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(5)サイリスタ
 サイリスタはスイッチング(遮断から通電へまた、その逆の切換)の動作ができる半導体素子の総称で、P形及びN形半導体が4層あるいは、それ以上から成っており、2端子、3端子、4端子のものがある。また、一方向だけ通電するものと、2方向のどちらへも通電可能のものとがあるので、その中でシリコン制御整流素子と呼ばれる一方向性逆阻止3端子のサイリスタが最も広く使用されており、通常SCR(Silicon controlled rectifier)と略称されている。SCRはサイリスタの代表的なものとなっているので、単にサイリスタと言うと、SCRを指すことが多い。SCRは素子で数千KWの大電力の整流用のものまで出来るようになった一方向性導通素子で、図2.75に示すようにP形とN形の半導体が交互に配列した4層の半導体から成り、陽極(アノード、A)陰極(カソードK)ゲート(G)の3端子を持つ。これを動作させるにはアノードに順方向の電圧を加えただけでは導通せず、第3電極であるゲートにパルス電流信号を送ることによって初めて導通状態となる。次にアノードにかかる電圧を零にするか、負電圧をかけてやれば電流は流れなくなり、非導通の状態となる。このようにSCRが導通の状態に移ることを点弧又はターンオンと呼び、導通から非導通の状態に変ることをターンオフと呼んでいる。SCRの電圧対電流特性を例示すると図2.76のように順方向の阻止電圧特性(電圧を加えても電流を流さない特性)はゲート電流が零の状態で最も高く、この最大電圧をブレークオーバ電圧と呼ぶが、ゲート電流が大きくなるほど、ブレークオーバ電圧は低下する。したがって、ゲートパルス電流が大きいほど、容易にターンオフできることを示している。
図2.75 SCRの基本構造(一般的に使用されるPゲートSCRを示す。)
 
 いったん導通後、SCR負荷電流が減少して、ある一定値以下になるとSCRはターンオフする特性をもっており、この最少電流を保持電流と呼んでいる。
 SCRの順方向電圧低下(導通時の電圧降下)は普通1ボルト程度、接合部の許容温度は100〜150℃で、微妙な時間間隔で電流遮断を行わせる時の注意すべき特性の一つであるターンオフ時間(逆電圧を加えてターンオフさせる時、再び順方向に電圧を加えてもターンオフしない最少の時間間隔)は約1/10,000秒である。
 SCRは小形、軽量で、電力損失が少なく、また、高速で動作し、その上制御が容易なため、インバータ(直流から交流への電力変換装置)や、コンバータ(交流から直流への電力変換装置)の電力変換素子として大いに活用されているが、次のような弱点も持っているので適用に当っては、電圧、電流、温度等についての指定された限度を守るよう注意を払うことが必要である。
(a)温度が高くなるにしたがって逆阻止時(逆方向の電圧がかかっている時)の電流が増加すると共にある温度限界を超えると、急速に順方向のブレークオーバ電圧が低下し、SCRとしての機能をも失ってしまう。
(b)ゲートに点弧信号が無い時に、ブレークオーバを超すような順方向の過大電圧が加わると破壊することがある。
(c)逆方向に過大な電圧を加えると、逆電流急増により全く使えなくなるまでに破壊される。
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図2.76 SCRの電圧、電流特性
 
図2.77 SCRの構造
(6)GTO
 GTOはGate Turn Off Thyristor(ゲートターンオフサイリスタ)の略で、その基本構造はサイリスタと同様にPNPNの4層より成っており、陽極、陰極、ゲートの3端子を持っているが、ゲートターンオフができる特徴を有している。GTOは陽極に電圧がかかったままでゲート信号により、即ちターンオンにはゲートに正のパルスを、ターンオフにはゲートに負のパルスを印加することによって電流のオンオフを行うことができる。
(7)ユニジャンクショントランジスタ
 ユニジャンクショントランジスタ(UJT)はオンオフ制御動作を行う代表的な回路素子である。UJTにはエミッタ、ベース1及びベース2とよばれる3つの端子があり、図2.78に示す如く、それぞれE、B1及びB2の記号で表示される。
 UJTのB1−B2間に一定の直流電圧VBBを加えておき、E−B1間にはエミッタ電圧VEを加える。VEがある一定電圧VPより低いときは、エミッタにはごく僅かの漏れ電流が流れるだけで、実用的には遮断されオフ状態に保たれる。ところでVEがVPの値に達すると、エミッタ電流は急激に増加すると共に、E−B1間の抵抗は極度に低下し導通状態となる。即ちUJTはターンオンする。オン状態でVEが下りエミッタ電流がある一定以下になると再びオフ状態に復帰する。UJTはこの特性を利用してサイリスタの点弧回路に広く用いられている。
図2.78 UJTの基本回路図







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