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1・3・6 トランジスタ素子
 トランジスタはPNP型又はNPN型のように3つを接合した電子素子である。図1・36にPNP型、図1・37にNPN型トランジスタの構成と記号をそれぞれ示す。PNP型とNPN型では電源の接続極性が逆となることに注意が必要である。電流が逆向きに流れるので接続を間違えるとトランジスタが破壊することがある。
図1・36 PNP型トランジスタ
 
図1・37 NPN型トランジスタ
 
 電池はトランジスタを動作させるためのエネルギー供給用と各電極に必要な電圧を供給するのでバイアス電源と呼ばれる。3つの電極はEはエミッタ、Bはベース及びCはコレクタと呼ぶ。PNP型はエミッタからトランジスタへ電流が流れ込み、NPN型では逆に流れ出るので矢印で区別している。エミッタ電流IE、ベース電流IB、コレクタ電流ICの間には
 
IE=IB+IC (1・43)
 
の関係がある。電流配分はエミッタ電流IEの大部分(約99%)がコレクタ電流ICとなり残りの約1%程度がベース電流IBとなるような動作をする。バイアス電源を加えた状態で信号を入力すると増幅された信号出力が得られる。
トランジスタの増幅原理;
 図1・38にベース接地型エミッタ入力回路を示す。ベースBがエミッタEとコレクタCの間の共通位置におかれ、ベースを接地して増幅器とする。
 
(a)PNP接合表示
(b)記号表示
 
図1・38 ベース接地型増幅器
 
 電流変化分を記号によるΔiで示す。入力Δieと出力ΔiCとの比が電流増幅率αとなる
(1・44)
 通常、αは0.90〜0.99の値となる。入力エミッタ側はP→Nの順方向へ電流が流れるので入力抵抗Z1は小さく10〜200Ωであるが、出力コレクタ側はN→Pの逆方向にバイアス電圧が加えてあるので電流が流れにくくなり出力抵抗Z0は大きくなり通常Z0は100kΩ以上の値となる。入力電力と出力電力との比が電力利得APとなる。
(1・45)
 α≒1とすると電力利得は入力と出力側の抵抗比となる。Zi=100Ω、ZO=100kΩとすると、AP=1000倍の電力増幅器となる。
 図1・39にPNPトランジスタによるエミッタ接地、ベース入力増幅回路を示す。大きい電圧増幅度があり、入力抵抗が大きいので標準型増幅器として用いられる。入力のベース電流変化ΔiBと出力コレクタ電流変化ΔiCの比が電流増幅度βとなり
(1・46)
分子と分母をΔieで割るとαで表されて
(1・47)
となる。αは1より小さいがβは1より大きくなる。α=0.99とするとβ=99となる。
図1・39 PNPエミッタ接地型増幅回路
 
 トランジスタ増幅器の3つの基本回路を図1・40に示す。
 
(拡大画面:93KB)
図1・40 トランジスタ増幅器の3つの基本回路
 
 それぞれの特徴を真空管回路と対応して示してある。(a)はベース接地型、(b)はエミッタ接地型である。(c)はコレクタ接地型と呼ばれる回路で電圧増幅度は約1となるが出力抵抗が低く、大きい電流増幅度が得られるのでインピーダンス変換器として多く用いられている。図1・40に真空管増幅回路とトランジスタ増幅回路を対応させてある。真空管の電極とトランジスタの電極との間は、真空管のカソードKとエミッタE、グリッドGとベースB及びプレーとPとコレクタCがそれぞれ対応している。







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