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人口と開発に関するアジア議員フォーラム
第2回大会
北京宣言
1987年9月25日
中国、北京
 
序文:
1. 1987年9月23日から25日、中国、北京にて開催された「人口と開発に関するアジア議員フォーラム第2回大会」にアジアの23ヵ国から参加した我々国会議員は、以下のとおり呼びかける。
(a)アジアの国会議員が開発政策プログラムに人口問題を効果的に取り入れ、人口と開発の問題を解決するための行動を起こし、実践するための努力を傾注する確約を記する。
(b)UNFPAの主催により、1981年北京で行なわれた「人口と開発に関するアジア議員会議」および1984年ニューデリーで行なわれた「人口と開発に関するアジア議員フォーラム第1回大会」の目的を再確認する。
(c)アジア諸国の人々の代表者、また各国立法機関の一員として人口と開発の相互関係を研究し、各国政府および人々の人口問題に対する関心を高め、人口と開発に関する問題解決のプロセスを促進するための責任を了解する。
(d)1984年のメキシコ会議において提出された、国会議員、政策立案者、またその他の公的立場にある人々が国民の意識を高め、国家施策やプログラムの実行に向け努力し、人口と開発の問題解決のため、効果的、かつ総合的アプローチを引き続き促進、指示するという勧告を是認する。
(e)安全かつ安定した国際環境、豊かに繁栄する経済・文化が人口問題解決のために資するということを再確認する。
(f)貧困や開発問題の解決に向けて努力をする際、人口、資源、環境が深くかかわり合っていることに留意し、アジア諸国において組織的な家族計画プログラムや一般的な社会経済開発活動によって出生率、乳児死亡率の低下が進んでいることを確認する。
(g)北京、ニューデリー宣言における重要勧告の達成に向けて努力するという確約を再確認する。すなわち、西暦2000年までにアジア地域の年間1パーセントの人口増加率を達成する。
(h)母親、乳児の死亡率を更に低下させ、母子福祉プログラムを強化し、家族計画の容認を促すことが早急に必要であることを認識する。
(i)人口と開発に関する問題を解決していく上で、社会の基本単位としての“家族”が果たす重要な役割を強調する。
(j)アジア社会における女性の地位が変化していることを認識し、女性が家族および社会における新たな幅広い役割を果たせるような機会を男性と平等に与えることを目的とした施策を支援する。
(k)各国の社会経済発展の度合に適した、人口分布を達成するための効果的な施策の必要性を強調する。
 
2. フォーラムは、本年7月11日に「世界人口50億人の日」に関連して実施された全世界的な活動が、いくつかの脅威的な統計に注意を喚起したことに留意する。
(a)世界人口は毎分150人、毎日22万人、毎年7900万人増加している。
(b)世界人口は1920年の20億人から1960年に30億人、1974年に40億人に増加した。最後の10億人は13年間に増加したものであるが、次の10億人は12年間で増加する。
(c)人口の増加の90パーセントはアジア、アフリカおよびラテン・アメリカの開発途上国において起きている。
 
3. アジア諸国における宗教や信仰、文化や伝統の相違を認め、社会、経済、政治的条件の違いを考慮して各国の自治権を重視した上で、共通する多くの関心事がある。
(a)現在のアジア人口は、世界人口50億人の60パーセントを占めている。
(b)他の地域に比較して、アジアの人口政策は強化されており高度であるが、各国のすべての開発活動や政策が人口政策の目標達成を指示するために、その計画立案過程と適合させるための恒常的な要請がある。
(c)近年において出生率ならびに家族の数は大幅に減少してきてはいるが、アジアの人口は年間2パーセント弱の率で増加を続けている。
 
4. 各国の人々が十分な食物と衣服を得、平和と幸福のうちに生活して非識字、疾病、貧困から解放されるように努力を続ける上で、国会議員は以下の特定の目標に向けて共に働くものである。
(a)西暦2000年までに、アジア地域全体における人口増加率を年間1パーセントまで低下させる。
(b)西暦2000年までに、アジア地域全体における死亡率、特に乳児死亡率を50パーセント低下させる。
(c)都市人口の増加および農村から都市への人口移動を調整する政策により、アジア諸国のバランスのとれた人口分布を達成する。
(d)アジアの高齢人口に対する社会、経済、心理的保障のため、大家族にかわるメカニズムを考案する。
(e)特に、保健、教育、雇用の分野における女性の地位を向上させ、変化するアジアにおける女性の役割の変容とその社会、政治、文化的含意を認め受け入れる。
(f)地域における人口問題の必要性、緊急性、重要性を各アジアの民族に伝えるために、1988年の適切な日を「30億人の日」とする。
 
