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4・6・1 トリガ発生回路
 トリガ発生回路はマグネトロンで発振するパルスの繰り返し周波数を決定する発振回路で、このパルスがレーダーの動作の時間的基準となっている。したがって、このパルスは変調回路やSTC回路の起動パルスとしても、また、表示系統の他の回路の時間的基準としても用いられる。
 
4・6・2 ゲート回路
 CRTの中心から外周までの距離、すなわち探知距離範囲は、0.5海里、1海里、3海里や10海里のように、探知したい物標の距離に応じて切り替えることができるようになっている。これを掃引時間について考えてみると、0.5海里では6.17μs、1海里では12.35μs、10海里では123.47μsの時間内に輝点を中心から外周まで掃引しなければならないことになるが、この探知距離に応じて時間幅を決める回路がゲート回路である。また、この掃引時間以外に生ずる不必要な映像は写し出さず、さらに掃引線の帰線を消去することも必要となる。これには、送信が休止している間はCRTがカットオフになるような電圧をかけ、探知時間の間だけカソードに負の電圧(あるいは第2グリッドに正の電圧)を印加してバイアスを浅くして、第1グリッドに信号入力があれば掃引線が輝点となって光るようにすればよい。これらの時間関係を図4・30に示す。
 一般にゲート回路には、トリガに同期したワンショット・マルチバイブレータ回路が使われている。
 
図4・30 表示回路の時間関係
 
4・6・3 掃引回路
 掃引の時間軸を作るための回路で、図4・31に掃引回路を示す。
 偏向コイルには、図4・32に示すような直線性のよいのこぎり波電流が必要である。これは、電磁偏向型のCRTを使用する場合、電子ビームは磁力線で偏向されるので、その偏位量が時間的に正しく比例するためには、磁力線の強さもまた一定の割合で増加しなければならないからである。そのためには、偏向コイルに流れる電流の大きさが時間的に比例すること、すなわち、その電流波形が直線的なのこぎり波であることが必要である。
 
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図4・31 掃引回路と各部の波形
 
図4・32 偏向コイルに流すのこぎり波電流と掃引の関係
 
4・6・4 アンブランキング回路
 アンブランキング回路は掃引線の帰線がCRTに現れないようにするためのものである。図4・33に示すように、掃引のこぎり波の立ち下がりの部分は立ち上がりの部分に比べて非常にスピードは速いがこの間に電子はCRTの外周から再びその中心に帰ってくるので、この間はCRTを光らすことを止める必要がある。そのため、のこぎり波の立ち下がりが始まる前に、CRTの第1グリッドにゲートパルスを加えて電子の発射を止めるようにする。
 
4・6・5 マーカ回路
 CRTで物標の距離を測定するためには距離マーカが必要で、この距離マーカには固定距離マーカと、可変距離マーカとがある。物標までのおよその距離を知りたいときは固定距離マーカを使用し、もっと正確な距離を測定する場合には可変距離マーカを使用する。
 固定距離マーカは図4・34に示すように、映像画に一定間隔の円心円を描かせるもので、例えば、10海里レンジでマーカーが5本あれば、その間隔は2海里であり、物標の映像が2本目と3本目の間にあれば約5海里であると判断できる。
 
図4・33 アンブランキング回路と波形
 
 もっと正確に距離を測定する場合には可変距離マーカを使用する。これは画面上に一つの円が現れ、可変距離マーカつまみを回すことによって円の大きさが変わるので、この円が物標の映像の上は重なるようにすると、同時にそこまでの距離が表示器のパネル面にデジタルで表示されるものである。
 
図4・34 CRT上の固定距離マーカ
 
(1)固定距離マーカ回路
 固定距離マーカを作るためには、一定間隔のパルスを作り出す必要がある。これにはいろいろな方法があるが、一般にはLC発振回路や水晶発振回路が用いられている。
 必要な距離マーカを作るための一定間隔のパルス周波数は、次のようにして作られる。例えば、15kmを往復するために必要な時間tは、電波の速度を3×108(m/s)とするとt=2D/3×108=100μsであるから、周波数はこの逆数の
 
 
となる。レーダーでは一般に距離の単位として海里(マイル)が使用され、1海里は1,852mであり、電波が1海里を往復する時間は12.346μsとなって、周波数では80.994kHzに対応する。
 このため、原発振回路では16.199MHzを発振し、ゲートパレスをかけて掃引線内だけ発振させ、これをICの分周回路によって各レンジで必要な固定距離マーカに対応した周波数にまで分周する。レンジスイッチによって所要の周波数を選択すると、この出力を微分して増幅し、ビデオ回路を通してCRTに表示する。距離マーカ回路の系統の一例を図4・35に示す。
 
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図4・35 固定距離マーカ系統図(周波数は一例を示す)
 
(2)可変距離マーカ
 可変距離マーカは物標の映像が固定距離マーカの間にあるような場合に、物標までの距離を正確に測定するときに用いる。
 可変距離マーカの構成を図4・36に示す。
 単安定マルチバイブレータでトリガに同期したゲートを作り、このゲート内、の0.01海里パルスの数をカウントして、これを表示回路でデジタルに表示する。
 
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図4・36 可変距離マーカの構成







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