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序文
 2000年9月、世界の指導者が一堂に会した過去最大の国連会議において、加盟国は満場一致で国連ミレニアム宣言を採択した。これは21世紀に向けた国際的な取り組みの価値基準・根本方針・目標を明示した声明文である。この宣言の中では、より平和で、繁栄した、公正な世界を確立するための必要不可欠な機関として、国連の役割が再確認され、グローバリゼーションが全世界の人々にとり有益なものになるよう、各加盟国が分担してその責任を果たすことなどが明言されている。
 
 この宣言に盛り込まれた目標は、次の通りである。(1)2015年までに妊産婦死亡率を75%削減すること。(2)HIV/AIDS・マラリア・その他の主な疾病の蔓延を抑制すること。(3)1日の収入が1ドル以下の人々、また飢えや安全な飲料水不足に苦しむ人々の割合を半減すること。(4)すべてのレベルで少年少女が平等に教育を受けられるようにし、すべての子供たちが初等教育を受けられるようにすること。(5)2020年までに少なくとも1億人と見積もられるスラム地域の住人の生活を大幅に向上させること。
 
 文書(A/RES/55/2)は、21世紀の国際関係の基礎となる以下の6つの価値基準を明示している。それらはすなわち、自由・平等(個人間と国家間)・連帯・寛容・人間性の尊重・責任の分担である。
 
 自由と平等を促進するために、宣言は以下のように言及している。
 
 「男女共に、その権利と機会の平等は保証されなければならない。」
 
 国連人口基金(UNFPA)は、これらの展望を実現させるために日々行動し、また、1994年カイロで開催された国際人口開発会議(ICPD)で設定された目標を達成するための政策と戦略を各国が導入できるよう支援を行っている。
 
 この「人口問題ブリーフィング・キット」2001年版は、男女間の平等・HIV/AIDS問題・持続可能な開発など、世界中の個人及び政府が直面している主要な問題をまとめたものである。有害な伝統的慣行を含む女性に対する暴力がなくなるよう求め、さらに家族計画やHIV/AIDSなど性行為感染症の予防のために避妊具(特に男性用及び女性用コンドームなど)がますます必要となると述べている。
 
国連人口基金(UNFPA)事務局長1 ソラヤ・オベイド
 
 国連人口基金(UNFPA)は、人口問題の解決を支援する組織として世界最大の国際機関である。同基金は開発途上国及び経済移行期にある国々iの要請に応じて各国のリプロダクティブ・ヘルスiiと家族計画についてのサービス向上の支援を行い、同時に持続可能な開発を支えるための人口政策・戦略を作成する手助けをしている。
 援助国から開発途上国に対して行われている人口問題に対する支援の25%がUNFPAを経由したものである。1969年の活動開始以来、UNFPAは約50億ドルの支援を行ってきた。
 UNFPAは、主に3つの分野のプログラムを支援している。それは、(1)家族計画と性行動に関する健康(セクシャルヘルス)を含むリプロダクティブ・ヘルス(人口再生産に関わる健康)の分野でのプログラム、(2)人口と開発戦略の分野、そして、(3)人口と開発問題解決のための啓発活動の分野である。
 

i かつて社会主義・共産主義国家体制をとっていた国々が、ソ連邦崩壊に伴い、市場経済体制への移行を行いつつあり、この体制移行に伴い経済的な困難に直面している。単なる途上国とは違い一般に社会開発の面では進んでいるが、経済的な困窮が人口・家族計画の面でも大きな影響を与えている。
ii Reproductive Health:翻訳しにくい概念であるため、カタカナでリプロダクティブ・ヘルスと表記する。“性と生殖に関する健康”と翻訳する場合もあるが文意から言って、ライフサイクル全体を含む人ロ再生産の過程すべてに関する健康のことであるため、翻訳する場合には“人口再生産に関わる健康”とする。黒田俊夫著APDAリソースシリーズ1「国連人口会議20年の軌跡−ブカレストからカイロヘ−」参照。
 
1 在任14年間の後引退したナフィス・サディク博士(Dr.Nafis Sadik)の後任として、2001年1月1日、ソラヤ・オベイド女史が国連人口基金(UNFPA)事務局長に就任した。







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