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第2章 調査結果に関する考察
 中小造船業における産業廃棄物の適正処理、減量化等の対策推進用資料として平成14年9月から11月にかけて中小造船会社の廃棄物発生量等に関する調査を行ったのは前述の通りである。調査において、産業廃棄物の排出量に関しては、廃棄物を約20種類に分類した詳細な調査であり15社(16事業所)の回答が得られたことから、中小型造船会社の産業廃棄物の概要を把握することを目的として解析を行った。
 今回の調査では各造船所間において、各種廃棄物に対する名称分類、認識に若干の相違があること、また各地方毎の公共団体における廃棄物取り扱いの相違廃棄物業者の持つ特性等からも廃棄物の分類が相違することから詳細分類を行わず、可燃廃棄物、不燃廃棄物、油脂類廃棄物などの大分類にまとめて概要の解析を行った。各造船会社(事業所)毎の産業廃棄物発生量を表1に示す。ただし、調査結果における空欄・記入漏は排出ゼロとして処理した。
 
表1 各造船所における月間廃棄物発生量(トン/月)
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解析結果)
 表1における自社における可燃物焼却量、自社焼却と外部委託可燃物発生量の合計、可燃・不燃混合の廃棄物発生量、外部委託と自社埋立てを含む不燃廃棄物発生量、油脂廃油などの廃棄油脂類の発生量そして資源品を除く全廃棄物の発生量を図1に示す。資源品については、各社において取り扱い及び処理システムが大きく相違しており総量に大差があることから、廃棄物総量の把握においては資源品を除く。
 ここでは、実際の規模に関わらず、図の上部の事業所を大手、真ん中付近の事業所を中型、下部付近の事業所を小型と述べる。
 図1(a)は自社の焼却炉により可燃廃棄物を焼却している量である。焼却炉を所有している事業所は、構内人数の多い事業所に偏っている。ただし、焼却量は炉の能力によることから、月量50トンを超えない。
 図1(b)は可燃廃棄物の総排出量を示したものであり、大手が多く中小型事業所になるほど小さい傾向にある。ただし、大手においては可燃物の外部委託はなく殆どが自社焼却であり、炉の焼却性能内(おそらく50トン/月未満)内で処理していることになる。
 図1(c)は、可燃廃棄物と不燃廃棄物が分類されていない混合廃棄物の排出量である。混合廃棄物の発生は、修理などの結果排出する分類しきれないため発生する場合と、分類する手間をかけずに排出している場合とがある。後者の場合、可燃廃棄物と不燃廃棄物の排出がない。
 図1(e)は、廃油、廃塗料、ビルジなどの廃棄油脂類の発生量である。総じて、修理中心の事業所が多く排出する傾向にある。ただし、事業所によっては、自社処理している場合もある。
 図1(d)、(f)から、総じて、事業規模が大きければ排出する廃棄物も大きい傾向にある。
 新造、修理における廃棄物の傾向を検討するため、新造を主体とした事業所から修理を主体とした事業所をおよそ区分けし並べた結果を図2に示す。ただし、図2(a)における可燃廃棄物発生量は、自社焼却および外部委託の合計とし、図2(b)の不燃廃棄物発生量は、可燃・不燃廃棄物混合を加えた合計とする。
 図2(a)において、新造側に可燃廃棄物発生量が多く表示されており、新造時における部品の梱包物が影響している可能性がある。図2(c)における油旨類廃棄物発生量は、どちらかというと修理側に多く見られ、修理特有のビルジ等の影響が考えられる。全廃棄物発生量としては、新造・修理部分と修理のみ部分に2つの山が存在するが、理由は判別しがたい。
 表2における新造は概して構内人数の少ない事業所であり、その影響などが否めないことから、廃棄物の発生量を構内人数で序することにより構内人数一人当たりの廃棄物発生量として表示したものが図3である。
 図3(a)においてI事業所は建造GTトンの大きさに比して構内人員が少ないことを考慮すれば可燃廃棄物の発生量が総じて新造側にあること、図3(c)において油脂類廃棄物発生量が修理側にあることは、図2と同様である。そして、図3(b)、(d)から、不燃物発生量とともに全廃棄物発生量も修理側に多く発生していることが確認できる。なお、図3(b)におけるP事業所の廃棄物発生量が大きいのは構内人員が最小であることを考慮されたい。
 参考として、構内人員数と各廃棄物発生量の関係を見るためにX軸を構内人員、Y軸を廃棄物発生量としたものを図4、Y軸を構内人員当たりの廃棄物発生量としたものを図5に示す。図4から、およそ構内人員に比例して廃棄物の総量も増大する関係が見られ、図5からは、構内人員の少ない事業所ほど、一人当たりの廃棄物発生量が大きい傾向が見られる。
 以上、16事業所のデータから、各造船会社における廃棄物発生量の概要を次頁以降に示した。







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