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国連危険物輸送専門家小委員会
第21回会合議事概要報告
 
1. 会期、参加国、議題及び議長等
 
1.1 会期及び開催場所
会期:平成14年7月1日〜10日
場所:国連欧州本部(Palais des Nations、ジュネーブ)
 
1.2 参加国等
1.2.1 国及び国際機関
(1) 委員国:アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリー、日本、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国及び米国(出席:22カ国、欠席:チェコ、インド、イラン及びモロッコ)
(2) オブザーバー国:バハマ、ブルガリア、ナンビア、ポルトガル及びスイス
(3) 国連専門機関及び政府間機関:EC、IAEA、ICAO、ILO、IMO、OTIF、UNEP及びWHO
非政府国際機関:ABSA、AEGPL、AISE、DGAC(旧HMAC)、EIGA、FEA、FIATA、GCA、CP、ECMA、IATA、ICCA、ICCR、ICDM、ICPP、ICIBCA、ICPP、IRU、ISO、SEFEL及びUIC
 
1.2.2 わが国からの参加者(敬称略・五十音順)
岩間俊之(日本曹達(株))
上原陽一(横浜国立大学名誉教授)
遠藤秀雄(経済産業省原子力安全・保安院保安課)
北林邦彦(国土交通省海事局検査測度課)
小林義彦(東北東ソー(株))
中島紀昭(全日本火薬類保安協会)
畑中修二(日本煙火協会)
八十川 欣勇(国連危険物輸送専門家小委員会委員・日本海事検定協会)
山下敏幸(日本曹達(株))
 
1.3 議題の採択及び議長等の選出
1.3.1 議題の採択
第20回小委員会の予定議題(ST/SG/AC.10/C.3/41)は、期限後送付されたINF. Paperを今回会合文書に含めることを承認して採択された。
1.3.2 議長等の選出
第20回委員会(2000年12月)において今次2年間(2001〜2002年)の議長及び副議長としてMr. S. Benassai(イタリー)及びMr. F. Wybenga(米国)がそれぞれ選出されており、この二人がそれぞれ議長及び副議長に就任した。
 
 
1.4 検討結果
1.4.1 今回会合における各提案に対する検討結果は、資料UN2S−15−3及びUN2S−15−4の夫々の結果欄に示した。
 
2. ガス輸送に関する追加規定
 
2.1 W/G報告書
2.1.1 ガス輸送に関する追加規定の検討は、本会議と平行して開催されたW/Gにおいて検討された。W/Gは前回会合で採択されたガス輸送規定案を基に、各国提案を検討し、その結果を報告書として本会議に提出した。本小委員会はW/Gの検討結果を承認した。
2.1.2 承認されたガス輸送規定案は、次回会合においてW/Gを設置して最終的な見直しを行うことが承認された。
2.1.3 引火性ガスの定義の改正に関するEIGA提案(02/53)は、支持が得られず採択されなかった。これに伴いEIGAは同内容の3SCEGHSへの提案(C.4/02/5)を取り下げた。
 
3. 爆発物、自己反応性物質及び有機過酸化物
3.1 煙火の分類
3.1.1 煙火の分類に関する検討は、本会議と平行して開催されたW/Gにおいて検討された。W/Gは昨年10月ハーグで開催されたW/G報告書(02/1)を基に、本件に関するわが国、米国等の提案を検討し、その結果を報告書として本会議に提出した。
3.1.2
寸法のみによるDefault Classification System(DCS)の趣旨に賛成したDefault表の一部改正を内容とするわが国提案は、W/Gにおいて内蔵する成分及び寸法に条件が付けられて合意された。しかし、W/G報告書自体が本会議で承認されなかったことから、わが国提案も今回会合での決定はなったこととなる。
3.1.3
本会議においてW/G報告書で問題となった主な点は次のとおりである.
 (1)区分1.4をDCSに含めること
 (2)DCSのパラメータ(寸法、内蔵物質の重量、種類等)
 (3)“Roman candles”及び “Rockets”の等級区分(1.3/1.4)
3.1.4 本会議における票決の結果、W/G報告書は承認されなかった。本件は、次期2年間(2003/4)の作業計画に含めることとが合意された。
3.1.5
わが国は今回会合に寸法のみのパラメータに基づくハーグW/GのDefault表の趣旨を支持して同表の一部修正を提案し、それが一部修正の上W/Gで認められはしたが、一方ではW/Gにおいて内蔵物質の重量、種類等もDCSの重要なファクターであるとの意見表明をしている。本件に対するわが国態度が若干混乱しているのではないかとの声も聞かれるところから、今後その対応を十分検討する必要があると考えられる。
 
