1・1・20 機器の外被の保護形式
電気機器は、その据付場所の状況に応じ、水の侵入に対し適当な外被構造のものであること。回転機の場合は、更に周囲空気の影響に対する耐久性及び使用条件等を考慮し適当な冷却方式のものを選ぶこと。(以下、JISF8007−1998による。)
(1)保護等級と保護形式
保護等級とは、器具の外被からの危険な箇所への接近、外来固形物の侵入及び/又は水(液体)の侵入に対する保護の度合いであって、標準化された試験方法によって検証される。
保護形式とは、保護形式を表す記号IP並びに危険な箇所への接近・外来固形物に対する保護等級及び液体に対する保護等級を組み合わせたものである。
また、保護等級等を表わすシステムとして、IPコード(IP code:IEC529、Degrees of protection provided by enclosures、1989年発行)があり、器具の外被からの危険な箇所への接近、外来固形物の侵入、水(液体)の侵入に対する保護の等級及びそれらの付加的事項などをコード化して表すシステムである。
(2)IPコードの要素とその意味
IPコード要素の概要は、次のチャートのとおりとする。
要素 |
数字又は文字 |
器具に対する保護性能 |
人に対する保護性能 |
コード文字 |
IP |
− |
− |
第一特性文字 |
|
外来固形物に対する保護 |
危険な箇所への接近に対する保護 |
0 |
(無保護) |
(無保護) |
1 |
直径≧50mm |
手の甲 |
2 |
直径≧12.5mm |
指 |
3 |
直径≧2.5mm |
工具 |
4 |
直径≧1.0mm |
針金 |
5 |
防じん形 |
針金 |
6 |
耐じん形 |
針金 |
第二特性数字 |
|
水(液体)の侵入に対する保護 |
− |
0 |
(無保護) |
1 |
垂直落下 |
2 |
落下(15°偏向) |
3 |
散水 |
4 |
飛まつ |
5 |
噴流 |
6 |
暴噴流 |
7 |
一時的水没 |
8 |
継続的水没 |
付加特性文字 (オプション) |
|
− |
危険な箇所への接近 |
A |
手の甲 |
B |
指 |
C |
工具 |
D |
針金 |
補助文字(オプション) |
|
補足表示 |
− |
H |
高圧器具 |
M |
水の試験中作動 |
S |
水の試験中停止 |
W |
気象条件 |
|
(a)第一特性数字は、次のことを表している。
−その外被は、人体の一部、人が所持する工具などの侵入を防ぐか又は制限して、人の危険な箇所への接近に対して保護していること。
と同時に
−その外被は、外被内の器具を外来固形物の侵入から保護している。
(b)第二特性数字は、水(液体)の侵入による器具への有害な影響に対する外被の保護等級を示すものである。
(c)保護等級に対する簡単な説明を次表に示す。
表1.1 危険な箇所への接近に対する保護等級
第一特性数字 |
意味 |
保護性能 |
0 |
無保護 |
無保護 |
1 |
手の甲が危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径50mmの接近度プロープで試験したとき、危険な箇所との間に適正空間距離が確保されていること。 |
2 |
指での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径12mm、長さ80mm関節付試験指の先端と危険な箇所との間に適正空間距離が確保されていること。 |
3 |
工具での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径2.5mmの接近度プロープが侵入しないこと。 |
4 |
針金での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径1.0mmの接近度プロープが侵入しないこと。 |
5 |
針金での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径1.0mmの接近度プロープが侵入しないこと。 |
6 |
針金での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径1.0mmの接近度プロープが侵入しないこと。 |
|
備考
|
第一特性数字が3、4、5及び6の場合、適正空間距離が確保されていれば、危険な箇所への接近に対して保護されているものとして取り扱う。
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表1.2 外来固形物に対する保護等級
第一特性数字 |
意味 |
保護性能 |
0 |
無保護 |
無保護 |
1 |
直径50mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径50mmの球状の固形物プロープの全体が侵入(1)しないこと。 |
2 |
直径12.5mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径12.5mmの球状の固形物プロープの全体が侵入(1)しないこと。 |
3 |
直径2.5mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径2.5mmの固形物プロープが全く侵入(1)しないこと。 |
4 |
直径1.0mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径1.0mmの固形物プロープが全く侵入(1)しないこと。 |
5 |
防じん形 |
じんあいの侵入を完全に防止することはできないが、器具の所定の動作及び安全性を阻害する量のじんあいの侵入がないこと。 |
6 |
耐じん形 |
じんあいの侵入がないこと。 |
|
注(1)
|
外被の開口部を、固形物プロープの全直径部分が通過してはならない。
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表1.3 第二特性数字で示される水(液体)に対する保護等級
第二特性数字 |
意味 |
保護性能 |
JISC0920−1993による種類 |
0 |
無保護 |
無保護 |
− |
1 |
垂直に滴下する水に対して保護されている。 |
鉛直に滴下する水が有害な影響を及ぼさないこと。 |
防滴I形 |
2 |
15°以内で傾斜しても垂直に滴下する水に対して保護されている。 |
外被が垂直に対して両側に15°以内で傾斜したとき鉛直に滴下する水が有害な影響を及ぼさないこと。 |
防滴II形 |
3 |
散水に対して保護されている。 |
垂直線から両側に60°までの角度で散水した水が有害な影響を及ぼさないこと。 |
防雨形 |
4 |
水の飛まつに対して保護されている。 |
器具に対するあらゆる方向からの飛まつによっても有害な影響を及ぼさないこと。 |
防まつ形 |
5 |
噴流に対して保護されている。 |
器具に対するあらゆる方向からのノズルによる噴流水によっても有害な影響を及ぼさないこと。 |
防噴流形 |
6 |
暴噴流に対して保護されている。 |
あらゆる方向からの強力なジェット噴流の水が有害な影響を及ぼさないこと。 |
耐水形 |
7 |
水に沈めても影響がないように保護されている。 |
規定の圧力及び時間で外被を一時的に水中に沈めたとき有害な影響を生じる量の水の侵入がないこと。 |
防浸形 |
8 |
潜水状態での使用に対して保護されている。 |
関係者間で取り決めた数字7より厳しい条件下で外被を継続的に水中に沈めたとき有害な影響を生じる量の水の侵入がないこと。 |
水中形 |
− |
相対湿度90%以上の湿気の中で使用できるもの。 (JISC 0920−1993)による。) |
防湿形 |
|
(d)IPコードによる表示例
(1)オプションの文字を使用しない場合:
この記号(IPコード)が表示された外被は、
“3”−直径が2.5mm以上の工具を持った人の、危険な箇所への接近に対し保護されている。
−外被内の器具が2.5mm以上の大きさの外来固形物の侵入に対し保護されている。
“4”−外被内の器具があらゆる方向からの飛まつ(沫)に対し有害な影響がないよう保護されている。
(2)オプションの文宇を使用する場合:
この記号(IPコード)が表示された外被は、
”2”−人の指による危険な箇所への接近に対し保護されている。
−外被内の器具が12.5mm以上の大きさの外来固形物の侵入に対し保護されている。
“3”−外被内の器具が散水に対し有害な影響がないよう保護されている。
“C”−直径が2.5mm以上、長さが100mm以内の工具をもった人の危険な箇所への接近に対し保護されている。
〔工具は、その工具全体(全長)が外被内に入ることがある。〕。
“S”−可動部分を停止させた状態において、水の侵入による有害な影響について試験されている。
(e)保護等級に対する試験の詳細については、「JISF 8007−1998の項目12〜16」を参照のこと。
爆発性ガスが発生したり、又は侵入して蓄積する恐れのある船内の危険場所にて使用される電気機器の防爆構造には次の種類のものがあり、規程又は規則によりその適用が認められている。
(1)耐圧防爆構造
全閉構造で容器(電気機器の外被構造)内部において、指定された爆発性ガスの爆発が起こっても、その圧力に耐え、かつ、爆発による火炎が容器の外部の爆発性ガスに引火する恐れのない構造のもの。
(2)内圧防爆構造
容器の内部に空気、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスを圧入又は封入することにより容器の内部に爆発性ガスが侵入するのを防止した構造のもの。
(3)安全増防爆構造
常時使用中に火花やアークを生じたり、又は高温を生じて点火源となる恐れのないように、これらの発生防止のために、構造上又は温度上昇について、非防爆の普通形式のものよりも安全性を高めた形式のもの。
(4)本質安全防爆構造
常時使用中及び事故時(短絡、地絡、切断等。)に発生する火花、アーク又は熱が爆発性ガスに点火する恐れがないことが点火試験などにより確認された構造のもの。
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