船舶区画規程等の一部を改正する省令について
平成14年6月
海事局安全基準課
1. 改正の背景
我が国では、船舶の施設について定めた船舶安全法(昭和8年法律第11号)第2条第1項に基づく命令である船舶区画規程(昭和27年運輸省令第97号)において、船体に設けるべき区画の要件が定められている。
この区画の要件は損傷時復原性を確保するために必要なものである。船舶が風や波等で傾いても起きあがって元に戻り、安定して浮いていることが出来る能力のことを復原性という。船舶の復原性には2種類あり、損傷のない通常の状態での復原性を非損傷時復原性あるいは単に復原性といい、損傷して浸水した場合においてもなお残存する浮力により維持される復原性を損傷時復原性という。
このうち、損傷時復原性については、1974年の海上における人命の安全のための国際条約(昭和55年条約第16号)(以下「SOLAS条約」という。)によりその要件が定められており、我が国では、船舶区画規程においてSOLAS条約と同様の内容を規定し、国際航海に従事する船舶に適用するとともに、内航のRORO旅客船に対しては、通達に基づき独自の損傷時後原性基準を適用している。
国際海事機関では、1994年に発生したRORO旅客船エストニア号の事故を契機としてRORO旅客船の安全対策を大幅に強化するSOLAS条約改正を行ったが、その後、非RORO旅客船についても安全対策の見直しを進めてきたところ、今般、同条約が改正され、最大搭載人員400人以上の国際航海非RORO旅客船の損傷時復原性基準が強化され、非RORO旅客船に対してもRORO旅客船とほぼ同様の損傷時復原性基準が適用されることとなった。このため、船舶区画規程において同様の改正を行う必要がある。
また、これを契機として、我が国の内航旅客船においてもRORO旅客船と非RORO旅客船の区別無く損傷時復原性の要件を課すことについて検討を進めてきたが、我が国においても、毎年十数隻程度の旅客船が衝突、乗り上げ海難を起こしており、そのような海難により船体を損傷、浸水する可能性があること等から、内航旅客船においてもRORO旅客船と非RORO旅客船の両方に損傷時復原性の要件を課すべきであるという結論に達した。
2. 改正の内容
(1) |
最大搭載人員400人以上の国際航海非RORO旅客船に対し要件を追加。 |
(2) |
内航RORO旅客船に課す損傷時復原性基準の設定(現在の通達により定めている基準を若干強化する。) |
(2) |
内航非RORO旅客船に課す損傷時復原性基準の設定(内航RORO旅客船の課す予定の損傷時復原性基準によりは緩い。) |
3. 今後のスケジュール
公布:平成14年6月下旬
施行:平成14年7月1日
内航旅客船の損傷時復原性に係る基準の改正
改正により、損傷時復原性に係る要件として、次のとおり、(2)の要件を追加。
現行 |
改正案 |
(1)損傷による浸水後も十分な浮力が残っていること。
(風浪のない静的な状態で浮いていられること。) |
(1)損傷による浸水後も十分な浮力が残っていること。
(風浪のない静的な状態で浮いていられること。)
(2)残った浮力により一定の復原性が維持されること。
(風浪のある状態でも浮いていられること。) |
|
内航旅客船の種類 |
長さ |
想定浸水区画数 |
現行 |
改正案 |
(1)の要件 |
(2)の要件 |
(1)の要件 |
(2)の要件 |
RORO |
45m未満 |
1 |
− |
1 |
1 |
45m以上79m未満 |
1※ |
− |
1※ |
1 |
79m以上 |
2 |
− |
2〜3 |
1〜3 |
非RORO |
79m未満 |
− |
− |
1 |
1 |
79m以上 |
− |
− |
1〜3 |
1〜3 |
|
第73回MSC決議によるアスベストの使用に係るSOLAS条約改正(仮訳)
改正採択抜粋 |
仮訳 |
ANNEX |
附属書 |
AMENDMENTS TO THE INTERNATI0NAL CONVENTI0N
FOR THE SAFETY OF LIFE AT SEA, 1974, AS AMENDED
CHAPTER II−1
CONSTRUCT10N − STRUCTURE, SUBDIVISI0N AND STABILITY, MACHINERY AND ELECTRICAL
INSTALLATI0NS
2 The following new regulation 3−5 is inserted after existing regulation 3−4:
"Regulation 3−5
New installation of materials containing asbestos
1 This regulation shall apply to materials used for the structure, machinery,
electrical installations and equipment covered by the present Convention.
