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2・2・6 三相短絡特性試験
 三相短絡特性は、発電機の端子で三相短絡を行い、ほぼ定格回転速度における界磁電流に対する短絡電流を求めるものである。接続例を図2.10に示す。
(1)発電機法
 発電機端子を短絡し、他の駆動機で運転しながら、界磁電流に対する短絡電流の値を測定し、グラフにすると図2・4の三相短絡特性曲線が得られる。
(2)電動機法
 発電機を同期電動機として始動し、同期速度近くなった後、電動機を電源から切り離す。電動機の界磁電流を素早くいったん零にした後、電動機端子を短絡する。短絡が終ったら、界磁電流を数点変化し、短絡電流を測定する。(図2.11参照)
 GD2の小さい機械は早く減速するので、素早く測定しなければならない。測定中に回転速度が変化するが、回転速度による短絡電流の変化はない。
 
図2.10 短絡特性測定回路(発電機法)
 
図2.11 短絡特性測定回路(電動機法)
 
2・2・7 界磁電流・短絡比及び電圧変動率の算定
(1)界磁電流の算定
 負荷時の界磁電流は小容量の発電機では実負荷をとり実測することができるが、大容量機では不可能な場合が多い。このようなときは、無負荷特性及び短絡特性から負荷時の界磁電流i3を算定する。算定式はここでは図2・4の特性曲線例から定格界磁電流を算定してみる。図からi1、i2が求まるとi3は次のようにして算定する。
 
力率1.0の場合
 
力率0.8の場合(kは係数で、突極機の場合k=1.25)
 
 
 なお、短絡比が1.0近くでは、力率0.8の時のi3
i3=i1+i2・・・(2・8)
として近似的に求まる。
 
(2)短絡比の算定
 短絡比Sは、無負荷定格電圧発生時の界磁電流i0と、三相短絡時、定格電流を流すに要する界磁電流i2との比で表す。
S=i0/i2・・・(2・9 )
本図ではi0=19.0A、i2=10.6Aであるから
S=19.0/10.6=1.8
 短絡比はディーゼル発電機で1.0前後、タービン発電機で0.8程度である。特に電圧変動率が小さいことを要求する場合は1.5以上のものもある。
(3)電圧変動率の算定
 負荷時の界磁電流を求めると、電圧変動率は無負荷飽和特性曲線図2・4から次の式により求められる。
力率1.0の電圧変動率
 
 
力率0.8の電圧変動率
 
 
 ここに、
E0;定格電圧(V)
E;i3(1.0)における電圧(V)
E’;i3(0.8)における電圧(V)
 なお電圧変動率は別名、固有電圧変動率と称し、AVRを使用した電圧変動率と区別している。
2・2・8 温度試験
(1)温度試験一般
(a)目的
i)電気機器の絶縁物は、一般に、温度が高くなると絶縁特性が劣化し、寿命が短くなったり(10℃ごとに寿命が半減するといわれている)焼損したりする。
 それ故、定格負荷状態で使われる絶縁物が、その絶縁種類に応じた温度上昇限度内にはいっているかどうかを調べる。
ii)巻線だけでなく、軸受、整流子、スリップリング、鉄心、接触片、接続部なども、温度がある限度を超えるといろいろの障害を起こすので、その温度上昇を調べる。
iii)温度上昇過程中における熱時定数を求めて、機器の熱的特性を調べることもある。
iv)各試験のうちでは最も長時間定格負荷をかけて行うので、その間に各部の異常(例えば、整流状態、異常過熱部分、油、水漏れ、異常音、振動の増加など)、特に時間とともに変化してくる要素について十分調査する。
(b)各種絶縁物の許容最高温度
 絶縁物の種類に応じて許容される温度がJIS C 4003−98(電気絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価)に規定されている。表2・4はそれを示したものである。
 
表2・4 各種絶縁物の温度
耐熱クラス Y A E B F H 200 220 250
温度〔℃〕 90 105 120 130 155 180 200 220 250
 
