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4・2・1 トリガ回路
 レーダーのすべての動作はトリガを動作開始の基準としている。トリガ回路は送信部と表示部の動作を同期させるための同期信号としてトリガパルスを発生するが、この同期信号の周波数がパルス繰り返し周波数(PRF)となる。いま1秒間に1,500回ずつ(パルス繰り返し周波数1,500Hz)トリガパルスが出たとすれば、このトリガによりサイラトロンやサイリスタがONになってマグネトロンが発振する。同時にこのトリガにより、表示器のブラウン管(CRT)上を走査する掃引線(スイープ)も同期して1パルスごとに1回ずつブラウン管の中心から端までスイープすることになり、スイープの基点はブラウン管の中心と一致することになる。
 トリガパルスを発生する回路にはいろいろある。最近の送信出力10kW程度のレーダーでは、直流12〜24Vを電源とするものが多く、このような機種では電源回路を小型化するために発振周波数の高いDC−DC電源が使用されている。また、この発振周波数を1,000〜2,000Hzとして、この発振周波数からトリガパルスを作る電源同期方式のものが多い。この回路の一例として電源の発振周波数1,500Hzの場合のブロックダイヤグラムを図4・6に、タイミングチャートを図4・7に示す。
 
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図4・6 トリガ回路のブロックダイヤグラム
 
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図4・7 タイミングチャート
 
 ショートレンジかロングレンジかによって、1,500Hzの電源周波数をリレーで選択する。ロングレンジの場合は1/3分周回路を通って500Hzに分周され、パルス発生部で、送信へのトリガとしてサイラトロン又はサイリスタを駆動するのに必要なパルス幅を、500Hzの波形の立ち上がりに同期して作る。このパルスはサイラトロンやサイリスタをONとして高圧パルスを作る役目をするので、送信トリガと呼んでいる。実際には、送信トリガで高圧パルスを作り、マグネトロンを発振させて空中線から電波の出る時間と表示器に入ったトリガによってブラウン管のスイープが始まる時間とを一致させる必要がある。もし、このスタートの時間が一致していないと誤差を生じることになるので、ゲート幅を可変できる遅延ゲートを設けて、送信トリガとの時間差を調整できるようにしてある。
 
4・2・2 変調器
 変調器は、電源、チャージングチョーク、サイラトロン又はサイリスタ、パルストランス、マグネトロン等により構成される。ブロックダイヤグラムを図4・8に示す。
 
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図4・8 変調器と送信機のブロックダイヤグラム
 
 送信パルスの幅はこの変調部で作られるパルス電圧の幅により決まるので、一般にはこの回路をパルス変調器といい、現在ではライン形変調方式が最も多く用いられている。
 トリガによって、サイラトロン又はサイリスタがONになり導通するが、トリガ入力がない場合はOFFとなって、ちょうどスイッチの役目をする。このOFFのときに電源から高電圧がチャージングチョークを通ってパルス形成回路(PFN)は図4・9に示すようにコイルとコンデンサーで構成されていて、このコンデンサーに充電されるが、端子Bはパルストランスを通じて接地されているので零電位に保たれる。
 
図4・9 PFN(Pulse Forming Network)の回路
 
 PFNを充電する等価回路は図4・10に示すとおりで、チャージングチョークのLとPFNのコンデンサーCの回路に直流電圧E0が加えられると、a点の電圧は、LCの値で決まる周期の直列振動をしてからE0になる。
 はじめの振動で約2E0の電圧に上昇したときに、サイラトロン又はSCRにトリガ入力を加えて導通させると、Cに充電されていた2E0の電荷が一挙に放電する。このときの放電に要する時間は、PFNのコイルとコンデンサーによって決まり、これがパルス幅となる。図4・11は、放電回路の等価回路であるが、この放電電流はPFNのインピーダンスとZ0と、パルストランスの一次側からみたインピーダンスZpとが等しくなるように設計してあるので、規定のパルス幅で、かつ、波高値が2Eoのパルスとなってパルストランスの一次側に掛かる。この高圧パルスを更にパルストランスの巻線比により昇圧して、マグネトロンが安定して発振するようにしてある。
 
図4・10 充電回路
 
図4・11 放電回路
 
4・2・3 マグネトロン
 マグネトロンは磁電管とも呼ばれ、電子流と磁界との相互作用を利用した二極管である。周波数の安定度は悪いが30%以上の効率で発振し、大きなパルス出力を容易に得ることができるという利点があるので、レーダーのパルス送信用に広く用いられている。詳しくは第3章の3・1節を参照されたい。







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