3.2 硝安エマルジョン、懸濁物及びゲル
3.2.1 硝安エマルジョン、懸濁物及びゲル(ANE)の分類に関する検討は、本会議と平行して開催されたW/Gにおいて検討された。W/Gの検討は18SCETDGの報告書の関連部分及び試験結果を例示として試験マニュアルに採り入れるとするわが国提案(02/22)をはじめ10件のINF. Paperを基に行われ、その結果を報告書として本会議に提出した。本小委員会はこのW/G報告書を承認した。
3.2.2
W/Gの主な検討結果は、次のとおりである。
(1)Vented Pipe Test(VPT)(試験シリーズ8(d))は、ANEの分類(区分1.5又は5.1)判定試験としてではなく、金属容器及びタンクによる輸送の可否を判定するための試験に限定することが同意された。この試験のガイドラインについては豪州が準備した内容を今後検討することとなった。
(2)試験結果を例示として試験マニュアルに採り入れるとするわが国提案(02/22)は、“ANE-J3”を削除し、若干の文言の修正を加えて採択された。
(3)ANE(UN0331, UN0332及び3375)を金属容器及びタンクによる輸送する場合の新タンク特別規定(TP)を4.2.5.3項に加える。
 
3.3 新UN圧力容器試験の開発
3.3.1 新UN圧力容器試験に関してスウェーデンから、試験マニュアルに示されているオランダ及び米国の圧力容試験に基づく試験結果を紹介する提案(INF.17)が出されていたが、時間的関係から次回への正式提案文書とされた。
 
3.3 関連提案
3.3.2 有機過酸化物の容器及び有機化酸化物表に関する米国及びICCAの提案は、いずれも修正の上採択された。
 
4. コンテナによる固体物質輸送
4.1 独/英が作成した固体危険物のばら積み輸送規定の修正版(02/29)は、小W/Gにおいて検討され、その結果が小委員会において採択された。この規定は、モデル規則の「4.3 バルクコンテナの使用」及び「6.8 バルクコンテナとして使用する貨物コンテナの設計、構造、 検査及び試験に関する要件」が新設され、関連規定の改正が行われる。
 
4.2 感染性病原物質のばら積み輸送に関する英国提案(02/30)については、病死した動物のばら積み輸送等は関係する国が承認すればよいとする反対意見と、モデル規則は国際輸送規則のみならず国内輸送規則のモデルともなるので考慮すべきであるとの賛成意見があり、英国は次回修正提案を出すことを申し出た。各国には本件に関する意見を文書で英国に提出することが要請された。
 
5. タンク
5.1 関連提案(第4.2及び6.7章)
5.1.1 固体物質のタンクによる輸送についての米国提案(02/33)については、溶融状物質に関する問題(温度、輸送中の固体状化等)が提起され、小グループでの検討を踏まえ米国が次回修正提案を出すことを申し出た。各国には本件に関する意見を文書で米国に提出することが要請された。
 
6. 容器(小型、中型及び大型)
6.1 性能試験
6.1.1 振動試験
  振動試験に関しては、この試験をモデル規則に採り入れるとする以前の小委員会決定にも拘らずこれに反対を表明する国や業界団体があり、米国提案(02/17)については、米国が修正提案(型式承認試験ではなく、適合性試験(capability test)としてその適合性を使用者が担保するとするもの)を提出したが多数の賛同を得られず、票決の結果8:8の同数で提案は採択されなかった。
6.1.2 振動試験方法に関する米国提案は否決されたものの、モデル規則に振動試験を採り入れるとする小委員会決定が否定されたわけではなく、米国は次回に振動試験に関する新提案を提出することを表明した。
6.1.3
貫通試験
  輸送中における容器への損傷を考慮して容器に貫通試験を課すべきとするスペイン提案(02/4)については、モデル規則の容器試験は通常輸送条件を考慮して策定されており事故時条件は考慮に入れるべきでないとするわが国意見やこの試験を採り入れるためには輸送中の事故データの解析が必要であるとの意見が多数を占め、本件を12月の会合で次期2年間の作業計画に含めるか否かについて検討することとした。
 
6.2 関連提案(第4.1、6.1、6.5及び6.6章)
6.2.1 本議題に関する提案は、大型容器の使用に関する英国提案(02/14)が不採択となったのを除き、他の提案は採択(修正されたものを含む。)された。
 
7. 感染性病原体等の輸送(第6.2章の見直し)
7.1 本年3月開催された感染性病原体等の輸送規定(第6.2章) の見直しに関するW/G報告書(カナダ:02/16)に基づいて検討され、輸送規定案が修正の上採択された。
7.2 遺伝子組替え微生物等の規定に関する米国提案(02/34)は、修正を加えて採択された。この提案では遺伝子組替え食品及び飼料の適用除外についての若干の議論がなされたが、米国提案どおりこれらの適用除外が同意された。
 
8. 危険物の分類
8.1 物理的性状による国連番号、正式品名及び包装方法の決定方法
8.1.1 本件に関してはオランダ/ドイツ共同による総合改正案(02/44)に基づいて検討が行れ、タンク基準(第10及び11欄)やSP223の適用等に若干の議論があったが、ドイツの強い要請もあり、小W/Gによる検討に基づき若干の修正を加えることを条件に採択された。
 