 なお、この表に示す温度は、機器の中の最高温度の部分に許されるべき温度であって、実際に測定できる温度はこの表より低いのが普通である。
(c)温度上昇限度
 温度上昇限度とは、温度上昇と基準周囲温度との和が絶縁物の許容最高温度以下になるよう定められた温度上昇の限度をいう。つまり、各機器の温度上昇限度は、絶縁物の許容最高温度から基準周囲温度を減じた温度以下に定められているので、当該機器の設置場所の周囲温度が基準周囲温度を上回っている場合は、その超過する温度を規定の温度上昇限度から減じた値がその機器の温度上昇限度となる。
 各電気機器の温度試験において、合否の判定基準になる温度上昇限度は、一般に、回転機に対しては表2・5及び表2・6に示す値以下と規定されている。ただし、船舶設備規程とNK規則とでは基準周囲温度が相違していることに注意すること。
 
表2・5 回転機器の温度上昇限度表(船舶設備規程)
機器の部分 型式 温度上昇限度(摂氏・度)
A種絶縁のもの B種絶縁のもの
温度計法による 抵抗法による 温度計法による 抵抗法による
交流機回転子巻線 全閉形以外のもの 50 60 70 80
全閉形 55 65 75 85
整流子をもつ 全閉形以外のもの 50 70
電機子の巻線 全閉形 55 75
絶縁を施した 全閉形以外のもの 50 60 70 80
回転子巻線 全閉形 55 65 75 85
直流を通じる界磁巻線 一般のもの 全閉形以外のもの 50 60 70 80
全閉形 55 65 75 85
露出した 全閉形以外のもの 60 60 80 80
平打巻 全閉形 65 65 85 85
円筒回転子形交流タービン発電機 90
鉄心その他の部分で絶縁巻線に近接した部分 全閉形以外のもの 50 70
全閉形 55 75
絶縁されない短絡巻線、鉄心その他の機械的部分で絶縁巻線に近接しない部分、ブラシ及びブラシ保持器 機械的支援なく、かつ、附近の絶縁物に損傷を起こさない温度 
整流子及び集電環 65 85 − 
備考
1. 周囲温度が摂氏40度をこえる場所で使用するものには、その超過する温度をこの表の温度上昇限度から減ずるものとする。
2. 整流子又は集電環にB種絶縁を施した場合であって、A種絶縁を施したものがこれに極めて接近しているときは、その温度上昇限度は摂氏65度とする。
 
表2・6 回転機の温度上昇限度(℃)(NK規則)
(基準周囲温度の限度45℃)
回転機の部分 A種絶縁 E種絶縁 B種絶縁 F種絶縁 H種絶縁
温度計法 抵抗法 埋込温度計法 温度計法

埋込温度計法 温度計法

埋込温度計法




埋込温度計法 温度計法

埋込温度計法
1 交流機固定子巻線 45 55 55 60 70 70 65 75 75 80 95 95 100 120 120
2 絶縁された回転子巻線 45 55 60 70 65 75 80 95 100 120
3A 多層界磁巻線 45 55 60 70 65 75 80 95 100 120
3B 絶縁された単層界磁巻線 55 55 70 70 75 75 95 95 120 120
3C 露出した単層界磁巻線 60 60 75 75 85 85 105 105 130 130
3D 円筒形回転子を有する同期機の界磁巻線 85 105 120
3E 低抵抗界磁巻線及び補償巻線 55 55 70 70 75 75 95 95 120 120  
4 鉄心そのほかの機械的部分で絶縁した巻線と近接した部分 55 70 75 95 120  
5 絶縁されない短絡巻線、鉄心そのほかの機械的部分で絶縁した巻線に近接しない部分、ブラシ及びブラシ保持器 機械的に支障なく、かつ、附近に絶縁物に損傷を与えない温度
6 整流子及びスリップリング 55 65 75 85 95
(備考)
1. 全閉形回転機の項1、2及び3Aを温度計法で測定する場合は、表の数値より5℃高い温度とする。
2. 誘導機の項1及び項2は温度計法によらないこと。
3. 整流子又はスリップリングに高級な絶縁物が使ってあってもこれに極めて近接した巻線部分に低級な絶縁物のある場合には、低級な絶縁物に対する温度上昇限度による。
4. 回転機の同一部分に対して、数種の温度測定法が与えてあるが、これは同一部分の温度を二つ以上の方法(例えば、温度計法と抵抗法)で測定することを意味するものではない。
5. 交流機固定子巻線では、5,000kW(又はkVA)以上のもの、又は固定子鉄心の長さ(通風ダクトを含む。)が1m以上のものに対しては、原則として埋込温度計法を適用する。







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