5・2 デシベル(dB)
ある数AがBの何倍あるかはAをBで割算すると求められる。割算は分数でも表されるので
(5・1)
となる。図5・1にある増幅回路を示す。入力電圧、Viと出力電圧V0の比を増幅度Gvと呼び
又は V0=ViGV (5・2)
となる。
図5・1 増幅器と増幅度
音を増幅するときの出力を人間が耳で聞くと増幅度Gvが10、100、1000、と大きくなっても耳の感覚では出力が20、40、60、・・・倍にしか感じない。人間の感覚器官が刺激の変化に対して対数的に感ずることをウェバーとフェヒナーの二人の生物学者が発見している。音響機器やテレビのように人間の感覚に対する電子機器が多い。
図5・1の( )内に示すように生物として考えると増幅度Gvの対数をとり
(5・3)
として計算した方が人間の感覚に近い出力電圧が得られる。また、対数をとることにより大きな数の有効数字が少なくできて計算がしやすくなる利点もある。
(5・3)式の対数log10は10を底とした常用対数で、係数20は電圧や電流の場合の定数である。(5・3)式のように対数をとる場合の量をデシベルと呼び、(dB)で表す。
dBのdは英語の10、decimalから10を底とする対数、及びBは電話の発明者Bellからとった量でBは名前なので大文字を使う。
20log10Gv=Gv (dB) (5・4)
と表せる。Gv(dB)からV0やViを求めるには(5・4)式から逆算して
(5・5)
から計算できる。(5・4)式または(5・5)式の計算は、電圧、電流、抵抗などの計算に適用される。電力のデシベル計算は定数が10となり
Gp(dB)=10log10Gp (5・6)
となる。Gpは電力増幅度で、入力と出力電力をそれぞれPiとP0とすると
(5・7)
となる。電力増幅度Gpp(dB)からPi、P0を逆算するには(5・5)式と同様に
(5・8)
となる。電力のdBでは定数が20ではなく10となることに注意が必要である。
表5・4に2つの数が比のA/Bの倍率とデシベルの関係を示す。
表5・4 デシベル表
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デシベルは2つの量の比A/Bを表すので単位はないがBをある基準値とするとGデシベルからAの値を知ることができる。Bを1ボルトとしたときのある電圧Aの電圧値はGvデシベルが既知の場合(5・3)式、(5・4)式でV0=A、Vi=B=1とおいて
(5・9)
となる。この場合Gは(dBV)と書いて1ボルトを基準としたデシベルであることを示す。Gv=20(dBV)のときは(5・8)式から
20=20log10Aより 1=log10A (5・10)
A=10のとき
log1010=1 (5・11)
となるのでAはB=1ボルトの10倍からA=10ボルトと求められる。
B=1μV=10−6Vを基準にしたときはG(dBμ)としてμをつける。
電力Gのデシベル表示で、1Wを基準としたときはG(dBW)、1mWを基準にしたときはG(dBm)として表示される。
デシベル表示が単なる比を表すか又は基準値による絶対値を表すか注意する必要がある。
表5・4において倍率A/B=1に基準値Bを入れると倍率がAの値になる。
Gvが60(dBV)は倍率が1000であるので基準B=1Vに対してA=1000Vとなる。
Gpが20(dBm)のときはB=1mWの100倍となるのでA=100mWとなる。
表5・4に示すように倍率が10倍となると電圧では+20dB、電力では+10dB増加する。逆に倍率が10分の1に下がるときは電圧で−20dB、電力で−10dBづつデシベル値が小さくなる。
倍率が2倍のときは電圧で+6dB、電力で+3dB増加する。倍率が2分の1となると電圧で−6dB、電力で−3dB、デシベル値が小さくなる。
dBからの逆算は電圧、電流では(5・5)式、電力では(5・8)式から計算できる。
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