導体との相互作用によって電気が発生する、後述するが発電機の原理である。
(3)化学作用によって電気が発生する。蓄電池、乾電池等はこの作用を応用したものである。
(4)熱電現象によって電気が発生する。すなわち二種類の金属接合点に他端と違った温度を与えれば、その他端に起電力が発生して電流が流れる。これをゼーベック効果といい、1821年ドイツのゼーベックが発見し、その後イタリアのノビリがこれを応用して熱電対を作り、温度測定に使い、現在でもパイロメータといい使用されている。
(5)半導体に光のエネルギーをあてると、両端間に電位差すなわち光起電力が発生する。これを応用したものに光電池、太陽電池等がある。
(6)ロッシエル塩、チタン酸バリウムなど結晶面に力を加えると電極間に電荷が生じる。
 また、電界を掛けると結晶にひずみが生ずる。これを圧電気現象という。
 これを応用したものに音響測深機等がある。
 以上のような作用及び現象を巧みにいろいろの方面に役立たせている。したがって、電気工学の社会に対する貢献度は大なるものがあるとみなければならない。
 
1・11 静電気と動電気
 一方、電荷の移動によって電流が流れる電気現象もあり、我々が日常よく利用している電気、例えば、発電機、電動機、照明、通信機等は総べてその応用である。そこでこれらの電気を研究する学問を総称して電気工学と称している。1・3で述べたように摩擦によって生じた電荷が静止状態にあるような電気を静電気といい、静電気による現象は非常に高い電圧を用いる送電線路、絶縁物の破壊又は無線通信、電子技術などに関係がある。これらの学問を静電気学といい、雷の現象、コロナ現象の研究はこれに属する。応用面としては電気集じん、静電印刷法(ゼロックスなど。)、静電噴霧塗装法等がある。







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