2 For all ships, new installation of materials which contain asbestos shall be
prohibited except for:
☆1 vanes used in rotary vane compressors and rotary vane vacuum pumps;
☆2 watertight joints and linings used for the circulation of fluids when, at high
temperature (in excess of 350℃) or pressure (in excess of 7 x 10 6Pa) , there
is a risk of fire, corrosion or toxicity; and
☆3 supple and flexible thermal insulation assemblies used for temperatures above
1000℃" |
1974年の海上における人命の安全のための国際条約改正
第II−1章
構造(区画及び復原性並びに機関及び電気設備)
2 以下の新3−5規則を現3−4規則の後に挿入する。
「規則3−5
アスベストを含む材料の新規設置
1 この規則は、現在の条約で扱われる構造、機関、電気設備及び艤装品に使用される材料に適用される。
2 すべての船舶について、アスベストを含む材料の新規設置は以下を除いて禁止する。
☆1 ロータリー式圧縮機及びロータリーポンプにおいて使用される羽根車
☆2 350℃を超える高温下または7Mpaを超える圧力下で、火災、
腐食または毒性の危険性がある液体の循環に使用される水密継手及び内張
☆3 1,000℃を超える部分で使用される軟性及び弾力性の必要な断熱材」
|
|
MALPOL73/78条約附属書I第13G規則対応表
(拡大画面:65KB) |
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13Gフェーズアウト表
フェーズアウト年の引渡し日までに本付属書第13F規則の規定に適合すること: |
油タンカーのカテゴリー |
引渡し年 |
フェーズアウト年 |
船齢 |
カテゴリ−1 |
1973年以前 |
2003年 |
30年 |
1974年 および 1975年 |
2004年 |
30年29年 |
1976年 および 1977年 |
2005年 |
29年28年 |
1978、1979 及び 1980年 |
2006年 |
28年27年26年 |
1981年以降 |
2007年 |
26年25年 |
カテゴリ−2 |
1973年以前 |
2003年 |
30年 |
1974年、1975年 |
2004年 |
30年29年 |
1976年、1977年 |
2005年(*) |
29年28年 |
1978年、1979年 |
2006年(*) |
28年27年 |
1980年、1981年 |
2007年(*) |
27年26年 |
1982年 |
2008年 |
26年 |
1983年 |
2009年 |
26年 |
1984年 |
2010年(*) |
26年 |
1985年 |
2011年(*) |
26年 |
1986年 |
2012年(*) |
26年 |
1987年 |
2013年(*) |
26年 |
1988年 |
2014年(*) |
26年 |
1989年以降 |
2015年(*) |
26年〜19年 |
カテゴリ−3 |
1973年以前 |
2003年 |
30年 |
1974年、1975年 |
2004年 |
30年29年 |
1976年、1977年 |
2005年 |
29年28年 |
1978年、1979年 |
2006年 |
28年27年 |
1980年、1981年 |
2007年 |
27年26年 |
1982年 |
2008年 |
26年 |
1983年 |
2009年 |
26年 |
1984年 |
2010年 |
26年 |
1985年 |
2011年 |
26年 |
1986年 |
2012年 |
26年 |
1987年 |
2013年 |
26年 |
1988年 |
2014年 |
26年 |
1989年以降 |
2015年 |
26年〜19年 |
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(※): |
カテゴリー1の船舶は2005年以降、カテゴリー2の船舶は2010年以降航行する場合は、CASの規定に適合することを条件とする |
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