挨拶
財団法人アジア人口・開発協会理事長
衆議院憲法調査会長
国際人口問題議員懇談会会長 中山太郎
財団法人アジア人口・開発協会(APDA)が20周年を迎えました。これは日本財団、日本政府、国連その他数多くの方々のご支援の賜物であり、心よりの感謝を申し上げます。
設立以来APDAの活動領域は、政府委託の研究調査活動、国会議員の支援活動、人口開発問題に関する啓発活動など非常に多方面にわたっております。特に国会議員活動の支援は日本ではAPDAだけが担ってきた分野であるといえます。
人口問題に対する国会議員活動は日本の岸信介、福田赳夫・両元首相によって創始され、世界の人口問題に関する国会議員活動の先鞭をつけてまいりました。
日本は自らの経験を生かし、世界の人口と開発に関する国会議員活動の分野でも主導権を発揮し、日本の人口問題に対する国会議員活動を契機として、世界の国会議員活動は始まったのであります。
APDAも岸・福田両元首相から薫陶を受けた故佐藤隆代議士が1981年の「人口と開発に関するアジア国会議員会議(ACPPD):通称(北京会議)」においてアジアの国会議員から強い要請を受け、獅子奮迅の働きをして、アジアの人口と開発問題に関する国会議員活動の母体として設立されたものです。
人口問題という人類にとって最も大事な事業に英知を持って取り組まれたこの両元首相の先見の明と心血を注いで礎石を作られた故佐藤隆代議士に深く敬意を表し、私達がその教えを守って活動してきたこの数々の実績を強く誇りに思っております。
APDAは日本やアジアのみならず世界の人口と開発問題に関する国会議員活動のプラットフォームとして事務局業務を果たし、国際会議等を開催するのみならず、非西欧で初めて人口転換を成し遂げた日本国の経験に基づき、その意見を国際会議の場に反映させる上でもその役割を果たしてまいりました。その意味で、国際社会に日本の意見を明確に反映させることができる数少ない「場」を確保してまいりました。
その意味で日本国の人口問題に関する外交のかなりの部分を担い、日本のプレステージを高める上で幾分かの貢献ができたものと自負いたしております。APDAが設立されてから20年、いま世界はさまざまな問題に呻吟しております。テロ・貧困をはじめとする社会不安、旱魃・洪水などの自然災害、ありとあらゆる災難が世界中に蔓延し、われわれの世界はまるでパンドラの箱を開けたような状態です。
この世界の社会不安や自然災害の大きな原因のひとつに人口問題があります。イスラム地域における人口の急増は数多くの失業者の貧困を生み出し、政治的な不安定要因となっております。
南北問題という発展途上国と先進国のあまりにも大きな格差の問題。これら多くの課題の中から紛争やHIV/AIDSなどの深刻な問題が発生しております。また自然災害も人間の活動の結果生じた温室効果ガスなどが強く影響しているといわれます。
わが国日本を振り返っても、構造不況の真っ只中で、かつてないほど多くの人々が職を失い苦しんでおります。
この激動の世紀にAPDAが果たしている、人間が人間らしく、安全に生活できるという「人間の安全保障」を達成するための活動は、これからますます重要性を増すものと思っております。
人口問題は日を追うごとに厳しさを増し、深刻さを増していきます。しかし、誠に残念なことにAPDAが設立された20年前よりも人々の人口問題に対する意識は薄れているのが現実です。
貧困や飢餓、災害、紛争にさいなまれている赤ん坊に同情することはあっても、そのような状況を作り出している原因を取り除くことに対する関心が非常に乏しくなっています。
途上国の、そして紛争地域の女性が望まない妊娠を防ぐことができたら、これらの悲劇を大きく軽減することができます。この「あたりまえ」のことが忘れ去られているのです。
今、人類は大きな選択を迫られていると思います。それは、人類が勝ち得た理性によって、共に生きる道を見出すのか、それとも強いものだけが勝ち、弱いものが滅びるこれまでの歴史を再び繰り返すのか、であります。
このかつてない人口を持つ私達の世界は、同時にかつてないほど小さな世界でもあります。
HIV/AIDSなど遠い国の問題と思われていたことが私達に直接降りかかってきます。強いものだけが勝ち残るような選択をした場合、その勝ち残った国もいずれ滅びていくことになるのではないでしょうか。
人間はパンドラの箱から「希望」を取り出すことを忘れたといわれます。私達がなすべきことは、人が見出すことのできる宝である「希望」を見出し、この「希望」を「現実」に変えるための手段を探り、努力を行うことでしょう。
財団法人アジア人口・開発協会はこれからも多くの皆様にご支援/ご協力を賜りながら、これまで以上に活動してまいりたいと念願いたしております。
一層のご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
内閣総理大臣
小泉純一郎