行動計画:
人口増加率の抑制
5. 望ましい人口増加率を達成するため、以下の諸行動が国会議員によって実行され指示される必要がある。
(a)すべての開発計画に包括的な人口政策を結合する。
(b)受け入れやすい家族計画に関する情報、サービスを地域のすべての住民に速やかに広める。
(c)基本的保健サービスをすべての人々に普及し、家族計画とこれらのサービスとの連携を早急に継続的に向上させる。
(d)特に女性、青少年の識字能力を高めるための努力をする。
(e)女性を差別し、保健、教育、雇用機会の均等を妨げる法的障害、慣習を撤廃する。
(f)行政管理の改善、人材育成の拡充、異なる人口層、特にアジアの60パーセント近くを占める女性、青少年人口に対する情報、教育、コミュニケーションプログラムの開発を通じて家族計画プログラムを強化する。
(g)男女共に家族計画を含む親の責任を自覚させ、育児、家事の分担を促進する広報等のプログラムを確立する。
(h)家族計画参加に対するすべての官僚的障害を廃止する。
 
死亡率、特に乳・幼児死亡率
6. 死亡率、特に乳児と1〜5歳の幼児の死亡率は近年かなり低下しているが、死亡率全体としてはいまだ高く2000年までに50パーセント程度は低下させるべきである。乳・幼児死亡および心身障害の主な原因は、以下に掲げる基本的保健サービスによって除去されよう。
(a)すべての子供に対する予防接種の実施。
(b)子供に十分な栄養を摂取させる対策の実施。
(c)栄養、健康に関する教育の普及。
(d)スラムおよび農村における飲料水の供給。
(e)乳・幼児生存のため男女の補完的役割に関する教育の普及。
(f)乳・幼児に共通する疾患の判定と簡単な治療をするに当たり、地域社会のリーダーおよび特に伝統的な助産婦や医師も含めた訓練計画の強化。
 
人口分布
7. 人口と資源の不均衡、貧困層の増加、急速な都市化、これらはすべてアジアの社会経済発展の障害となっていると同時に自然環境を悪化させている。人口分布と資源の不均衡を是正する方法としては以下のものがあげられる。
(a)中心都市の吸引要因の削減および中都市と小都市の行政単位の開発の促進、総合的な国家的都市計画の立案とその実施。
(b)農村部における雇用機会の拡大。
(c)農村部における母子保健、家族計画サービス、教育を含む基本的社会、保健に対する安堵感の向上と拡大。
(d)都市部における社会サービス、設備不足の認識および、その是正をするインフラストラクチャーの開発と強化。
(e)都市人口の増加の規制と既に発生している不完全雇用、失業を解消する適切な手段の開発。
(f)社会的・経済的発展過程を相互強化するための都市、農村間の有効な連携の創出。
 
高齢者の保障
8. 家族計画政策の成功は、その成果に対する注意をもまた促している。大家族はアジアの保障制度の主要な部分として伝統的に機能してきた。小家族化が進む現在、これに代わるメカニズムが必要とされるであろう。増加する高齢者の社会的、経済的、心理的要求に応じて以下の法的、行政的対策が必要とされよう。
(a)国家的開発政策に統合された、身寄りのない高齢者あるいは家族の保護のない高齢者に対する効果的な国家政策の展開。
(b)高齢者の要求に応える最低限の福祉の拡大と高齢者の自立の保障。
(c)全員付与の原則に基づく高齢者のための社会保障計画の実施と展開。
(d)高齢者のための基本的保健、社会、住宅サービス設備の拡充と向上。
(e)高齢者が適切な技術を習得し社会的に有益な仕事に従事するための再訓練計画の実施。
(f)世代間の均整のとれた相互作用促進を目的とした計画の確立。
 
社会における女性の地位の変化
9. 少産傾向にあり、社会で幅広く新しい役割を求めている女性の地位の変化に、特に社会的注意を喚起する必要がある。この結果として女性の教育、就業並びに社会における地位が将来アジア諸国の人口と開発に関する政策に影響を与える主要な要因となるであろう。女性の役割の変化に対応する施策として以下が必要とされる。
(a)女性の役割や地位に関する国家政策並びに構造や組織の強化。
(b)女性のための国家プログラムを計画、実施、調整するための十分な訓練と適切な基盤造りの実施。
(c)人口と開発に関連した活動への女性の参加を促す国家プログラムおよびプロジェクトの拡充と改善。またこのようなプログラム実施に要される考え方や構造的変革の開始。
(d)女性のための教育や訓練プログラムの量的・質的な向上、そして変化する女性の役割と社会、経済、政治、文化的影響についてすべての社会構成員に認識を喚起する。
 
保健と家族計画
10. 世界の開発途上国では家族計画についての情報やサービスに対する需要が高まっている。アジアにおいては、政府機関や非政府機関の努力にもかかわらず特にこの需要が満たされていない。サービスを増加し、辺地も含め国中に提供できるよう真剣に取り組まなければならない。そのために以下の施策が必要とされよう。
(a)基本的保健サービスと家族計画との統合。
(b)許容しがたく高いレベルにある予防可能な妊産婦死亡率を低下させるため、妊産婦に対する妊娠期間中の保健サービスの向上。
(c)様々な避妊方法の継続的な供給。
(d)新しい避妊方法の開発研究、開発後の導入に対する継続的な支援。
(e)AIDS蔓延にともなう研究、大衆教育、予防施策のための十分な予算の確保。







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