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2. 磁気と電気
2・1 磁界の強さと方向
 磁界線の存在する空間を磁界といい、この中で磁極間の力の作用及び大きさについては、1・2のクーロンの法則で述べたが、ここではこの法則を応用して、磁界中に、ある磁極をおくとき、これに作用する力、即ち、磁界の強さの大きさ及びその方向について述べよう。
 
図2・1
 
 上記の現象を図示すれば図2・1のとおりである。磁石のN極からS極の方向に磁力線が出ているとして、この磁界中に+mなる磁気量の磁極をおいたとき、その磁界の強さと方向は、図のとおりN極からの反発力とS極からの吸引力の合成されたベクトル量の強さであって、その方向は図のとおりとなる。
 そこで、磁界の強さHの単位〔単位記号A/m又はAT/m〕は、1〔Wb〕の単位磁気量の磁極を磁界中においたとき、これに働く磁力が1〔N〕であるような磁界の強さの単位をいうと定義づけられているから、
 
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 よって、磁極に働く力 F=m・H〔N〕・・・(2・1)
 そこで、図2・2の場合について、さらに考えよう。
 
図2・2
 
 +m〔Wb〕の正磁極からr〔m〕のところのA点における磁界の強さを求めるには、A点に1〔Wb〕の正磁極を置いたと仮定して、これに働く力がF〔N〕であれば、A点の磁界の強さHは(2・1)式から、m=1として、H=F〔A/m〕となる。また、(1・1)式をこれに代入すれば、
 
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 次に、磁界の方向は、図のとおりmとA点とを結ぶ線上にあって、mが正極であればm極からA点に向い、負極であればA点からm極に向う。
〔例題〕 (1)空気中において磁界の大きさHが10〔A/m〕の点に8×10−3〔Wb〕の磁極を置くと、この磁極に何ニュートンの力が働くか。
〔解〕 (2・1)式を利用して
F=Hm=10×8×10−3=8×10−2〔N〕
〔例題〕 (2)真空中で6×10−5〔Wb〕の磁極から10〔cm〕の距離にある点の磁界の大きさは何A/mとなるか。
〔解〕 (2・2)式を利用して
 
 
2・2 磁力線・磁束・磁束密度
 1〔Wb〕の磁極からは、何本の磁力線が出ているかを計算しよう。
 
図2・3
 
 図2・3において、+m〔Wb〕磁極からこれを中心として各方向に均等に磁力線が出ていると考える。
 いま磁極を中心とする半径γ〔m〕の球面を想定し、この球面上の任意の点aの磁界の強さH〔A/m〕は、球面上のその点におかれた1〔Wb〕の正磁極に働く力を求めればよいから(2・2)式によって
 
 
 となる。ところが、磁界の強さH〔A/m〕の点では1〔m2〕当たりH〔本〕の磁力線が通るものとしてあるから、球面全体に通る磁束を求めるには球の表面積(=4πr2)にHを乗ずればよい。即ち
 
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2・3 電流の磁気作用と電磁石
2・3・1 アンペアの右ねじの法則
 
図2・4
 
図2・5
 
 図2・4は紙面上に鉄粉を薄くまいて、これと直角なる方向に導線を通して、電流を上から下へ流した図である。このようにすれば鉄粉の配列は図のように同心円状に変わる。
 この現象をしらべると、図2・5に示したように(a)図のの印は紙面の表から裏へ向う電流を示し磁界の方向は時計の針の回る方向に、(b)のの印は紙面の裏から表へ向う電流を示し磁界の方向は時計の針の回る方向と逆になるこの事実をアンペアの右ねじの法則という。
 すなわち「電流の方向を右ねじの進む方向にあわせると、その電流によって生じる磁界の方向は、右ねじの回転方向と一致する」
 この関係を図示すれば図2・6(a)、(b)となる。
 この法則は1820年フランスのアンペアが発見し発表したものである。それ故アンペアの右ねじの法則という。
 
図2・6
 
2・3・2 直線状電流による磁界
 
図2・7
 
 図2・7において、I〔A〕の電流が流れている直線状の導体から、γ〔m〕の距離にある点Pにおける磁界の強さH〔A/m〕を求める。この考え方は半径γ〔m〕の円周に沿ってH〔A/m〕が一定であって、磁界の方向は、その円周の切線の方向とみる。
 この場合 H×(半径γの円周)=H2πγ・・・(2・4)
となる。
 よってH2πγ=I・・・(2・5)
 これからHが次のように求められる。
 
 
2・3・3 円形電流による磁界
 図2・8(a)、(b)によってわかるように円形電流によって右ねじの法則に従う磁界ができる。すなわち、上記右ねじの法則において電流と磁界との関係を取り替えて考えればよいから電流をねじの回る向きにとれば、磁界はねじの進む方向に生ずることになる。
 
図2・8
 
2・3・4 起磁力
 
図2・9
 
 図2・9のように、鉄心にコイルを巻いて電流Iを流せば、2・3・3のように磁力線ができ、また、鉄心も磁化されるこの場合、強い電磁石となる。
 この鉄心に生じる磁束はコイルの巻数Nと流れる電流I〔A〕との積NIに比例する。
 NIは磁束を生じる能力を表すからこれを起磁力といい単位にはアンペア〔単位記号A〕を用い、また、アンペア回数〔単位記号AT〕も用いる。
 
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2・3・5 電磁力、電流力、フレミングの左手の法則
(1)電磁力・フレミングの左手法則
 
図2・10
 
 図2・10のようにN極、S極間の磁界中に導体をおき、これに電流を紙面の裏から表に向かって流せばこの電流に作用する力(電磁力)が働き、図の場合導体は上方に動くことになる。
 1885年イギリスのフレミングは、磁界の方向、電流の方向と電磁力の方向の関係について、左手の法則の考えを示したこれをフレミングの左手の法則という。
 次にこの関係を図示して説明する。(図2・11(a)、(b)参照のこと。)
 
図2・11 フレミングの左手の法則
 
 「左手の親指、人さし指及び中指を互いに直角に曲げ、人さし指を磁界の方向(B)に、中指を電流の方向(I)に向けると親指の方向(F)が電磁力の方向を示す」ことになり電動機の回転する原理はこれによって説明することができる。
(2)電磁力の大きさ
 
図2・12
 
 電磁力の大きさは次のように定めてある。「磁束密度が1〔Wb/m2〕の磁界中で、磁界と直角方向にI〔A〕の電流が流れる導体があるとき、その導体の単位長1〔m〕当たりに働く電磁力は1〔N〕(ニュートン)である」としている。
 図2・12において、F=BlI〔N〕が上記の電磁力Fの値であるが、図ではlの長さの導体が、磁界に対して直角になっていないから、直角に計算上なおす関係で、lsinθとすれば点線で示したlの長さになる。よって一般的な式として、次の式が電磁力となる。
F=BlIsinθ〔N〕・・・(2・7)
B=磁束密度〔Wb/m2
l=導体長さ〔m〕
I=アンペア〔A〕
(3)電流力
 
図2・13
 
 図2・13において(a)は導体A及びBに流れる電流が何れも同方向であり、(b)は導体Aと導体Bとでは流れる電流方向が互いに逆方向である。
 この場合(a)では両方の導体は吸引し、(b)では両方の導体は反発する。このように平行導体間に流れる電流間に働く電磁力を特に電流力という。
 これは、一方の電流がつくる磁力線(図ではA導体による。)と他方の電流(図ではB導体)との間の電磁力の作用と考えてよい。
 応用例として短絡時の母線間の電流力及び電流力計形計器等がある。







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