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7 Technical discussion(技術的な審議事項)[SHI]
7.1 The ship product model(船舶製品モデル)
 STEPの狙いは、プロダクトモデル(製品モデル)を開発する機能と方法を支援することである。プロダクトモデルとは、製品(例えば船、自動車、飛行機、生産プラントなど)の生涯を通して、コンピュータが解釈可能な中立のフォーマットで、その製品を明確に表現するものである。概念設計段階から生産、メンテナンスと最後に廃止・解体するまでの間、製品の表現と必要条件を定義することが目標である。表現の目的は、製品と関連する位相・幾何・機能・強度・パラメータと特徴を含む全ての幾何学・非幾何学のデータと、コンディションの状態及びサービスの記録を含むことである。
 STEPは、製品の主な表現がその製品構造と関連があるという考えに基づく。STEPで船を定義することは、基礎的な識別情報と船の構造情報が提供されなければならないことを意味する。この方法の一部として、幾何は個々の船とその構造の表現としてとられる。その結果は、モールド形状のジオメトリをSTEPを使って交換するとき、各要素を個々の船の個々の部分に関連するジオメトリによって表現する方法についての付加情報となる。これは、純粋な幾何だけが交換される、既存の交換標準とは異なる。STEPが、図面または幾何に基礎をおかずに、製品に基礎をおいた理由である。製品をベースにしたデータを再利用するための一連の標準の記述を行うことも、STEPを使う理由である。STEPはファイルまたはデータベースの交換が実行できるように、それ自身の方法に関連して開発された。
 船の複雑さを考慮すると、STEPプロダクトモデルを承認できて有用なパートに分割することは、不可避である。その結果1993年に、アプリケーションプロトコル(AP)の計画が、同意された。船舶の領域を7つのはっきりした機能の範囲に分割し、いくつかのAPへの分割が認められた。それ以来、モデルはわずかにアップデートされた。船舶製品モデルの現在のバージョンの概略を、図7.1-1に示す。
 
 船舶製品モデルの重要な要素は、以下の通りである。
−Arrangements
−Moulded forms
−Mechanical systems(machinery, propulsion, cargo handling)
−Structures
−Distribution systems(piping, HVAC, electrical, hydraulics/pneumatics)
−Outfitting & furnishings
−Communication
−Combat systems
−Navigation
−Operation
 
 船舶製品モデルの各機能分野は、一つ以上の異なるAPによって記述される。船舶APは以下の通りである。
−AP215 Ship Arrangements
−AP216 Ship Moulded Forms
−AP218 Ship Structures
−AP226 Ship Mechanical Systems
 
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図7.1−1 Ship Product Model
 
・・・補足・・・
・1998年、AP234Ship operational logs,records,and messagesが、APとして正式に承認された。
・AP217 Ship Pipingは、Fundingの観点から開発が先行しているAP227 2nd Editionで進められることとなった。
・AP227 2nd Editionは、HVACもスコープに含まれる。
・Ap226 Ship Mechanical Systemsは、ソウル会議にてキャンセルが決定された。今後は・AP227 2nd Editionへ組み入れる計画で検討が行われている。
・AP234 Ship operational loges, records, and messagesは、ソウル会議にてキャンセルが決定された。AP234の機能要件は、AP227およびAP239(PLCS)に組み入れる方向で検討される模様。
 
 船舶製品モデルの細分化は、モデル化作業の分散を許す。また、モールド形状のような船のライフサイクル初期段階の機能範囲におけるモデリングを、これより後の段階のモデリング作業を始める前に、始めることと、モデルを確認することを可能にする。AP216におけるライフサイクルと、そのライフサイクルを表現するUoFを図7.1-2に示す。
 
