日本財団 図書館


2・9 船舶安全法による船舶の検査(要約)
 
 船舶は、陸上交通と異なり一度港を離れると長時間にわたり陸上から孤立して行動することとなり、気象、海象の変化による危険な状況に遭遇することも多いことから海上における人命の安全を確保するための措置が必要である。
 このため、船舶安全法第1条では「日本船舶は本法によりその堪航性を保持し、かつ、人命の安全を保持するに必要なる施設をなすにあらざれば、これを航行の用に供することを得ず」と規定している。この第1条が船舶安全法の精神であり、また目的の一つでもあるが、これらの目的を達成するため同法第2条第1項では、所要施設については命令の定めるところにより施設しなければならないと定め、同法第5条で、施設すべき事項について国又は日本小型船舶検査機構の検査を受けることが義務づけられている。
 GMDSS設備については、船舶安全法及び関係規則では無線電信等、救命設備、航海用具に区分されて、性能、とう載要件等が規定されている。これらの適用関係を線図として図2・1に示す。
 
2・9・1 用語の意義
 船舶安全法において使用される用語の意義は、次のとおりである。
(1)旅客船(船舶安全法第8条第1項)
 旅客船とは、旅客定員が12人を超える船舶をいう。
(2)国際航海(船舶安全施行規則第1条第1項)
 国際航海とは、一国と他の国との間の航海をいう。この場合、一国が国際関係について責任を有する地域又は国際連合が施政権者である地域、例えば、植民地、保護領、委任統治地は、それぞれ別個の国とみなされる。
(3)漁船(船舶安全施行規則第1条第2項)
 漁船とは、次のいずれかに該当する船舶をいう。
(a)もっぱら漁ろうに従事する船舶。(付属船舶を用いてする漁ろうを含む。以下次号において同じ。)
(b)漁ろうに従事する船舶であって、漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの。
(c)もっぱら漁ろう場から漁獲物又は加工品を運搬する船舶。
(d)もっぱら漁業に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁業の取締りに従事する船舶であって、漁ろう設備を有するもの。
(4)小型漁船(漁船特殊規則第2条)
 小型漁船とは、総トン数20トン未満の漁船をいう。
(5)危険物ばら積船(船舶安全施行規則第1条第3項)
 危険物ばら積船とは、危険物船舶運送及び貯蔵規則(昭和32年運輸省令第30号)第2条第1号の2のばら積み液体危険物を運送するための構造を有する船舶をいう。
(6)特殊船(船舶安全施行規則第1条第4項)
 特殊船とは、原子力船(原子力船特殊規則第2条第1項に規定する原子力船をいう。)潜水船、水中翼船、エアクッション艇、海底資源掘削船、半潜水船型又は甲板昇降型の船舶及び潜水設備(内部に人員をとう載するものに限る。)を有する船舶その他特殊な構造又は設備を有する船舶で告示で定めるものをいう。
注:告示で定めるものとは、水陸両用船
(7)小型兼用船(船舶安全施行規則第1条第5項)
 小型兼用船とは、漁船以外の小型船舶のうち漁ろうにも従事するものであって、漁ろうと漁ろう以外のことを同時にしないものをいう。
(8)小型船舶(船舶安全法第6条の5第1項)
 小型船舶とは、総トン数20トン未満の船舶をいう。
(9)小型船舶(小型船舶安全規則第2条第1項)
 小型船舶とは、総トン数20トン未満の船舶であって、国際航海に従事する旅客船以外のものをいう。
(10)検査基準日(船舶安全施行規則第18条第2項備考二)
 検査基準日とは、船舶検査証書の有効期間が満了する日に相当する毎年の日をいう。
 
2・9・2 船舶検査の種類
 船舶安全法による船舶検査は、次のように大別されている。
(1)定期検査
 船舶を初めて航行の用に供するとき、又は船舶検査証書の有効期間が満了したとき船舶の構造、設備等の全般にわたって行われる精密な検査である。定期検査に合格した船舶に対しては、航行区域(漁船の場合は従業制限)、最大とう載人員、有効期間等を記載した船舶検査証書が管海官庁から交付される。船舶検査証書の有効期間は原則として5年と定められているが、旅客船を除き、平水区域を航行区域とする船舶又は総トン数20トン未満の船舶であって危険物ばら積船、特殊船及びボイラーを有する船舶以外の船舶については6年と定められている。(法第5条)
 
(2)中間検査
 定期検査と定期検査の中間において、船舶の構造、設備等の全般にわたって行なわれる簡易な検査であって、第1種中間検査、第2種中間検査及び第3種中間検査の3種類がある。
 中間検査の種類と、これを受けるべき時期等については、施行規則第18条に次表のとおり規定されている。
 
