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1.2 構造基準と船級協会規則
1.2.1 構造規則の必要性
 鋼船の船体は外側は複雑な曲面をした部分が多く、内側には肋骨、防撓材、縦通材、梁、桁、隔壁などがあって複雑に入り組んでいる。これを陸上の建築物、橋梁などに比べると、船体はまず動くものであるという点で根本的に異なっている。しかもその活動範囲は海上であるため、船体にどのような大きな力がかかるかも未だ正確に知られていない。さらに船舶は多数の人命と貴重な貨物、財産をあずかるものであるから、高度の安全性が要求される。
 構造強度理論も、船殻全体の応力を一挙に計算できるほど厳密には進んでいない。現在の理論は後述のように近似的な解を与え、実績船との比較強度を求めているにすぎない。したがって、船殻構造の計画を行うのに、一々構造強度の計算をしていては手間がかかるから、従来の実績を解析した結果をまとめて、数式または表の形にしておき、必要に応じて部材寸法が得られるようにすれば非常に便利である。
 一方、乗組員の安全と船体、積荷の安全を確保する船舶安全の立場と、船主、荷主、保険業者の利益を守る商売上の立場から、船殻構造の満足すべき最低基準が必要となる。
 各国には第1.1表に示すような船級協会があり、それぞれ構造規則を定め、図面承認、工事中検査、完工検査および定期検査に合格したものに船級を与えている。構造規則の内容は鋼材の規格、各部の構造および部材寸法、工作についての指示などが盛っている。
 船級協会とは別に、わが国の国土交通省は船舶安全法にもとづいて船舶構造規則を定めているが、更に船の種類、船の長さ、材質、速力等に応じて、構造規則を補った構造基準等(告示)を設け、内容を詳細に規定している。
 
第1.1表 各国の船級協会
国名 名称 略称 設立年
日本 日本海事協会 Nippon Kaiji Kyokai NK 1899
イギリス ロイド船級協会 Lloyd’s Register of Shipping LR 1760
アメリカ エー・ビー協会 American Bureau of Shipping AB 1862
フランス ビューローベリタス Bureau Veritus BV 1828
ドイツ ジャーマン・ロイド Germanischer Lloyd GL 1867
イタリア レジストロ・イタリアノ Registro Italiano Navale RI 1861
ノルウェー ノルスケ・ベリタス Det norske Veritus NV 1864
 
1.2.2 船舶構造規則について
 船舶構造規則は、用語等の定義、船体及び排水設備の材料及び溶接、船体の強度を保持するための構造、船体の水密を保持するための構造、排水設備等構造全般について記述されており、船舶の用途に応じて必要となる船体の構造については、以下の告示で詳細に規定されている。
(1)船体及び排水設備の材料の要件を定める告示
 船体に使用する鋼材の分類、排水管等の材料について規定している。
(2)船体の強度を保持するための構造の基準等を定める告示
 船体の縦強度、外板、甲板、船側構造、船底構造、甲板構造、ピラー、水密隔壁、船楼及び甲板室、船首尾構造等の基準値及び構造様式等について規定している。
(3)船体の水密を保持するための構造の基準を定める告示
 上甲板よりも下方の外板に取付けられるげん窓の下縁、丸窓の規格等と上甲板及び暴露された船楼甲板のコーミング等について規定している。
1.2.3 特殊な船舶の基準等について
 前記の構造規則に当てはまらない特殊な船舶については、以下の基準等で規定している。(代表的なものを示す)
(1)高速船構造基準
 鋼製、アルミニウム合金製の船の長さ50m以下で、速力3.7×▽0.1667以上の船舶に適用される。
(2)軽構造船暫定基準
 登録長さ24m未満の鋼製又はアルミニウム合金製の船舶に適用される。
(3)自動車渡船構造基準
 自動車渡船の構造方式等を規定している。
(4)強化プラスチック(FRP)特殊基準
 長さ35m未満のFRP船の施設すべき事項及びその標準、検査の方法等を規定している。
(5)鋼製漁船構造基準
 長さ20m以上80m以下に適用する鋼製漁船の構造を規定している。長さ15m以上20m未満に適用する小型鋼製漁船構造基準がある。
(6)小型船舶安全規則
 総トン数20トン未満の船舶であって、国際航海に従事する旅客船以外の船舶の構造、設備等を規定している。







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