5.5.6 アンテナの測定
アンテナの特性は、実効抵抗、指向特性、利得、利得対雑音比G/T等で表せる。
(A)アンテナ実効抵抗の測定;
図5・30にアンテナ実効抵抗の測定回路構成図を示す。送信機出力をスイッチ回路を通してアンテナに接続する。アンテナ同調周波数と送信周波数が一致するとアンテナに流れる電流Aが最大となる。次にスイッチを擬似空中線回路に切り替える。コイルまたはコンデンサの大きさを可変して電流形指示値を最大にする。さらに可変抵抗Rを変化して電流計Aの指示値がアンテナを接続したときと同じ値にすると、このときの可変抵抗の値がアンテナ放射抵抗となる。また、可変コイルのインダクタンスL又は可変コンデンサの容量CがアンテナのインダクタンスL又は容量Cと等しくなっている。
A:空中戦電流器 |
R:抵抗 |
L:コイル |
C:コンデンサ |
図5・30 アンテナ放射抵抗の測定
(B)アンテナ利得の測定;
アンテナ放射電力を目的方向に能率よく放射するためアンテナに指向性を持たせる。ある指向性アンテナに一定の電力を供給して電波をある距離に固定した受信アンテナで受信する場合を考える。そのときの受信電力をPTとする。次に指向性アンテナの位置に無指向アンテナを置き同じ電力で電波を放射する。始めと同じ受信機でこの電力を受信した電力をP0としたとき指向性アンテナの利得GAは受信電力比
(5・51)
となる。GAは無指向性アンテナに対する利得なので絶対利得という。基準アンテナをダイポールアンテナとしたときの指向性アンテナの利得を相対利得GRと呼ぶ。絶対利得GAと相対利得GRとの関係はダイアポールアンテナの絶対利得をGdとすると
絶対利得GA=相対利得GR×ダイポールアンテナの絶対利得Gd (5・52)
となる。ダイポールアンテナの絶対利得Gdは約1.64なので(5・52)式は
GA=GR×1.64 (5・53)
となる。dBに換算して表すと
GA(dB)=GR(dB)+2.15(dB) (5・54)
となる。あるアンテナの利得測定は図5・31に示すように利得が判っている標準アンテナとの比較により求められる。送信アンテナから離れた距離に測定する試験アンテナと標準アンテナを設置して受信する。同一の場所に置くことが望ましい。
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図5・31 アンテナ利得測定法構成図
送信アンテナから一定の電力を送信する。まず標準アンテナで受信したときの電力をPRとする。次に試験アンテナに切り替えて受信する。この時の受信電力PTが
PT=PR (5・55)
となるように可変減衰器を調節する。試験アンテナ利得GA、標準アンテナ利得GR、可変減衰器の減衰量(出力/入力)Lとすると
(5・56)
減衰量1/L、利得GをdBで表示すると試験アンテナ利得GA(dB)は
GA(dB)=GR(dB)+L(dB) (5・57)
で求められる。
(C)指向性(アンテナパターン)の測定;
アンテナ指向性は測定するアンテナを回転台の上に乗せて離れた場所から放射された電波を台を回転しながら受信する方法で測定される。図5・32(a)に指向性測定構成図を示す。送信と受信アンテナ間の距離は遠方電界となるべく離すことが必要であるが、距離が大きく取れないときは測定値を計算で補正する方法が行われている。周囲からの妨害電波が入ってこない場所が必要で電波暗室内で測定する場合が多い。回転台やケーブル等からの反射波が混入しないように電波吸収材で覆うなどの対策が必要となる。送信と受信アンテナの偏波面を一致させること、アンテナの高さを調節して主ビームの中心で受信することなどの注意が必要となる。測定アンテナの位置での電界の強さを求めるための参照信号受信アンテナを付加する場合がある。(b)に測定された指向性のー例を示す。周囲からの妨害波が混入するので室外でレベルの低いサイドローブを正確に表示することは困難である。
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(a)指向性測定構成図
(b)指向性の一例
図5・32 アンテナ指向性の測定
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