図7.1−2 AP216 structure
 
 APは、データ交換のために使われることを目的とする、STEPの唯一のパートである。しかし、それにもかかわらず、各船舶APは、船舶製品モデルの一部分だけをカバーする。その結果、完全な船舶製品モデルとして船舶APが互いに働くようにするならば、全ての船舶APを統合できる全体的な仕掛けの定義が必要ということである。製品モデルは、船舶製品モデルを中立データフォーマットでアプリケーションシステムの外側に全てのデータを持つPDM(product data management)システムでインプリメントすることが出来る。異なるAPを統合するこの仕組みは、Ship Common Model(SCM)と呼ばれ、次の章で記述される。
 
7.2 Ship Common Model(SCM)
 Ship Common Model(SCM)は、MARITIMEプロジェクトで開発されたもので、船舶アプリケーションプロトコル(AP)の間でインターオペラビリティを確実にするために、全ての船舶APのための共通のフレームワークとモデルリングの基盤を定義するものである。SCMは、船舶プロダクトモデルのコンテキストにおいて使われる一組のBuilding Blocksである。SCMは通常使用される構造概念、または構成管理や管理概念のために使われるユーティリティの集合と同様に、一つ以上のAPが必要とするドメイン(独立、かつ再帰的に使用できる)製品構造モデルの集合であり、モデリングのフレームワークを提供する。SCMの目的は、異なる船舶AP間において、ARM(応用参照モデル)の統合と全般的な整合性に貢献することである。
 SCMは、AP Development Guidelines for Shipbuilding(AP Guide Ship)で文書化される。ガイドラインで記述していることは以下の通りである。
 
−Building Block approach
−Modelling guidelines
−Ship Common Model
 
・・・補足・・・
 この文書の概要は、(財)日本船舶標準協会 平成9年度STEP/船用AP専門分科会 活動報告書の第5章で紹介されている。
 
7.3 Modelling guidelines
 モデリングガイドラインは、STEP Part11で定義されているEXPRESS言語の拡張とみなすことができる。造船分野のデータモデリングのために、EXPRESSをどのように使うかについて、詳述している。モデリングガイドラインは、Ship Common Model(SCM)でも使われる。
 すべての船舶アプリケーションプロトコル(AP)のモデリング作業は、ビルディングブロック(BB)の形式で行われる。BBは、APの機能単位(UoF)の定義に使われるEXPRESS言語による仕様である。UoFは、1つ、あるいはいくつかのBBを含むことができる。BBは、以下の3つのスキーマで構成される。
 
−インポートスキーマ
 このBBのモデルスキーマによって使われる他のBB要素のために、インタフェースを提供しているスキーマ。
−エクスポートスキーマ
 他のBBが使うためのモデルスキーマ要素を利用可能にするスキーマ。
−モデルスキーマ
 このBBのための全ての新しい要素を定義しているスキーマ。
 
 スキーマに加えて、各BBは、BB電子メールサーバーで自動処理を許すための若干の管理情報と共に、BBヘッダを持つ。モデリングガイドラインは、BBの概念と関連がある。
 現在のガイドライン(AP Guide Ship)は、以下のエリアをカバーする。
−Building Block name(BBの名前)
−Size of Building Block(BBのサイズ)
−Existing Building Blocks(既存のBB)
−Commenting Building Blocks(BBのコメント)
−Restrictions on usage of EXPRESS(EXPRESS使用に対する制約)
−Reference STEP resources(STEPリソースの参照)
−Cardinality constraints across Building Blocks(BB間の基本的な制約)
−Reference functions(functionの参照)
−Reference instances across Application Protocols(APをまたぐインスタンスの参照)
−Importing Building Blocks into Application Protocols(APへのBBのインポート)
−Compiling Building Blocks(BBの編集)
 
 APの文書化にとって重要なことは、コメントをつけているBBのためのガイドラインである。コメントは、DISの4.2章および4.3章を、(半)自動的に生成するためのツールとして使われる。
 
7.4 Modelling Framework
 Ship Common Model(SCM)の一部であるモデリングフレームワークは、ものを関係づける方法、特性を定義する方法と表現する方法の一般的な概念の実現を提供する。
 以下の3つのEXPRESSで表現されたBBは、フレームワークを定義している。
 
