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1・2 磁気とはなにか
1・2・1 磁気の極性と磁力線
 磁気を持った岩が鉄の斧を吸い付けた中国での話は静電気の発見より昔の約4000年前と言われている。地球は大きな磁石であり北極Sと南極Nがあることが知られている。地球の北の磁極はSであり、南の磁極はN極である。これはN、Sの名称と矛盾しているようであるが、磁石を地球上で吊したとき、北を向く方を磁石のN極、南を向く方を磁石のS極と名付けたことからこのようになったものである。N極とS極の間には静電気のプラスとマイナスとの間の電気力線と同じに磁力線があると考えられている。図1・17に磁力線の分布図を示す。磁力線はN極から出てS極に入り分布は電気力線と同じ形状となる。
 
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図1・17 磁極と磁力線
 
 N極とS極との間は磁力線により引き合い、同じN極またはS極間は反発して押し合う。磁極間に働く力の大きさと向きもクーロンが発見してクーロンの磁気力の法則と呼ばれ、その大きさは電気力と同じに磁極の強さに比例して、極間の距離の自乗に反比例する。
 鉄、ニッケル、コバルト等の金属は磁石によく吸い付けられる。このような材料を磁性体と呼ぶ。銅、アルミニウム等の金属は磁石に吸い付かない。このような金属を非磁性体と呼ぶ。ガラス、木材、陶器等の絶縁体は非磁性体である。
 図1・18に示す2つの磁気量M1とM2間に作用する磁気の力(F)はクーロンの法則から
 
(1・25)
となる。ここで、μは透磁率と呼ばれ、磁気量が置かれている媒体の磁気的性質による定数である。真空のμ0に対するある媒体のμの比透磁率μrと呼ぶ。真空の透磁率はμ0=4π×10−7である。
 
図1・18 磁気力、F
 
 地球の磁力を地磁気と呼ぶ。地磁気は海中や地中の中にも入り込むことができる。
 
1・2・2 電流と磁界
 アンペールは電線に電流を流すと電流を取り巻いて磁力線が発生し、図1・19に示すように磁力線の向きと電流の向きとの関係は右ネジを回す向きとネジが進む向きに対応することを発見してこの関係をアンペアの右ネジの法則と呼んだ。すなわちネジを右に回す向きに磁力線をあわせるとネジが進む方向が電流の向きとなる。
 
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図1・19 アンペアの右ネジの法則
 
コイルと等価磁石:
 図1・20にコイルに電流を流したときに発生する磁界と磁石から発生する磁界とを対応して示した。2つの磁界が同じ形状の分布をしていることからコイルが等価磁石と呼ばれる。コイルを巻いたモーターが回転するのはコイルから発生する磁界の力を利用するからである。
 
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図1・20 コイルと等価磁石
 
 コイルに電流を流すと電流を押さえる抵抗(リアクタンスXL)が作用する。1・1・5項で述べたように
XL=j2πfL (オーム、Ω) (1・26)
となる。ここで、jは虚数単位 で、πは円周率、約3.14、fは周波数(Hz)、Lはコイルのインダクタンスと呼ぶ定数で単位はヘンリー、(H)で表す。
 コイルに電圧e(V)を加えるとき流れる電流i(A)は
(1・27)
となる。(−j)により電流iは電圧の変化に対して90度位相が遅れて流れる。コイルに抵抗分Rが含まれているとリアクタンスXLはインピーダンスZLとなり
ZL=R+XL=R+j2πfL (Ω) (1・28)
となり、電流の大きさは
(1・29)
となり、電流の位相は電圧の変化に対して電気角として
(1・30)
 
だけ遅れて変化する。
 
1・2・3 磁気回路−変圧器(トランス)
 2つのコイルを近づけて磁界で結合すると変圧器ができる。一次側と二次側のコイルの巻き線数の比により電圧や電流の変換ができる。図1・21に変圧器の回路を示す。
 一次コイルAと二次コイルBの巻き線比をnA:nBとする。変圧器の損失がないとすると入力の一次側電圧と出力の二次側電圧が巻き線数の比となるので
 
eA:nA=eB:nB (1・31)
 
より
(1・32)
図1・21 変圧器の回路
 
 変圧器の電力損失がないとすると、一次側と二次側の電力が等しいので電流をiAとiBとすると
eA×iA=eB×iB (1・33)
(1・32)式(1・33)式より
(1・34)
 巻き線をnB>nAとすると二次側Bの電圧は一次側より大きくなるが電流は逆に小さくなることが分かる。トランスは電圧及び電流の変換のほかにも、インピーダンス変換にも利用される。
 一次側のインピーダンス(抵抗とリアクタンス)をZA、二次側をZBとすると
ZA:ZB=nA2:nB2 (1・35)
の関係があるので
(1・36)
となるのでインピーダンスの異なる回路間をトランスで結合する(これをインピーダンス整合と呼ぶ)ことができる。アンテナと受信機のインピーダンスを整合させるのに適当な巻き数比を持つ高周波トランスが使用されている。







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