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図3・31 方形導波管ベンド
 
 導波管の曲がりの部分をベンド(bend)といい、方形導波管の場合図3・31に示すように、TE10波の磁界面に平行な曲げたHベンドと、電界面の平行に曲げたEベンドとがある。この導波管のベンド部は、直線部との間にどうしてもインピーダンスの不整合が生じ、反射波ができるので、曲がりはじめの部分と、曲がり終りの部分で生ずる反射波の位相が逆で互いに打ち消し合うような寸法に曲げた部品も用意されている。
 導波管の接合部は普通は図3・32に示すようなフランジを付けてねじ止めをする。この透き間から管内に水分や湿った空気が入らないように、ゴムやパッキンのリングを入れる。接合部での接触が悪いと、導波管のその部分にインピーダンスの不整合が生じるので、チョーク接合と称する方法がとられている。これは図でカバーフランジのある側のフランジは平面(フラットフランジ)であるが、チョークフランジ側はその接合部の断面が図に示すように、1/4波長ずつの寸法で溝が切られ、全部の奥行が1/2波長になるような構造となっている。この半波長の長さのABCの透き間には波がのるが、A点で短絡されているので、その中間のB点は電流の谷(電圧の山)となって、そこに若干の接触不良があっても影響がなく、C点で完全に接触が保たれているのと等価の接合になる。フランジの溝の部分の構造は方形の導波管に対して円形となっているが、図に示すように電界の最も強い長辺の中心でのBC間が1/4波長になるように選んである。
 導波管の分岐回路はレーダーでは、送信機からの出力と受信機への入力を分けるのに使用されているが、その一例として、図3・33に示すT形の分岐があり、この場合、分岐が電界面に平行にでるE分岐と、磁界面に平行にでるH分岐があり、レーダーでは多くの後者が使用されている。この両分岐の等価回路も同じ図に示すとおりで、E分岐は直列分岐、H分岐は並列分岐となる。
 
図3・32 方形導波管の接合部
 
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図3・33 T分岐
 
図3・34 方向性結合器
 
 導波管の接合には、また、図3・34に示すように導波管を二つ並べて接合したものがある。これは、図3・34に示すように接合管壁は使用電波の波長λgの1/4の距離を離した結合穴AとBで連絡をしてある。いま、図の矢印の方向に導波管の中に電波を伝わらせたとする。こうすると結合穴Aを通って隣の導波管に漏れた電波は、その導波管の両方の方向に伝搬をする。しかし、この穴からλg/4離れた穴Bからも電波が漏れて、この隣の導波管を伝わる。このとき、同図の下のように隣の導波管を右の方向に伝わる波は、穴Aと穴Bからもれてきた分の伝搬するそれぞれの径路長は同じであるから、位相的に同じであり、二つの波が加わった形で右側に進む。一方、穴Aから入って左側に進む波には穴Bから入って左側に進む波が加わる。しかし、この二つの波は伝搬の径路長が(λg/4)×2=λg/2だけ異なっており、位相的には半波長異なるので、この二つの穴から入ってくる波のエネルギーが等しければ、A点で合成したときには互いに打ち消し合って、結果的に、左側には電波は伝わらないことになる。また一方、逆に右から左に主導波管を伝わる波は、下側の導波管では左側にのみ伝わるようになる。このような導波管の結合器を方向性結合器と呼ぶ。ただし、この結合器は、結合穴の間隔の4倍に等しい波長の電波にのみ有効であることに注意する必要がある。
 方向性結合器は、レーダーの受信機の試験をするときに逆の径路で試験発振器の信号を主導波管側に入れたり、送信信号の一部を取り出すのに使用したりする。この場合には、導波管回路の部を取り外して方向性結合器の付いた導波管と取り替えるので、レーダーを装備する際には、この取替部分を、あらかじめ設けておいた方がよい。
 レーダーに使用される導波管については、例えば、WRJ−9・・・CD1という呼び方の場合では、Wは導波管、Rは方形、JはJIS(旧規格)、9は9000MHz用、Cは銅(他にR丹銅、B黄銅等)Dは引き抜きを表す。
 なお、フランジはすべてフラットフランジで、図3・32のようなチョークフランジは規定されていない。引き抜き方形導波管の寸法の規格を表3・2に示す。
 