−definitions
−generic_product_structures
−representation_resources
 
 フレームワークは、主な構成概念を横切ってプロダクトモデルを分割する高水準アプローチである。多くの一般的な関係を通して結ばれている、主な構成概念は以下のとおり。図7.4-1にモデリングフレームワークを図示する。
 
−items
−definitions
−representations
 
図7.4−1 Modelling framework
 
 Itemは概念を表現し、プレースホールダーとみなすことができる。Itemは、全ライフサイクルにわたって一定のフラグである。船舶アプリケーションプロトコル(AP)の中の新しいItemは、Itemからサブタイプすることによって発生する。船舶APの典型的なItemは、以下のとおり。
 
−components of the ship(船の構成要素;船体、上部構造、デッキ、ラダー、プロペラ、・・・)
−equipment(機器;ポンプ、発電機、メインエンジン、パイプ、・・・)
−steel structure elements(鋼材構造要素;二重底、フレーム、隔壁、スチフナー、・・・)
 itemの特性は、definitionによって伝えられる。definitionはitemのために定義されなければならないが、itemはdefinitionなしで存在しても構わない。definitionは、ライフサイクルの間にitemと交換することができる。ライフサイクルの様相は、異なるライフサイクル段階のための異なるdefinitionが、itemのために導入されるという、ライフサイクル概念(図7.4−2参照)によって考慮される。船舶APの新しいdefinitionは、definitionからサブタイプすることによってつくることができる。
 概念のあらゆる特性と、その結果としてitemのあらゆるdefinitionが、多くの異なる方法で記述されるかもしれない。モールド形状のdefinitionを、表現することができるものは以下のとおり。
 
−offset table representation
−wireframe representation
−surface representation
−spacing position
 
図7.4−2 Life cycle concept
 
 このように、definitionは異なるrepresentationを持つことができる、しかし、いくつかの状況では、representationなしでdefinitionが存在することもありえる。船舶APの新しいrepresentationは、representationからサブタイプすることによって作成できる。
 フレームワークをモデル化する主な構成概念の間の高水準関係は、各APのサブタイプの中で制限することができる。これは、属性の再宜言によってなされる。例えば、definitionのサブタイプであるmoulded_form_definitionは、itemのサブタイプであるmoulded_formのために定義される。この関係をEXPRESS-Gで表現したものを図7.4-3に示す。
 
図7.4−3 Redeclaration of attributes
 
7.5 Domain models
 ドメインモデルの目的は、再宜言を使って属性関係を制限するという可能性と共に、フレームワークをモデル化する主な構成概念の下に、一般的な要素の新しい層をつくることである。ドメインモデルによって導入される新しい要素は、フレームワークをモデル化する主な構成概念のサブタイプである。以下のドメインモデルは、Ship Common Model(SCM)の一部である
 
−Product structure(製品構造)
−Part(部分)
−Product structure by system(システムによる製品構造)
−Product structure by assembly(組立による製品構造)
−Product structure by space(空間による製品構造)
−Connectivity(連結性)
 
7.6 Common utilities
 共通ユーティリティ(Common utilities)は、船舶APに特有のEXPRESSで表現されたビルディングブロック(BB)である。一方、異なる船舶APで、より一般的に使われる。これは、造船特有のリソースとして記述することができる。現在利用できる共通ユーティリティは、以下のとおり。
 
−Ship general characteristics(船舶の一般的な特性)
−Configuration management(コンフィギュレーションマネージメント)
−Location concepts(場所概念:グローバル/ローカル座標系、間隔格子)、
−Basic geometry and topology(基礎的な幾何と位相)
−Moulded form points(モールド形状の点)
−Moulded form lines(モールド形状の線)
−Moulded form surfaces(モールド形状の面)
−Ships(船)
−Materials(材料)
−Features(特徴)
−Units(単位)
−External reference/external instance reference(外部参照と外部インスタンス参照)
 
 Ship common model(SCM)とモデリングガイドラインに関するより詳しい情報は、AP Development Guidelines for Shipbuildingを参照すること。







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