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3.2.2 地表面過程の検証
今までの地表面過程は、土壌湿潤度をパラメータで一定に与えていたため、降雨後も大気下層に供給される水分があまり変化しないという問題が指摘されていた。本研究は、土壌水分量の予報方程式を加えることによって、大気下層への水分供給量の改善を図った。
実験は地表面の土地利用を一定、地表面高度を0mとするなど簡易的な計算条件を与えることで行った。
| 共通計算条件 |
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格子間隔 |
:5km |
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格子数 |
:10×10×18 |
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初期・境界条件 |
:2002年5月9日21時四国南岸の海の気象条件を与える(降雨あり) |
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積分時間 |
:48時間 |
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地表面高度 |
:全領域0m |
実験1、2は全領域の土地利用を裸地としてそれぞれ変更前と変更後の計算をした。また、実験3として全領域の土地利用を水田として計算を行った。
表3.2.4 実験の条件
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モデル |
土地利用 |
| 実験1 |
Prev(変更前) |
裸地 |
| 実験2 |
New(変更後) |
裸地 |
| 実験3 |
New(変更後) |
水田 |
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図3.2.15に領域中心の時間降水量と正味の放射量を示す。正味の放射量は太陽放射と赤外放射を積算した値で、地表面入るものを正とした。降水は計算開始2日目の2時頃から始まり、10時頃に一度止み、再び12時頃から3日目の0時にかけて計算された。3日目は、晴れたため太陽放射量が増加し、正味の放射量が正午には800W/m2になった。
図3.2.16に変更前と変更後の領域中心の土壌湿潤度の比較図を示す。変更前は降雨に関係なく土壌湿潤度は常に一定であった。変更後の地表面の土壌湿潤度Wgは、降雨が始まるまでは減少し、降雨によって即座に増加して飽和値Wkに達した。その後、3日目の日中に太陽放射によって減少したが、太陽放射が弱くなった夕方からは地中からの水分供給のため再び増加した。2層目の土壌湿潤度W2は、降雨前は減少するが、降雨後増加し、降雨がなくなった後も初期の湿潤度よりは高い状態を保っていた。
図3.2.17〜3.2.19に変更前と変更後の地表面潜熱フラックス、地表面顕熱フラックス、地表面温度の比較図を示す。各フラックスは地表面から外に出る場合を正とした。降雨のあった1日目から2日目にかけては日射がなく、潜熱・顕熱ともに小さな値であった。3日目は快晴になり、前日の降雨で土壌が湿っていたため、変更後は水分供給量が増えて潜熱フラックスも増加した。そのため地表面は潜熱を奪われ、地表面温度は変更後の方が2〜3度低くなった。そのため、大気最下層との温度差が小さくなり、顕熱フラックスも減少した。
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図3.2.15 降雨量と正味の放射量の比較
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図3.2.16 土壌湿潤度の比較
(Wk:飽和湿潤度、Wmax:流出の始まる湿潤度)
図3.2.17 潜熱フラックスの比較
図3.2.18 顕熱フラックスの比較
図3.2.19 地表面温度の比較
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