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4・5・1 局部発振器
 受信信号は局部発振器の出力と、ミキサーダイオードによってヘテロダイン検波され、中間周波信号となって受信機の入力に送られる。すなわち、受信しようとする周波数よりも中間周波数だけ高いか又は低い周波数を局部発振器で発振させ、混合器(ミキサ、以下ミキサという。)で受信信号と局部発振信号を混合する。ミキサの出力には、この二つの信号のビートが出てくるが、一般には、このうちの差の周波数をフィルタで取り出している。この周波数を中間周波数(Inter mediate Frequency:IF)と呼び、次の中間周波増幅器で十分に増幅してから検、する。これをスーパーヘテロダイン方式というが、この方式は安定度、選択度、感度の点で他の方式よりも優れている。
 このほかに、レーダー受信機では、近距離での海面反射(波浪からの反射抑制)を抑制する回路(STC:Sensitivity Time Control)や雨雪からの反射信号を指示器の映像面から抑制する回路(FTC;Fast Time Control)などが付属している。また、反射信号の強さを定量的に知りたいとき(例えば雨量測定など)には、中間周波増幅回路に対数増幅器(ログアンプ)を使用することもある。
 
4・5・2 バランスドミキサ
 スーパーヘテロダイン方式の受信機の中間周波数を作るために、局部発振器からの信号と空中線からの受信信号とを加え、その周波数の和又は差の周波数の信号を作り出す部分がミキサである。ミキサの性能を向上させる方式としてバランスドミキサ(平衡型混合器)がある。
 バランスドミキサは3dB(デシベル)結合器とクリスタルダイオードから成っている。その外観を図4・19に示す。
 
図4・19 バランスドミキサー
 
図4・20 バランスドミキサの動作原理
 
 3dB結合器というのは、図4・20のように空中線からの受信信号(RF)を半分ずつに分けて、これらをクリスタルダイオードで検波し、同時に、局部発振器の出力(LO)も半分ずつに分けて合成するが、その位相がお互いに180度異なるので局部発振器からの雑音は相殺され、約3dBS/N(信号対雑音比)が改善される。このため、3dB結合器と呼ばれている。
 マイクロ波信号のミキサとしては、クリスタルダイオードが広く使用されてきた。これは、ダイオードの非直線性を利用して二周波を混合するものである。このクリスタルダイオードは図4・21に示すような構造で、シリコンとタングステン線とを特殊な容器に収めたものである。クリスタルの面には、感度の良い点とそうでない点とが分布しているが、タングステン線のとがった先をその最も感度の良い点に当て、その点が移動しないように封入剤を入れて密閉したものである。
 クリスタルダイオードの抵抗をテスターで計ると、その電圧の極性の加え方によって異った値を示す。この両方の値の比の前後比(又は順逆比)と呼んでいる。この方法はクリスタルダイオードの良否を調べる簡略法であり、良好な動作をしているときの前後比は、順方向で400Ω以下、逆方向の場合は10kΩ以上である。クリスタルダイオードの電圧電流特性は図4・22に示すように負電圧に対して高い抵抗を示し、正電圧に対して低い抵抗を示す非直線性の特性をもっている。
 クリスタルダイオードによるミキサの等価回路は図4・23に示すとおりである。出力としては、クリスタルダイオードの非直線性の特性により、二つの周波数の和と差が出てくるが、LとCの同調回路はその差の周波数、すなわち中間周波数に同調するようになっているので、同調回路の両端には中間周波数の電圧のみがかかり、この電圧を中間周波増幅器に加えることになる。
 
図4・21 クリスタルダイオードの構造
 
図4.22 電圧電流特性
 
図4・23 ミキサの等価回路
 
 最近のレーダーでは、クリスタルダイオード方式のミキサはほとんど使われていない。次項に述べるフロント・エンド(マイクロ波集積回路)が使われている。







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