日本財団 図書館


2・3・5 非常電源
第299条:国際航海に従事する旅客船及び係留船には、次の各号のいずれかの非常電源であって独立のものを備えなければならない。
(1)次に掲げる要件に適合する蓄電池
 常に必要な電力が充電されているものであること。
 電圧を定格電圧の±12パーセント以内に維持しながら給電できるものであること。
(2)次に掲げる要件に適合する発電機
 独立の給油装置及び管海官庁が適当と認める起動装置を有する有効な原動機(引火点が摂氏43度以上の燃料を用いるものに限る。)によって駆動されるものであること。
 主電源からの給電が停止したとき自動的に始動し、45秒以内に定格出力で給電できるものであること。
2. 前項の規定により備える非常電源は、当該船舶に備える次に掲げる設備(A2水域及びA1水域のみ(湖川を含む。)を航行する船舶(A1水域のみ(湖川を含む。)を航行するものを除く。)にあっては第(7)号及び第(8)号に掲げる設備、A1水域のみ(湖川を含む。)を航行する船舶にあっては第(6)号から第(8)号までに掲げる設備を除く。)に対し給電することができるものであり、かつ、当該設備のうち管海官庁が指定するものを同時に作動させるために十分な容量を有するものでなければならない。
(1)船舶救命設備規則第87条第1項第(14)号並びに第90条第1項第(8)号及び第(9)号の照明装置
(2)非常標識(電気式のものに限る。)
(3)非常照明装置
(4)船灯
(5)VHFデジタル選択呼出装置、VHFデジタル選択呼出聴守装置及びVHF無線電話
(6)MFデジタル選択呼出装置、MFデジタル選択呼出聴守装置、MF直接印刷電信及びMF無線電話
(7)インマルサット直接印刷電信及びインマルサット無線電話
(8)HFデジタル選択呼出装置、HFデジタル選択呼出聴守装置、HF直接印刷電信及びHF無線電話
(9)船舶安全法施行規則第60条の6の予備の無線設備であって次に掲げるもの
 VHFデジタル選択呼出装置及びVHF無線電話
 MFデジタル選択呼出装置、MFデジタル選択呼出聴守装置、MF直接印刷電信及びMF無線電話
 インマルサット直接印刷電信及びインマルサット無線電話
 HFデジタル選択呼出装置、HFデジタル選択呼出聴守装置、HF直接印刷電信及びHF無線電話
(10)信号灯
(11)汽笛
(12)第297条の警報装置
(13)火災探知装置及び手動火災警報装置
(14)船舶防火構造規則第22条の防火戸閉鎖装置
(15)非常用の船内通信装置及び船内信号装置
(16)自動操舵(だ)装置
(17)電子海図情報表示装置及び電子航海用刊行物表示装置
(18)航海用レーダー
(19)電子プロッティング装置
(20)自動物標追跡装置
(21)自動衝突予防援助装置
(22)ジャイロコンパス
(23)船首方位伝達装置
(24)音響測深機
(25)衛星航法装置等
(26)船速距離計
(27)回頭角速度計
(28)音響受信装置
(29)船舶自動識別装置
(30)航海情報記録装置
(31)第146条の43の舵(だ)角指示器及び表示器
(32)消火ポンプのうちの1個
(33)自動スプリンクラ装置
(34)第288条の電動ビルジポンプ
(35)船舶区画規程第90条第3項に規定するビルジ管の制御に必要なコック又は弁の操作のための電気設備
(36)非常電源を代替動力源とする操舵(だ)装置
(37)第287条第1項の水密戸開閉装置、警報装置及び指示器
(38)エレベーター
(39)その他管海官庁が必要と認める設備
3. 第1項の規定により備える非常電源は、船舶の推進に関係のある機関を30分以内に始動させるために十分な容量を有するものでなければならない。ただし、非常電源から給電されない場合においても船舶の推進に関係のある機関を30分以内に始動させる措置が講じられている場合は、この限りでない。
4. 第1項の規定により備える非常電源は、第2項第(1)号から第(35)号までに掲げる設備に対しては36時間、同項第36号に掲げる設備に対しては第136条に規定する当該設備の操舵(だ)能力を維持する時間として告示で定める時間、同項第(37)号及び第(38)号に掲げる設備に対しては30分間、第(39)号に掲げる設備に対しては管海官庁が指示する時間以上給電することができるものでなければならない。ただし、管海官庁が当該船舶の航海の態様等を考慮して差し支えないと認める場合は、その指示する時間によることができる。
5. 第1項の規定により備える非常電源は、主電源からの給電が停止したとき自動的に非常配電盤に接続し、かつ、第2項第(1)号から第(15)号まで及び第(37)号に掲げる設備に対して自動的に給電できるものでなければならない。この場合において、当該非常電源が蓄電池であるときは、当該設備に対して直ちに給電を開始することができるものでなければならない。
6. 非常電源と独立した蓄電池であって管海官庁が適当と認めるものを備える船舶の非常電源には、当該蓄電池から給電される設備(第2項第(10)号から第(31)号までに掲げるものに限る。)への給電に関する第2項から前項までの規定は、適用しない。
(関連規則)
船舶検査心得3−1
299.1(a)第2号の「管海官庁が適当と認める起動装置を有する有効な原動機」は、次に掲げる条件に適合するものとする。
(1)原動機は、0℃において容易に起動することができるものであること。
