(2)充放電盤
船舶で使われる蓄電池(二次電池)はほとんど鉛蓄電池であり、その充電方法には定電流充電法、定電圧充電法、別段充電法などがあり、充放電方式としては交互充放電方式、浮動充電方式があるが一般的には浮動充電方式がよく採用され、これらの充電方法及び充電方式について概説する。
(a)定電流充電法
終始一定の電流で充電し、普通8時間率以下の小電流で行う。
(b)段別充電法
まず3〜5時間率の充電電流とし、端子電圧が約2.4〜2.5Vになると電流を少なくし、再びこの電圧に達するとさらに電流を下げ、終期には10〜20時間率で充電する。
(c)定電圧充電法
電池1個につき2.2〜2.5Vを加え、その電圧を保ちながら充電する。
(d)浮動充電方式
電池を充電用機器と並列に接続し、電池1個当り2.15〜2.20Vの電圧を加え、自己放電を補う程度、すなわち、10時間率の0.3〜1%の電流で充電し、つねに充電状態とする。連続負荷と電池の自己放電は充電用機器から供給し、瞬間的の大電流は電池から供給する。船舶ではこの方法が広く採用される。(図2.7参照)
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図2.7 浮動充電回路例
注. 1. 均等充電とは蓄電池が何個かの単電池を組にして使っているため長時間使用していると特に浮動充電時に単電池電圧にバラツキを生じる。
このバラツキを無くするために定電流法又は定電圧法により蓄電池の電圧及び比重が上り切るまで行う充電方式である。
2. 電圧ドロッパーは、均等充電時に蓄電池の端子電圧が定格値(24V)より高くなるのでそのままでは負荷に悪影響を与える危険があるので負荷への給電電圧を定格値に保つように電圧を降下させる目的で装備されたものである。従って均等充電が終了し浮動充電にもどした場合はドロッパーに並列に挿入された接点は“閉”としてドロッパーをバイパスさせなければならない。
(e)交互充放電方式
2群の蓄電池のうちの1群を充電している間、他の1群で負荷に給電する方式で2群の蓄電池は充電、放電の切換が可能となっている。(図2.8参照)
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図2.8 交互充放電回路例
なお、無線用蓄電池は通常一群であり、かつ主電源が生きている間は通常蓄電池には負荷はかかっていないので蓄電池の自己放電のみを補う細流充電(トリクル充電)方式が一般に採用されている。
船舶で使われる蓄電池は、ほとんど鉛電池であり、その放電特性と充電特性は図2.9及び図2.10のとおりである。
充電時の電圧の変化は、図2.10のように2.4V付近までは徐々に上り、その後は急激に2.75〜2.95Vに達し、電圧の上昇が止まったとき(図2.10の13h付近)を充電完了のときとみなせる。
図2.9 鉛蓄電池の放電特性
図2.10 鉛蓄電池の充電特性
アルカリ蓄電池は、正極に酸化ニッケル、負極にカドミウム又は鉄を用い、アルカリ水溶液を電解液とした蓄電池がある。
負極にカドミウムを用いた電池をユングナー電池(ニッフェ電池)、鉄を用いた電池をエジソン電池といい、通常、前者のNi−Cdアルカリ蓄電池が多く用いられる。その充放電特性を図2.11に示す。
図2.11 アルカリ蓄電池の充放電特性
蓄電池充放電盤には、電圧計、電流計、保護装置(逆流防止装置を含む)、整流装置などが組み込まれる。
整流器の電流容量は、それを決定するための決め手になるものはないが、一般には蓄電池容量(Ah)を時間率で割った値に適当な余裕を持たせた容量としている。例えば200AH2群の鉛蓄電池が交互充放電される場合には200AHを10時間率で割った20〔A〕に10〔A〕の余裕を加えて30〔A〕とし、また2群同時に浮動充電される場合には400AHを10時間率で割った40〔A〕に10〔A〕の余裕を加えて50〔A〕とする。
また整流器の電圧は蓄電池1群の定格電圧が24〔V〕の場合、充電終期において鉛蓄電池の場合は約33.6〔V〕まで、アルカリ蓄電池の場合は約34.2〔V〕まで電圧を上昇させるため、35〔V〕の定格とするのが一般的である。
また、外洋航行船及び国際航海に従事する総トン数500トン以上の漁船で充放電盤が非常配電盤として使用される場合には、非常電気設備の適用を受けるので、充放電盤は船の全通甲板の上方で機関室囲壁の外側に設置することが要求される。
その他、非常発電機を装備した場合の非常配電盤も含めて、本船に適用する諸規則が非常電気設備に対して要求する諸事項を総て考慮に入れて設計しなければならない。
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