○船舶検査証書の有効期間が5年の船舶
区分 種類 時期
1 国際航海に従事する旅客船(総トン数5トン未満のもの並びに原子力船及び高速船を除く。) 第1種中間検査 検査基準日の3月前から検査基準日までの間
2 原子力船 第1種中間検査 定期検査又は第1種中間検査に合格した日から起算して12月を経過する日
3 旅客船(総トン数5トン未満のものを除く。)潜水船、水中翼船及び長さ6メートル以上のエアクッション艇であって前2号左欄に掲げる船舶以外のもの並びに高速船 第1種中間検査 検査基準日の前後3月以内
4 国際航海に従事する長さ24メートル以上の船舶(前3号左欄に掲げる船舶及び施行規則第1条第2項第1号の船舶を除く。) 第2種中間検査 検査基準日の前後3月以内
第3種中間検査 定期検査又は第3種中間検査に合格した日からその日から起算して36月を経過する日までの間
5 潜水設備を有する船舶(前各号左欄に掲げる船舶を除く。) 第1種中間検査 船舶検査証書の有効期間の起算日から21月を経過する日から39月を経過する日までの間
第2種中間検査(潜水設備に係るものに限る。) 検査基準備日の前後3月以内(ただし、その時期に第1種中間検査を受ける場合を除く。)
6 その他の船舶 第1種中間検査 船舶検査証書の有効期間の起算日から21月を経過する日から39月を経過する日までの間
備考
1 この表において高速船とは、管海官庁が1974年の海上における人命の安全のための国際条約附属書第10章第1規則に規定する高速船コードに従って指示するところにより当該船舶が法第2条第1項に掲げる事項を施設している旨及び当該船舶に係る航行上の条件が、第13条の5第2項の規定により記入された船舶検査証書を受有する船舶をいう。
2 この表において「検査基準日」とは、船舶検査証書の有効期間が満了する日に相当する毎年の日をいう。
 
○舶舶検査証書の有効期間が6年の船舶
区分 種類 時期
旅客船を除き平水区域を航行区域とする船舶又は総トン数20卜ン未満の船舶(危険物ばら積船、特殊船及びボイラーを有する船舶を除く。) 第1種中間検査 船舶検査証書の有効期間の起算日から33月を経過する日から39月を経過する日までの間
 
(3)臨時検査
 定期検査又は中間検査の時期以外の時期に船舶の構造、設備等について船舶の堪航性又は人命の安全の保持に影響を及ぼすおそれのある改造や修理を行うとき、航行区域、最大とう載人員、制限汽圧、満載喫水線の位置その他船舶検査証書に記載された条件の変更を受けようとするとき等に行う検査であって、臨時検査の発生事由によっては、定期検査に準じた精密な検査が行われる。
(4)臨時航行検査
 臨時航行検査は、船舶検査証書を受有しない船舶を臨時に航行の用に供するときに行われる検査で、次のような場合に行われる。
(a)日本船舶を所有することができない者に譲渡する目的でこれを外国に回航するとき。
(b)船舶を改造し整備し若しくは解撤するため、又は法による検査若しくは検定若しくは船舶法の積量の測度をうけるため、これをその所要の場所に回航するとき。
(c)船舶検査証書を受有しない船舶をやむを得ない理由によって臨時に航行の用に供するとき。
(5)特別検査
 特別検査は、国土交通大臣が一定の範囲の船舶について事故が著しく生じている等により、その材料、構造、設備又は性能が法第2条第1項の命令に適合しないおそれがあると認める場合に、これらの船舶について特別検査を受ける旨を公示して、一定の期間を定めて特別に行う検査である。この場合、検査を受けるべき船舶の範囲、検査を受けるべき事項、検査を受ける場合の準備等について公示される。
(6)製造検査
 製造検査は、法第5条の検査の適用がある船舶のうち、船の長さが30メートル以上の船舶(注)の製造者に対し強制されている検査であり、船体、機関及び排水設備の設計、材料及び工事並びに満載喫水線を標示する船舶については、満載喫水線を定めるのに必要な事項に関し、船舶の製造に着手した当初から完成時までの間において、その工程に従って、精密に検査をするものである。製造検査においては材料試験、圧力試験及び機関の陸上運転が行われる。
注:次にあげる船舶を除く。
(イ)平水区域のみを航行する船舶であって旅客船、危険物ばら積船及び特殊船以外のもの。
(ロ)推進機関及び帆走を有しない船舶。(危険物ばら積船、特殊船、推進機関を有する他の船舶に引かれ、又は押されて人の運送の用に供するもの及び係留船を除く。)
(ハ)内外国の国籍を取得する目的で製造に着手した後、日本の国籍を取得する目的で製造することとなった船舶。
(7)予備検査
 船舶の施設として物件を備え付ける場合に、これを備え付ける船舶が特定しない場合でも、事前に製造者等の申請によって検査を受けることができる制度である。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION