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8・4 絶縁材料
 絶縁材料は電気機器の構成上重大な死命を制するものであって、その良否は機器の寿命のみならず性能にも影響すること多大である。使用される物質は気体、液体、固体の3体があって、これにはさらに天然物、合成物等に分類され今日ではその種類は多岐多様にわたっている。
 以下、絶縁材料の組成上の分類と、絶縁材料として具備すべき性質などについて述べる。なお、船舶電気機器においては気体、液体の絶縁物は使用していないので本書では省略する。
 
8・4・1 絶縁材料の分類と電気絶縁の耐熱クラス
(1)絶縁材料の組成上の分類
 
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(2)電気絶縁の耐熱クラス
 旧版「JIS C 4003−1977」の基礎となったIEC 60085:1957が、1984年に大幅改正されたのに伴い、IEC規格と整合させた新版「JIS C 4003−1998」が発行された。
 この新版は旧版に、相当大幅の改正が加えられており、定義などを正しく理解する必要があるので、その概要を次に示す。
(a)定義
イ. 電気絶縁:電気製品に使用されている絶縁材料及び絶縁システム。
ロ. 耐熱クラス:電気製品を定格負荷で運転したときに許容できる最高温度を基にして決めた電気絶縁の耐熱クラス。
ハ. 温度:絶縁の実際の温度。
ニ. 絶縁システム:電気製品において、導体と組み合わせている単一の絶縁材料の組合せ。
ホ. 電気製品:耐熱クラスの指定が必要な絶縁を用いたすべての電気製品。
(b)改正された主な項目
イ. 旧版では、機器絶縁では、Y種、A種、E種、B種、F種、H種及びC種絶縁に区分され、各種絶縁に使用し得る「絶縁材料表」が参考として例示されていた。
ロ. 新版では、電気絶縁の耐熱クラスは、それぞれ耐熱クラスY、A、E、B、F、H、200、220、250、また250℃を超える温度は、25℃間隔で増し、それに対応する温度の数値で呼称する。
 なお、「絶縁材料表」が削除され、適切な使用経験(電気絶縁システムの破壊がある場合又はない場合の使用に関する定量的又は定性的な記録のこと。)又は適切な試験によって絶縁の耐熱性を評価し、耐熱クラスを指定することが決められている。また、適切な絶縁材料及び絶縁システムを選択し、耐熱クラスを指定するのは電気製品の製造業者の責任となった。
(c)新版(1998年版)と旧版(1977年版)との相違点を次表に示す。
 
  旧JIS C 4003 新JIS C 4003 
表題 電気機器絶縁の種類 電気絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価 
適用範囲 電気機器絶縁の種類について規定している。  電気製品の絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価について規定している。 
耐熱クラス 機器絶縁は、その耐熱特性によって、Y種、A種、E種、B種、F種、H種及びC種に区別する。
絶縁の種類 許容最高温度(℃)
Y 90
A 105
E 120
B 130
F 155
H 180
C 180を超えるもの
電気絶縁の耐熱クラスは、その電気製品を定格負荷で運転したときに許容できる最高温度を基に決める。
耐熱クラス 温度(℃)
Y 90
A 105
E 120
B 130
F 155
H 180
200 200
220 220
250 250
250℃を超える温度は25℃間隔で増し、それに対応する温度の数値で呼称する。
絶縁材料と絶縁システムの区別 絶縁システムを機器絶縁と称しているが、絶縁材料との区別は必ずしも明確ではない。 絶縁システムの定義が与えられており、明確である。また絶縁材料の組合せによる耐熱性へ及ぼす影響についても考慮している。
電気絶縁の耐熱性に及ぼす使用条件の影響 触れていない。 雰囲気、負荷などによる影響を考慮している。
絶縁材料及び絶縁システムの選択及び耐熱クラスの指定 各種絶縁に使用し得る絶縁材料表が参考として例示されている。ただし、使用した材料が当該絶縁の種類に該当するか否かは機器製造業者自身の責任において確認すべきものである。 適切な絶縁材料及び絶縁システムを選択する責任は、その電気製品の製造業者にある。また適切な使用経験に基づき、又は適切な試験を実施することによって、その絶縁の耐熱性を評価し耐熱クラスを指定する責任も、電気製品の製造業者にある。
絶縁材料の耐熱性評価方法 触れていない。 絶縁材料の耐熱性評価方法としてIEC60216:1990を参照すること、また、耐熱グラフ、温度指数、相対温度指数及び半減温度幅の定義が役立つことが、述べられている。
電気絶縁の耐熱クラスの指定 当該絶縁の種類相当するか否かを電気機器製造業者自身の責任において確認すべきものである。 電気製品における絶縁材料又は絶縁システムが、適切な試験又は適切な使用経験によって、特定の用途において特定の温度で使用できることが検証されたなら、耐熱クラスの中から、適切な耐熱クラスを指定できる。







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