財団法人アジア人口・開発協会設立20周年おめでとうございます。私も人口問題とは深いかかわりをもってまいりました。私の尊敬する政治の師でありました福田赳夫先生と共に、1981年に中国北京で開催されました人口と開発に関するアジア国会議員会議(ACPPD)に参加した時のことをありありと思い出します。
このACPPDの席で福田赳夫先生の意を受け、さらにアジア地域の国会議員から、アジアの人口と開発に関する議員フォーラムを作り、その活動を支援するための機関を日本につくってほしい、と強い要望を受け、畏友でありました佐藤隆先生が粉骨砕身の努力をされて設立されたのが、人口と開発に関するアジア議員フオーラム(AFPPD)と財団法人アジア人口・開発協会(APDA)であります。
APDAにおかれては爾来20年にわたり日本国の超党派国会議員で形成される国際人口問題議員懇談会(JPFP)事務局、ならびに人口と開発に関するアジア議員フォーラム(AFPPD)の事務局として、国内外の人口と開発に関する国会議員活動を献身的に支援されてきました。
同時にアジア全域にわたる人口と開発に関する政府委託調査を実施する一方、人口と開発問題に関する啓発活動として、さまざまな出版物の刊行およびセミナーを実施し、人口と食料、環境、水、女性問題などについて積極的なNGO活動を展開してまいりました。
特に国際的には、AFPPD議長国事務局として、国連が主催する政府間会議に平行してAFPPD主催の一連の国際議員会議を開催し、政策支援をはじめとする活動を行ってこられました。
これらの議員会議は国連の政府間会議に日本国国会議員の意見を反映させる上で貴重な役割を果たし、わが国の存在感を高める上で大きな貢献となったと聞いております。
国民から選ばれた国会議員がその使命を果たし、健全で、競争力のある民主的な社会を実現することが私達の使命であります。また、国際協力やさまざまな場面でNGOの役割がクローズアップされてきております。その意味でNGOとして先駆的な活動を続け、さらに国民の代表者である国会議員と共に活動されてきたAPDAの役割は非常にユニークなものであると同時に、これから益々重要なものとなると確信いたしております。
人口問題は全ての地球的な問題の基礎であるといわれます。また、わが国は少子高齢化に直面し、社会保障その他の問題が大きくクローズアップされて来ております。
この意味で、わが国にとっても人口問題の持つ意味はかつてないほど大きなものとなっております。少子高齢化の進展で社会保障などの問題が今後一層厳しさをますことは事実でありますが、活力ある社会を作り、一人一人がより一層活躍する社会を作ることで、この問題も解決できると確信いたしております。
日本は今かつてない厳しい局面に立っております。国の政策の責任者として構造改革を推し進めることでこの国難を乗り切り、将来への禍根を断ち、活力のある希望の持てる社会を作るために邁進してまいる所存です。同時に国際的に尊敬される国作りをするためにはNGOの協力が不可欠であります。今後一層のご協力をお願いし、ご発展をお祈り申し上げます。
厚生労働大臣
坂口 力
財団法人アジア人口・開発協会が設立20周年を迎えられたことに対し、お祝いを申しあげます。
私達人類にとって、地球との共存は永遠のテーマであり、人口問題は、人類が地球上に生存し続けていく上で極めて重要な課題です。21世紀を迎えた今日においても、世界の人口は増加の一途をたどり、既に60億人を超えるまでに至っており、特にアジアの人口がそのうちの約6割を占めています。
財団法人アジア人口・開発協会は、地球人口の激増を背景として、「持続可能な開発」の理念のもと、1982年に設立され、以来、我が国とアジア諸国における人口問題と開発に関する調査の実施や、各国の指導者的立場にある方々による国際会議の開催などを通じて、この分野における意識啓発や国際交流に真剣に取り組んでこられました。深く敬意を表します。
さて、今日の日本をはじめとする先進国においては、少子・高齢化が進み、将来に向けてさまざまな社会・経済問題が生じております。一方、発展途上国においては、人口の急速な増加が続き、そのことが貧困や飢餓の一因となっています。さらにまた、人口の増加に伴う急速な工業化が環境破壊や地球温暖化をもたらすなどの問題も生じてきています。
このように、人口問題は依然として、今日の地球上で生じている諸問題の根本原因の一つであり、私達人類はこれまでにもまして、この問題に真剣に向き合っていかなければなりません。こうした点からも、貴会の今後一層の御活躍を期待いたします。
終わりに、財団法人アジア人口・開発協会の今後ますますのご活躍を祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。
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