8.2 関連提案(第2及び3部)
8.2.1 次亜塩素酸カルシウム
(1) 次亜塩素酸カルシウム(CHPC)の輸送には温度管理が必要であるとするドイツ提案(02/5)に対しては、わが国はこれの修正を求める日本提案(INF.8)を提出していた。本件検討に先立ち、わが国、ドイツ、DGAC(米国)及びICCA(オランダ)がAd Hocグループによる検討を行った結果、日/米/欧によるCHPCのラウンドロビンテストを実施し、その結果に基づいて本物質の温度管理の必要性について改めて検討することが同意された。
(2) この同意に基づきドイツは、具体的な温度管理要件を削除し、腐食性副次危険についても腐食性の基準に適合する場合とする等の修正したものを本会議に提案した。
(3) わが国はドイツの修正案に同意し、わが国提案(INF.8)を取り下げた。今後、同一試料による日米欧間でのラウンドロビン試験の結果を基に検討することとなった。
(4) 錠剤状CHPCに関する南ア提案(02/41)は、修正の上採択された。
8.2.2 吸入毒性物質の要件に関する米国提案(02/24)は、一部修正の上採択された。これに伴い吸入毒性物質に係る10のN.O.S.エントリー(UN3381〜UN3390)が加えられた。
8.2.3 有機金属物質の分類手順に関するICCA提案(02/25)については、分類手順に関する提案は一部修正の上採択されたが、既存のエントリーの削除は同意されなかった。
 
8.3 クラス8、PG IIIに属する液体及び固体物質の鋼及びアルミに対する腐食性基準
8.3.1 具体的な金属腐蝕牲試験に関するドイツ提案(02/6)は、小W/Gによる詳細検討結果に基づき検討されこれが採択された。新金属腐蝕牲試験法は、試験マニュアル37.4項に“TEST METHODS FOR CORROSION TO METALS”として加えられる。この試験は、皮膚に対する腐蝕性試験(OECD Guideline 404)において腐蝕性ありと判定された物質については行う必要はないとしている。
 
9. IAEA 放射性物質安全輸送規則との調和
9.1 1996年版IAEA放射性物質安全輸送規則改正案(2003年版)のモデル規則への採り入れに関するIAEA提案(02/55)は、一部修正の上採択された。IAEAでのこの改正案の最終承認はまだ行われておらず、一部修正が行われる予定であることが報告された。
9.2 放射性物質であることの表示として現在三葉マークがその形象として用いられているが、IAEAではこの形象が放射性物質の危険性を示していることを一般公衆が知らないことが多いので、新しい形象の検討を行っていることが報告された。これに対し本小委員会では、輸送の分野では三葉マークはよく知られた形象であり、一般にも周知の形象であるとの意見が多数を占めた。
 
10. モデル規則改正関連規則
10.1 フランスは、モデル規則の一部の適用が除外される少量危険物の危険性に関する研究経過を報告した(02/47)。この研究では、少量危険物による輸送においては、被災危険を制限することは出来るが、危険性そのものを軽減できるものではなくそれは総量を制限すること、容器要件を厳しくする、容器等級による適用を見直す等の提言を行っている。
 
11. 化学品の分類及び標札に関する世界的調和システム
11.1 環境有害物質規定の主として編集上の修正に関するイタリー提案(02/51)は修正の上採択され、水質汚濁物質分類の原則に関するオランダ提案(02/52)は次期2年間の検討事項として持ち越された。
 
12. その他の事項
12.1 危険性識別用コード
12.1.1 危険牲識別及び緊急時措置のための危険性識別用コードの世界規模における調和に関するUIC提案(02/28)については、モデル規則のUN No.、標札や標識が緊急措置指針よりもむしろ危険性の伝達を目的に策定されたものであるとの視点に立ってこの種識別コードを検討すべきことが合意され、具体的提案に基づいて今後検討することとなった。
12.2 危険物輸送と安全保障
12.2.1 危険物輸送と安全保障に関する事務局提出文書(02/56)は、UNECE欧州内陸輸送委員会に提出されたADR及びANDにおける安全保障にかかわる規定及び今後の問題点を示している。ここではこれら規則の規定が間接的に安全保障に役立っているが、安全保障に関する追加規定については今後検討する必要のあることを指摘している。
12.2.2 ICAO及びIMOは、危険物輸送と安全保障に関する問題に関するそれぞれの機関におけるを検討状況を報告した。英国からの提案により本件に関するCorrepon W/Gの設置が認められ、その結果に基づき安全保障に関する規定のモデル規則への採り入れについての提案を英国が次回小委員会に提案することとなった。
 
12.3 次回会合
22SCETDG 2002年12月2〜6日
4SCEGHS 12月9〜11(AM)日
1CETDG&GHS 12月11(PM)〜13日
 
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