 なお、この温度より低い温度の下で非常発電装置を起動することが予想される場合には、非常発電装置の容易な起動を確保するため、適当な加熱装置が設けられていること。
(2)自動起動する原動機には、少なくとも3回の連続起動が可能な貯蔵エネルギーを有する起動装置が備えられていること。当該原動機に第2の独立の始動手段(例えば、エアーモーターにより始動する場合の第2の独立の始動手段としては、セルモーター、手動クランキング等が考えられる。)が設けられていない場合は、自動起動操作により上記貯蔵エネルギーが致命的に消耗されることを防止する措置が講じてあること。さらに、手動により有効に起動することができる場合を除き、30分以内に更に3回の起動を行うことができる予備のエネルギー源が備えられていること。
(3)電気式及び油圧式の起動装置は、非常電源盤から給電されるものであること。
(4)圧縮空気式の起動装置は、適当な逆止弁を介して主若しくは補助の圧縮空気タンク又は非常用空気圧縮機によって給気されるものであること。
 なお、電動の非常用空気圧縮機は、非常配電盤から給電されるものであること。
(5)起動装置、充気又は充電装置及びエネルギー蓄積装置は、原動機の設置区域に備えられていること。また、これらの装置は、原動機の運転以外の用途に使用されるものではないこと。ただし、主又は補助の圧縮空気装置から、原動機の設置区域に設けられた逆止弁を介して、原動機用の空気タンクに給気することは差し支えない。
(6)自動起動が要求されていない場合には、手動のクランキング、慣性起動、手動で充てんされる蓄圧器又は火薬カートリッジ等の手動起動として差し支えない。
(7)手動による原動機の起動が困難な場合には、起動装置は、(2)から(5)までの規定に適合するものであること。ただし、起動のための操作は、人為的に行っても差し支えない。
(b)第2号イの「有効な原動機」とは、ディーゼル機関又はガスタービンをいう。
299.2(a)各号に掲げる設備は、すべて同時に作動するものとする。ただし、水密戸開閉装置(船舶区画規程第53条第1項の要件を満たしている場合に限る。)及びエレベーターについては、順次作動するものとして差し支えない。また、船舶安全法施行規則第60条の6の予備の無線設備を備える船舶にあっては、当該無線設備は、同時に給電される必要はない。
(b)舵角指示器は、第142条第(1)号に掲げる操舵機室に備える専用の動力源から給電することとした場合には除外して差し支えない。
(c)消火ポンプは、電気式の非常消火ポンプ又は主電源を設置した場所の火災からの影響を受けない電気式のものに限る。
(d)「給電することができる」とは、配線工事等の措置が講じられていることをいう。
(e)非常電源が蓄電池で構成される場合には、無線設備の負荷については、次の算式により算定した値とすること。
C=t{0.5 I(T)+V+α}
t:要求時間(要求される時間に応じ6時間(h)又は1時間(h)
C:負荷(A・h)
I(T):無線設備の送信に必要な電流消費量(A)
V:無線設備の受信に必要な電流消費量(A)
α:上記以外の追加の負荷(ジャイロコンパス、無線設備を操作する場所の照明装置、DC/ACインバーター等)
(f)第(31)号の「その他管海官庁が必要と認める設備」とは、第(18)号に規定するジャイロコンパスとは別にインマルサット直接印刷電信又はインマルサット無線電話を有効に作動させるためにジャイロコンパスを船舶に備えた場合には当該ジャイロコンパスをいう。
299.3(a)「船舶の推進に関係のある機関を30分以内に始動させるために十分な容量」とは、当該非常電源により30分以内に主機(複数の主機を有している場合はいずれか1の主機。(b)において同じ。)、主発電機及び主ボイラを運転状態に入ることができる状態にさせることをいう。
(b)本項ただし書の「措置が講じられている場合」とは、手動により空気圧縮機を作動させ、又は非常用の空気圧縮機を作動させることにより、30分以内に主機、主発電機、主ボイラが運転状態に入ることができる場合とする。
299.4(a)「第(31)号に掲げる設備に対しては管海官庁が指示する時間」とは、36時間とする。
(b)「管海官庁が当該船舶の航海の態様等を考慮して差し支えないと認める場合の指示」については、次に掲げるところによること。
(1)船灯のうち海上衝突予防法の規定により航行中の船舶が掲げなければならない船灯については、3時間として差し支えない。
(2)信号灯、汽笛、第297条の警報装置及び手動火災警報装置については、連続で30分間とする。
(3)総トン数5,000トン未満の船舶に備える第2項第(16)号の航海用レーダーについては、3時間とする。
(4)総トン数5,000トン未満の船舶に備える第2項第(17)号から第(23)号に掲げる設備については、0時間とする。
(5)第2項第(23)号の舵角指示器への給電時間については、第142条第(2)号に定める時間として差し支えない。
(6)短期間の航海に定期的に従事する船舶にあっては、36時間の給電時間は、航海時間に応じて12時間まで減じて差し支えない。(ただし(1)から(5)まで及び第2項第(1)号に掲げるものを除く。)この場合においては、資料を添えて、首席船舶検査官まで伺い出ること。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION