日本財団 図書館


4 電気機器類
 
4・1 船用電気機器として具備すべき条件
4・1・1 定格と温度
(1)定格
 回転機の場合には、定格とは機器に保証された使用限度をいい、出力に対する使用限度を定めるとともに、電圧、回転速度、周波数などを指定する。これらをそれぞれ定格出力、定格電圧、定格周波数等と称し、それらの値を表示した耐久性のある定格銘板を取り付けなければならない。(JISC4034−1:99回転電気機械−第1部 定格及び特性参照)
(2)温度(温度上昇限度、基準冷媒温度)
 それぞれの電気機器が、使用中規定された温度上昇限度を超える場合は、その寿命に影響することが大きいので、これに留意しなければならない。
 回転電気機械では、電気絶縁の概念は、JISC4003−98に基づく耐熱クラスを回転機の絶縁システムに適用する。絶縁システムの耐熱クラスは、温度差ではなく、文字によって表す。例えば、従来の「A種絶縁の巻線 65℃」は「耐熱クラスAの絶縁の巻線 65K」と表す。
 温度及び温度上昇限度は、決められた設置場所の条件(最高及び最低周囲温度、冷却水温度等)と連続定格(基準条件)における運転に対して定められている。他の条件の現場や他の定格において運転するときの限度の補正法も決められている。(JISC4034−1:99回転電気機械−第1部 定格及び特性参照)
 
備考1 冷媒温度とは基準周囲温度と同意義であって、温度上昇を定めるときの基準となる冷媒の温度をいう。
2 冷媒温度の限度は船舶設備規程では空気に対して40℃と定めて、温度上昇限度を規定してあるが、これより超える場所で使用するものには、超える温度を規定された温度上昇限度から減ずることになっている。
(3)NK規則における周囲温度は次のように定めてある。
 
  設置場所 温度(℃)
空気 閉囲区域内 0〜45
45℃を超える区域又は0℃を下回る区域内 計画条件による
暴露甲板上 −25〜45
海水 32
 
4・1・2 寸法・重量・手入れに対する考慮
 積込み、積下しが容易なように小形軽量であるとともに、機器内部の手入れ及び部品交換ができるだけ表面から容易に行えるようにする。
4・1・3 振動・衝撃に対する考慮
 船体の振動と波浪及び接岸による衝撃に対して、充分耐えなければならない。
4・1・4 動揺、傾斜に対する考慮
 船舶設備規程及びNK規則によれば、次のように定めてあるので、機器はこれに支障なく動作する構造のものでなければならない。
 
傾斜角度(船舶設備規程)
(拡大画面:16KB)
 
傾斜角度(NK規則)
電気設備の種類 左右方向(1) 前後方向(1)
静的傾斜(横傾斜) 動的傾斜(ローリング) 静的傾斜(縦傾斜) 動的傾斜(ピッチング)
次の欄に掲げるものを除く電気設備 15° 22.5° 75°
非常電気設備、各種開閉装置(遮断器等)並びに電気及び電子器具 22.5°(2) 22.5°(2) 10° 10°
備考 (1) 左右方向と前後方向の傾斜は同時に起ることを考慮すること。
  (2) 液化ガスばら積船及び危険化学品ばら積船にあっては、船舶が浸水した状態で左右方向30度の傾斜まで使用可能なように非常用電力を供給できるものであること。
 
4・1・5 騒音又は雑音に対する考慮
 機器自体が騒音(1)又は雑音(2)源とならないよう、また、周囲の騒音又は雑音に妨げられ、かつ、性能に影響がないよう考慮すること。
注: (1) 騒音は望ましくない音、例えば、音声、音楽等の伝達を妨害したり、耳に苦痛、傷害を与えたりする音をいう。騒音のレベルの単位は、デシベル(dB)を用いる。
  (2) 雑音とは周期性がなく、部分音に分解できない音で電気通信回路等において望ましくない電気的騒乱をいう。例えば、無線電話用送信機の場合では、雑音の程度は信号対雑音比すなわちSN比(signal to noise ratio)で表し、単位はデシベル(dB)を用いる。
 
4・1・6 絶縁・腐食に対する考慮
 湿気、ほこり、塩水飛まつ、油、かび等により絶縁不良、腐食などを生じないよう考慮する。
4・1・7 周囲の影響に対する考慮
 周囲の状況に応じて、防滴、防水、防爆、防そ又は高温、低温に適する構造のものを考慮する。
4・2 電気機器類の配置
 図4・1のとおり、例として一般商船における電気機器類の配置例を示す。
(1)動力装置として、機関室に発電機と配電盤(通常は機関制御室内が一般的)が配置され、主機関用補機類、照明装置、通信装置、航法装置等に給電している。
(2)通信装置は、
(a)船内用として、電話、拡声装置、携帯無線、ベル等が配置されている。
(b)船外用として、無線通信用の海事衛星利用によるGMDSS(全世界的な海上遭難安全システム)が導入されている。
(c)その他の無線装置として、気象観測衛星受信装置、船上通信装置等が導入されている。
(3)航法装置は、船速計(ドップラーログ、電磁ログ等)、音響測深機、ソーナー、GPS受信機、レーダー等が配置されている。
 
 上記のほか、船灯、信号灯等多くの電気機器類が配置されている。
 
(拡大画面:143KB)
図4・1 電気機器類の配置例







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION