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4. 固体ばら積み貨物の物質評価を含むBCコードの見直し(議題4関連)
 
(1)プレナリーでの審議(WG開催前)
 前回会合のWGの報告(DSC6/WP.4)について説明がなされ、この報告について審議がなされた。
(イ)フェロシリコン
 前回WGで合意されたフェロシリコンに対する通風要件について、ノルウェーはこれまでの事故の経験に鑑み連続通風を要件とするよう強く主張し、これを独、露が支持した。我が国はこの問題については既に前回のWGで合意をみている問題であり、再度審議をするのであれば事故例のレポートを文書で提出し、それに基づいて今後審議をしてはどうかと提案した。しかしながら、豪及びキプロスもWGにて再度見直しすることを支持したのでWGで審議することとなった。
(ロ)Brown Coal Briquettes及びサルファー
 我が国は提出文書(DSC 7/4/3)に基づき、MSCサーキュラーにおけるBrown Coal Briquettesに対する消火装置の説明を修正すること及びサルファーのBCコードへの取り入れを提案した。前者についてはWGにて審議する事になったが、サルファーについては、米、バハマ、独等がこれまで十分な安全輸送の実績があり規制の必要はないと強く主張したため、WGにおいて我が国提案の趣旨の説明を再度行う事となった。
(ハ)標準的フレーズ
 蘭が提案する標準的フレーズの使用(DSC 7/4/2)については、我が国を始め多く支持があり、WGにて検討する事となった。
(ニ) カナダより提案文書(DSC 7/4/1)の説明がなされノートされた。なお、Block Loadingに関する船体強度の試計算を予めLoading Manualに含めておくとの提案は今後検討する事となった。
 
(2)WGでの審議
 仏のCapt. J-D Troyatを議長とするWGが設置された。
(イ)フェロシリコン
 我が国は当該物質の通風要件については、既に前回WGで合意をみており、新たに審議を開始するのであれば事故例等に基づいて議論再開の必然性を証明すべきであると指摘するとともに、気象海象条件に応じて通風を中止する事は安全を確保するうえから重要であると説明した。
 これに対し、ノルウェーは前回WGのレポートの本件に関する事項はプレナリーにおいて自国を始め多くの国が異論を唱え、承認されたものでない事、また事故例についてはこれまで十分な資料が提出されており、あらためて提出の必要はないとしこれを独が支持した。その後、主として我が国とノルウェー/独間の議論となったが、議長提案として、
"Continuous mechanical surface ventilation to be required. If maintaining ventilation endangers the ship or the cargo, it may be interrupted ---" (DSC 7/4 ANNEX2 3.5.2.2を引用)を提示しWGはこれを合意した。これに対し、我が国は、事故事例を明確にした上でその原因を検討し、連続通風が必要か否かを決定するべきであり、この要件が船体の構造設備に及ぼす影響を更に検討したいとして留保した。
(ロ)MSC/Circ.671の見直し
 Brown Coal Briquetteに関する我が国提案(DSC 7/4/3)に基づいて審議され、特段の議論は無く原案通り合意された。なお、サルファーについては時間の制約から次回会合にて審議する事となった。
(ハ)標準的フレーズの策定
 蘭の提案に基づき、(1)Weather Condition(3文例)、(2)Hold Cleanliness(2文例)、(3)Ventilation(6文例)の3項について標準的フレーズが合意されコードに使用することとなった。
(ニ)物質評価表の見直し
 コレスポンデンスグループの報告書(DSC6/5/1)に基づき、ALFALFAからIRONOXIDISE、SPENTまでの見直し作業及び標準的フレーズを使用してエディトリアルな修正を終了した。グループCの物質について各国にそれぞれ担当を割り振り標準フレーズを使用して見直し作業を行うこととなった。我が国は、
PIGIRON
POTASH
POTASSIUM SULPHATE
PUMICE
PYRITE
の5物質を担当するよう要請された。なお、海技研太田氏を我が国代表として登録した。
(ホ)イルミナイト輸送に関わるDSCサーキュラー(DSC 6/5/4)
 フィンランド提出のDSC 7/INF.5をベースにDSCサーキュラーを策定した。このサーキュラーは次回会合(DSC8)に提出され承認の手続をとることになる。
 
(3)プレナリーでの審議(WG開催後)
 WG議長より、口頭でWGの報告がなされた。我が国よりフェロシリコンの通風要件について再度留保の意を示し、事故報告を提出する旨要請をした。
 豪からBCコードの見直しを2003年に完了させるためには、中間会合を開催し審議する必要があるとの発言があり、仏はこれを支持したが、この開催には7月の理事会の承認が必要であるので時期的に開催は難しいと事務局から説明があった。結果、BCコードの見直し作業には多くの時間が必要との認識から、完了目標年度を2004年に延期することに合意した。
 
5. 貨物固定マニュアル(議題5関連)
 
(1)事務局提出文書(DSC 7/5)に要約されている次の事項についてプレナリーにて審議が行われた。
(イ)バラスト水の安全管理
 MSC71において、IACSは洋上におけるバラスト水の注排水作業に関連して、復原力の変動に伴う外力の変化を考慮した注意事項を貨物固定マニュアルに記載する等何らかの改正が必要ではないかと提案した。今次会合では新たな提案文書はなく、本件に関する作業の必要性の是非が検討された。バラスト水処理の具体的方法が明らかになっていないため、本議題の検討は行えないとの意見が大勢を占めたところ、バラスト水処理管理に関する規定案の最終化を待って検討を行うこととし、あわせてIACSに対し次回会合に文書を提出するよう要請した。
(ロ)貨物固定マニュアル策定ガイドライン(CSM作成指針)の改訂
 DSC 7/5/1(ノルウェー・スウェーデン)提案と同じ内容。
 
(2)ノルウェー・スウェーデン提案(DSC 7/5/1)
 ノルウェー及びスウェーデンは船長に荷送人からCTU内の貨物の固定が確実に行われていることを証明する文書の受け取り義務を課するために、貨物固定マニュアルを改正することが必要であるとする提案を行った。本提案に対し韓国が支持を表明したものの、多数の国が義務付けを行った場合の実効性に疑問を呈するとともに、船舶側に義務付けを行うより荷送人側にIMO/ILO/UN ECEガイドラインの規定をいかに遵守させるかが重要であるとの指摘を行った。また、ガイドラインの遵守率を高めるためにはコンテナインスペクションの強化や貨物収納時の検査の実施が効果的であると共に荷送人側の教育が重要である等の意見が表明された。審議の結果、小委員会は貨物固定マニュアルの改正は行わないこととする一方、上記審議の経過を踏まえMSCに対し本件に関する検討を今後どのように行うべきかアドバイスを求めることとした。
 
(3)蘭提出文書(DSC 7/INF.6)
 パリMOUで採択された貨物固定に関する集中キャンペーンの結果が報告され、ノートされた。
 
6. 海難及び事故報告とその分析(議題6関連)
 
(1)危険物関連の検査結果に関する報告
 DSC 7/6(事務局)、DSC 7/6/1(フィンランド)、DSC 7/6/4(ノルウェー)、DSC 7/6/5(英国)、DSC 7/6/6(ニュージーランド)の紹介が行われたところノートされた。
(2)海難及び事故報告
 DSC 7/6/3(独)不適切な危険物の分類、申告に係る事故報告について、DSCサーキュラーを作成し回章することが合意された。
(3)くん蒸に関する調査結果
 くん蒸に関する報告義務をばら積み船に課すための規則を各国が策定すべきであるとした文書DSC 7/6/2(ICHCA/IAPH)が審議されたところ、くん蒸に関する注意喚起のためのDSCサーキュラーを作成し、回章することが合意された。審議中、我が国は殺虫剤安全使用勧告の遵守が重要である旨指摘した。
 
7. 複合輸送モードのための訓練要件の策定(議題7関連)
 前回小委員会での合意に基づき、事務局から共同ワーキンググループの設置等に関する依頼文書がILOに送付され、それに対するILOからの返答が報告された(DSC 7/7)。同報告の中で、ILOが現在IMDGコードの規定をILO関連規定に取り入れる改正作業を行っていること及びIMDGコードの規定を取り入れた港湾関係者に関する教育訓練プログラムの策定を終了したことが紹介された。同報告を受け小委員会は本議題を作業計画から削除すると共に、ILO関連規定を留意しつつ必要があれば今後その他の議題の中で本件に関する検討を行うことに合意した。
 
8. コンテナ船部分風雨密ハッチカバーに搭載するコンテナの積付けと隔離(議題8関連)
 部分風雨密ハッチカバーを有するコンテナ船における危険物の積付・隔離要件については、MSC 67/19/9(仏)によりオープントップコンテナ船と同一の要件とすることが提案されていたが、我が国はDSC5において、部分的であるとはいえ風雨密ハッチカバーを有するのであるから、新たに適切な要件を策定すべきである旨提案し(DSC5/2/1)、各国の支持を得て前回会合(DSC6)において我が国をコーディネータとするコレスポンデンスグループが設置された。今次会合では以下の2文書が審議された。
 DSC 7/8 事務局の経緯説明。(SLF等の結果の紹介を含む。)
 DSC 7/8/1 コレスポンデンスグループの報告(日本)
(1)プレナリーでの審議(WG設置前)
 蘭は、事故が無いことを根拠として、SLF小委員会及びFP小委員会で作成されるガイドラインを遵守すれば、危険物の積付及び隔離についてはさらなる安全対策は必要ないとの考えを示した。ベルギーは、追加の安全対策を行わないのであれば、オープントップコンテナ船並と考えた方が良いとの意見を述べた。また、仏は、FP小委員会の審議結果を待って次回検討してはどうかとの意見であった。英国はFSAを実施してはどうかとの意見を示した。我が国は、事故が無いことは必ずしも安全を意味しないこと、一方、現状を考慮すればリスクの水準は耐え難い程高くないこと、FSAを実施しても現状では事故例もなくリスク解析の精度に問題があること等を指摘し、今次会合で審議した方が良いと述べた。これらの意見を踏まえて、我が国代表団の太田氏を議長とするWGが設置され、SLF小委員会でとりまとめるためのガイドライン案のうち、DSC担当部分が審議された。
(2)WGでの審議
 WGでは、要件の適用範囲が最も重要な課題として審議された。その結果、有効なガッターバー(gutterbar)があれば、風雨密のハッチカバーを有する船の積付・隔離方法が適用できるとのガイドライン案を作成した。なお、有効なガッターバーの高さを 50 mm とした。有効なガッターバーが無い場合については、コレスポンデンスグループの報告にある要件が適用されることになった。但し、甲板上のコンテナに対する甲板下の隔離の船首尾方向の範囲は、コレスポンデンスグループの案では基準となるコンテナと同一のBAYのみとなっていたが、WGの案では船倉全体に拡大された。
 本ガイドラインの適用については、構造変更に及ぶものではなく完全な運送要件であることから、建造時期に拘わらずすべての船に適用することが確認された。
(3)プレナリーでの審議(WG後)
 ノルウェーはガッターバーの有効性を認めず、ガイドライン案に反対し、ガッターバーの高さによらず、積付及び隔離の要件を適用することを提案した(概ね日本案と同じ)。我が国は、対処方針に則って、結論の先送りは無意味である旨を主張し、今次会合における合意を求め、ガッターバーに損傷がある旨を追加する若干の修正を提案した。蘭、ベルギー、キプロス、英国、米国、仏国はガイドライン案を支持した。その結果、ガイドライン案は若干の変更(短時間のDGを実施)をもって承認された。暫定案にすることも検討されたが、キプロスは、議題を残すことには否定的な態度を示した。結果、ガイドライン案は合意された。
 なお、本ガイドライン案は、危険物の積付・隔離関連、満載喫水線関連、防火関連をSLF小委員会(SLF 46)でひとつにまとめたガイドラインとし、MSC 78で承認する予定である。MSCにおける承認は強制要件としてのIMDG Codeの発効より遅くなる予定であるため、配慮する必要がある。







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