2・3 変圧器
変圧器の基本的原理を次に示す。
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N S A 電線 交流電源 発電機の項で述べたようにコイルを固定とし磁石を出したり入れたりすると電流計の指針が動き電流が流れたことが判る。これはコイルが磁束を切るからである。
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N S A 電線 交流電源 この図では磁石は交流電源で作られている。前に述べたように交流電源は電流の流れる方向と大きさが時々刻々変るので磁石から発生する磁束も変化する。したがって磁石を動かさなくても磁石を動かしたと同じ状態になり電流計の指針が動き電流が流れたことが判る。 変圧器はこの原理を応用したものである。
下記のように変圧器は電磁誘導作用を応用して、交流電圧を任意の大きさに変える機器である。その主要部は鉄心に2組の巻線を巻いたもので電源側(一次側)を一次巻線(Pコイル)、負荷側(二次側)を二次巻線(Sコイル)という。
図2.28 変圧器の基本構造
Pコイルに周波数がf〔Hz〕で実効値がV1〔V〕の交流電圧を加えると鉄心に交番磁束φ〔Wb〕が生じφはP・S両コイルを貫く。したがって、自己誘導によってPコイルにE1〔V〕相互誘導によってSコイルにE2〔V〕の交番起電力を誘導する。
今、Pコイルの巻数をN1、Sコイルの巻線をN2とすると一次側、二次側の誘導起電力は、それぞれの巻数に比例するのでφm〔Wb〕を磁束の最大値とすると
E1=4.44fN1φm E2=4.44fN2φm
∴E1/E2=4.44fN1φm/4.44fN2φm=N1/N2=α
E1は加えた電圧V1と方向が反対で大きさがほとんど等しいので次式の関係がなりたつ。
V1/V2=N1/N2=α
αを変圧比又は巻線比という。
今二次側に負荷を接続しないで一次側に電圧V1を加えるとPコイルに電流I0が流れる。これを変圧器の励磁電流又は無負荷電流という。このI0によって鉄心内に交番磁束φが生じ、このφがSコイルに交鎖してSコイルに起電力E2を誘導する。次に二次側に負荷Zを接続するとE2によって二次電流I2が流れ起磁力I2N2による磁束φが生じ励磁電流による磁束φを減らそうとする。しかし磁束φが減ると一次の誘導起電力E1が減少し供給電圧V1との平衡が破れるのでφは減少
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図2.29 負荷電流と磁束の関係を示す概念図
することができない。それでφ2を打ち消すためにPコイルに一次負荷電流I'1が流れる。このI'1によってI'1N1の起磁力が生じ磁束φが生じる。
このφ1はφ2と反対方向で磁束φ2を打ち消すので磁束φのみが鉄心を通ることになる。故に一次と一次の起磁気力は等しく次の式が成り立つ。
I'1N1=I2N2 ∴I'1/I2=N2/N1=1/α
一次側に流れる一次電流I1は一次負荷電流I'1と励磁電流I0とのベクトル和であるからI1=I1+I0となる。ここで励磁電流I0は小さいので無視すると
Í1≒Í1となり
I1/I2=N2/1=1/α この1/αを交流比という。
変圧器の極性とは、その端子に現われる誘起電圧の相対的、時間的の方向を表す。変圧器の電圧は供給電圧の周波数に等しい変化をしているものであるが、ある瞬間を考えれば電圧の方向は一定であるから、ただ1個の巻線を考えると極性の必要はないが同時に2個以上を考える場合には極性は極めて重要である。一次側をU1V1、二次側をU2V2としたときU1V1間に適当な電圧を加えU1U2を接続してV1V2間の電圧が一次電圧と二次電圧の和が表れる場合を加極性、差が現われる場合を減極性という。船舶のみならず一般に減極性が用いられる。
変圧器に定格電流を流すときの一次及び二次巻線中のインピーダンスによる電圧降下(変圧器内部の電圧降下)をインピーダンス電圧という。実際に測定するには変圧器の二次側を短絡して、一次側に定格電流を流したとき、一次端子間における電圧をインピーダンス電圧といい、定格一次電圧の百分率(%)で表わし百分率(%)インピーダンスと呼ばれる。
変圧器のインピーダンスの値は変圧器の経済的な設計、電圧変動率及び短絡電流を考慮して決められ百分率インピーダンスは変圧器の電圧変動や二次短絡電流を計算する場合に使用される。
変圧器の電圧変動や二次短絡電流を計算する場合、一般に次式で示される百分率インピーダンス又はパーセントインピーダンスと呼ばれる数値が使用される。
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通常、百分率インピーダンス(Zp)は百分率抵抗値と百分率リアクタンス値とに分けて示されるが、これらをそれぞれrP%、XP%とすると、
Zp√rP+XPの関係がある。
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