図3・35 規格導波管の使用帯域と減衰量
 
表3・2 引き抜き方形導波管の寸法規格例
型式
使用周波数
(GHz)
内径寸法 外径寸法 肉厚
(mm)
肉厚のばらつき
(mm)
a b 許容差 c d 許容差
0級 1級 2級 0級
WRJ−3
(2.60〜3.95)
72.1 34.0 ±0.07 ±0.13   76.1 38.0 ±0.13   ±0.2
WRJ−4
(3.30〜4.90)
58.1 29.1 ±0.05 ±0.1   61.3
(60.5)
32.3
(31.5)
±0.1 1.6
(1.2)
±0.2
WRJ−5
(3.95〜5.85)
47.55 22.15 ±0.05 ±0.1   50.75 23.35 ±0.1   ±0.2
WRJ−6
(4.90〜7.05)
40.0 20.0 ±0.04 ±0.06   43.2 23.2 ±0.06 −0.14   ±0.2
WRJ−7
(5.85〜8.20)
34.85 15.85   ±0.05 ±0.06
±0.14
38.05
(37.25)
19.05
(18.25)
±0.05 −0.15 1.6
(1.2)
±0.2
WRJ−9
(7.05〜10.00)
28.5 12.6   ±0.05 ±0.05
±0.15
31.7 15.8 ±0.05 −0.15   ±0.2
WRJ−10
(8.20〜12,400)
22.9 10.2   ±0.04 ±0.04
±0.12
25.4 12.7 ±0.04 −0.12   ±02
1. ( )内のは暫定的
2. 内径、外径のabcは下図のとおり



3. 内側のすみの丸みは半径1mm(ただしWRJ9と10は0.8mm以下)
 
 また、図3・35には導波管の中を電波が伝わるときの減衰量を1m当たりのdB値で示してある。導波管はその中を通す波長に比べ、寸法の大きい方が減衰が少ないので、例えば3cm波レーダーではWRJ−9でもWRJ−10でもよいが、長い伝送路には減衰の少ないWRJ−9を使い、特に寸法的に小さいことが要求される場合にのみWRJ−10が使われる。
 
3・9・5 空胴共振器
 比較的低い周波数の信号を発振させたり、受信したりするときによく使用される共振回路(同調回路)は図3・36に示すようなインダクタンスLのコイルとキャパシタンスCのコンデンサを並列に接続した回路である。
 このような回路の共振(同調)周波数fは
 
 
であり、これは集中定数回路である。マイクロ波の領域になると、このような共振回路にも分布定数回路が使用され、例えば、平行線路を使ったものであれば、共振周波数の波長の1/2光の長さに平行線を短絡したものがある。しかし、このような平行線共振器はマイクロ波の領域では、そこから電波が空中に放射されるため放射損失などによって、必ずしも効率のよい(Qの高い)共振器とはならない。
 
図3・36 共振回路
 
 平行線の代わりに、同軸線路の断面部を長さλ/2で短絡(導体で閉じた)したものは共振器となり、これはその同軸共振器と呼ばれる。導波管の場合も同様で、その長さを1/2波長又はさの整数倍で短絡をすると共振回路となる。このような同軸線路や導波管の一部分を使った回路は、全体的に閉じられているので、電波が外に放射されることもなく、また、内壁等に導電率の高い金メッキ等を施して抵抗損失を防ぐことができるので効率のよい(Qの高い)共振回路を構成することができる。
 導波管の一部で構成されるような共振器は円形の導波管を使用することもできるし、またその内部の形をいろいろに変えたものとすることもでき、これらはすべて空胴共振器と呼ばれる。図3・37にはその例を示すが、(a)はドーナッツ形の内の輪をつないだもの、(b)は円形の導波管の上部を同軸形にしたものである。(b)図のように内部の突起を上下できる金属棒で構成しておくと、その上下によって底面との間にキャパシタンスが変化するので、一義的には、その内のり寸法できまる空胴の共振周波数を、ある程度変更することができるようになる。空胴共振器は、導波管と同様、その内部の電磁界の励振の仕方によって、いろいろなモードが考えられる場合もある。この場合も、その振動モードによって共振周波数は変化をする。
 
図3・37 空胴共振器の例







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